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すみれ色はあの日のまま デボンシャーの三兄弟 II

すみれ色はあの日のまま デボンシャーの三兄弟 II

著: キャサリン・ガーベラ 翻訳: 光崎杏
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアデボンシャーの三兄弟
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 キャサリン・ガーベラ(Katherine Garbera)
 フロリダで育ったのち、イリノイに引っ越した。テーマパークで知り合った夫との間に二人の子供がいる。高校時代水泳チームの練習中に物語を作り始めた。ジョージア州ロマンス作家協会マギー賞を受賞後、作家デビュー。ウォールデンブックスのベストセラーリストにも登場している。

解説

 ファッション誌の編集長エインズリーは、今でこそ誰もが振り返る美しいなりをしているが、かつては現在より三十キロも太った、冴えない女記者だった。そのころ出会ったのが、ハンサムな実業家、スティーブン。スティーブンにインタビューをすることになったエインズリーは、すっかりのぼせあがって大失態をさらしてしまい、結果、スティーブンには小馬鹿にされ、職まで失ったのだ。あれから五年。スティーブンとの再会のときは唐突に訪れた。彼はエインズリーがあのときの記者だとは気づきもせず、ディナーでもどうかと誘いをかけてきて……。
 ■ある日出会ったすみれ色の瞳の女性に、彼は否応なく惹かれていきますが……。

抄録

「それでよかったのよ」エインズリーは言った。
 スティーブンがウエイターに会計するよう合図をした。エインズリーは割り勘にするつもりで財布からクレジットカードを出したが、彼の表情を見たらカードをしまうしかなかった。
「これはデートじゃないわ」彼女は抗議した。
「誰がそう言ったんだい?」

 体の線を強調する服装やベティ・ペイジばりの色気の奥にエインズリーの人間的な魅力があることに、スティーブンは気がついた。もっと彼女のことを知りたい。ひと晩じゅう、彼女の言葉に耳を傾けていたかった。洞察力の鋭さも、こちらを見つめるまなざしも好きだ。エインズリーといると、自分が中身のない男になったような気がする。仕事以外に能のない男に。
 エインズリーといると……他人と距離を置いてきたのは間違いだったと思わずにいられなかった。
 それともぼくは、彼女に惹かれ始めているのか? 彼女は謎めいた女性だ。これまでつきあってきた相手とはまったく違う。
 エインズリーからは純真さが感じられた。自分に異性をそそる魅力があることにさえ気づいていないようだ。レストランの出口へ向かう途中、男性たちの視線が集まっても、まったく気にしていない。ひとりの男性がいつまでもじろじろとエインズリーを見ているのに気づくと、スティーブンは男性をにらみつけ、彼女の背中に手を添えた。
 エインズリーはぼくの連れだ。“デボンシャーの三兄弟とその母親たち”の記事を掲載することをとり決めておいてよかった。連絡をとりあう口実になる。
 もう一度エインズリーをデートに誘おう、とスティーブンは自分に言い聞かせた。たぶんオーケイしてくれるだろう。彼女をベッドに誘う必要がある。そうすれば彼女の謎めいた魅力も消えてしまうのか確かめたい。彼は経験から知っていた。ベッドをともにすると、多くのデート相手は魅力を失うことを。
 エインズリーはそうならないかもしれない。それでもスティーブンは心のどこかで、彼女もほかの女性たちと同じだと信じていた。
「レストランから出るだけなのに、背中に手を添えてくれるのはなぜ?」エインズリーがきいた。
「ぼくの連れだと男たちにわからせるためさ」
「わたしはあなたの連れなの?」
「そうだ」
「今夜はってこと?」
「違うよ。また一緒に出かけたいな。今度、レセプション・パーティに出席しなくてはならないんだ。きみも一緒にどうだい?」
 ふたりは三月の夜気のなかへ足を踏みだした。じめじめしていて底冷えがする。エインズリーが体を震わせた。ふたりの関係が違ったものだったら、彼女に腕をまわすのに。だが次の瞬間、そんなことを気にするのはやめた。スティーブンはエインズリーの肩を抱き、体が触れあうまで引き寄せた。
 エインズリーが顔をあげる。
 彼女の顔には欲望が浮かんでいた。今夜ずっと、スティーブンが闘っていたのと同じ欲望が。エインズリーのすみれ色の目を見れば、彼を取材の対象としてではなく、男として見てくれているのだとわかる。彼女の関心を引き続けるためなら、どんなことでもしよう。
 スティーブンはエインズリーの肩を抱く腕にそっと力をこめ、車のほうへと導いた。車にたどりつくと、彼女は立ちどまって振り向いた。
「なにを望んでいるの?」エインズリーがか細い声で尋ねた。今日の午後〈エベレスト・メガ・ストア〉で会った、自信に満ちた編集長の姿はどこにもなかった。今の彼女からは、か弱さしか感じられない。そんなエインズリーにスティーブンは心を動かされた。
 だが、甘ったるい感情は払いのけ、彼はエインズリーの赤くなった頬に手をあてた。「キスかな」
「それだけ?」エインズリーが唇をなめた。ゆっくりと官能的に動く舌を見て、スティーブンは心のなかでうめいた。あの柔らかそうなピンク色の舌をじかに感じてみたい。彼女にぼくを味わってほしい。
 ふっくらとした唇、官能的なほほえみ……。エインズリーはどんな味がするのだろう?
「とりあえずはね」
 スティーブンは彼女の首筋にそって指を滑らせた。エインズリーが小さく震えながら、また唇をなめる。そして体を寄せてきた。ふたりの体が触れあうぎりぎりのところまで。
 彼はエインズリーの顔をやさしく撫で続けた。彼女がほしくてたまらなかったが、なんとか自分を抑えた。エインズリーのV字にくれた胸もとを指でたどっても、豊かなふくらみには触れずにおいた。
 スティーブンが頭をさげると、彼女は首を後ろにそらした。上を向いたエインズリーの顔を眺める。これからはじめて味わう女性を目の前にし、興奮が押し寄せてきた。
 そのとき、エインズリーがスティーブンの胸に手をあてて背のびをした。唇に彼女の熱い吐息を感じる。だが、彼はこらえた。
 いつキスをするかはぼくが決める。どんな雰囲気にするのかも、どう抱くのかも。主導権を握っているのはぼくだとエインズリーにわからせなければ。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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