和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ
著者プロフィール
エマ・ダーシー(Emma Darcy)
フランス語と英語の教師を経て、結婚後、コンピューター・プログラマーに転職。ものを作り出すことへの欲求は、油絵や陶芸、建築デザイン、自宅のインテリアを整えることに向けられた。人と接するのが好きで、人と人とのつながりに興味を持っていた彼女は、やがてロマンス小説の世界に楽しみを見いだし、登場人物それぞれに独自の性格を与えることに意欲を燃やすようになった。旅を楽しみ、その経験は作品の中に生かされている。現在はオーストラリアのニューサウスウェールズにあるカントリーハウスに住む。
フランス語と英語の教師を経て、結婚後、コンピューター・プログラマーに転職。ものを作り出すことへの欲求は、油絵や陶芸、建築デザイン、自宅のインテリアを整えることに向けられた。人と接するのが好きで、人と人とのつながりに興味を持っていた彼女は、やがてロマンス小説の世界に楽しみを見いだし、登場人物それぞれに独自の性格を与えることに意欲を燃やすようになった。旅を楽しみ、その経験は作品の中に生かされている。現在はオーストラリアのニューサウスウェールズにあるカントリーハウスに住む。
解説
カントリーミュージック界の大スター、そして幼い日の憧れの男性。久しぶりにジョニー・エリスと再会して、メガンは身を震わせた。でも、動揺していることを彼に気づかれてはならない。亡き父が更生させたかつての不良少年は、もう手の届かない人。牧場を彼と経営するようにという父の遺言に従って、ジョニーはここにしばらく滞在するだけなのだから。彼の寛大な援助なんて欲しくないわ。頑なな態度をとり続けるメガンに業を煮やしたのか、突然、ジョニーが皮肉な口調で言い放った。「きみはどんな援助も受けられる……僕と結婚すれば」
■元不良少年で、現在は立派な成功者となった三人の親友同士を描く『旅立ちの大地』も最終話を迎えます。兄と妹のようだった二人の関係の行方は?
■元不良少年で、現在は立派な成功者となった三人の親友同士を描く『旅立ちの大地』も最終話を迎えます。兄と妹のようだった二人の関係の行方は?
抄録
「きみのお父さんが僕の父親だった」
ええ、それはわかる。でも……。「あなたの里親はどうなったの?」
ジョニーは首を振った。「世の中には、子供をまかせないほうがいい大人もいるんだ。僕は十二歳のとき、里親の家を出た。裏通りで生きるために」
メガンはショックを受けた。今朝、虐待の話が出たけれど、どれくらい続いたのだろうか。彼は教えてくれそうにない。メガンは答えが期待できる話題に移った。「教育はどうしたの?」
「僕が受けた最高の教育は、きみのお父さんがしてくれた。どんな勉強より役に立った」
また父の話だ。愛のない少年にとって、それほど大切な存在だったのだ。愛がないどころか……ジョニーは人間そのものが信じられなかったに違いない。ほほ笑みは悪を避けるためだったという。
「どこで音楽を学んだの?」
「技術的なことはバンドの連中に教わった。だけど僕は小さいころから頭のなかで音楽をつくっていた。ほかのことを締めだせるから」
それを私は狡猾なコマーシャリズムだとさげすむなんて!
話を聞いていると、彼の歌さえもが、メガンの父親が教えたこととつながってくる。ジョニーの今あるすべてがそうなのかもしれない。
「父はあなたにギターをあげたわね」
「ああ。今でも持っているよ。ガンダムラで聖歌を歌うときは、あれを弾いている」
ここでもらったものは、すべて彼の大切な宝物なのだ。メガンの父親はそれを知っていた。
では、ジョニー・エリスを選んだのはなぜ?
ジョニーがいちばん息子のような気がしたから?
メガンはいちばんの娘だったから?
そう考えたいけれど、父はどの娘も一様に愛していた。それぞれに違う個性を。なのに自分たちがどんなに幸運か、感謝したことさえなかった。世話をしてもらうのが当たり前だと思っていた環境で、両親に愛されて育った。両親は娘たちの話を聞き、各自の興味を深めるために必要なものを精いっぱい与えてくれた。
メガンの子供時代はとても幸せだった。十代のころもおおむね楽しかった。寄宿学校にいるあいだはガンダムラが恋しかったけれど。のちの日々を暗くしたのは、ジョニーへの強い執着心だけだ。
彼のせいではない。
誕生日パーティに来てくれず、自分が考えた役を演じてくれなかったからといって、メガンはわがまま娘のように怒った。そして今度は別の役を考えたが、それも彼にはふさわしくないものだった。
けれど、ジョニーに対する見方は今日、たしかに変わった。問題は……彼の魅力がいっそう増したことだ。
「あなたに言ってなかったわね……お悔やみを」メガンは彼の手をつかみ、誠意を伝えた。「本当に気の毒だと思うわ、ジョニー」
ジョニーがすばやく視線を戻した。星もない、永遠の夜を思わせるような、暗い瞳だった。「明日は一緒にいてくれるかい? 墓前で。パトリックが僕らを結びつけてくれたんだ、メガン。きみと一緒にいたい」
一緒にいたい――それも、彼の頼みをはるかに超える形でひとつになりたいというメガン自身の欲求が全身を貫き、腹部をくねらせ、体じゅうの血を熱くさせた。メガンは顔のほてりを彼に見られませんようにと祈った。「ええ」喉がふさがれ、ほとんど声にならない。
「ありがとう」
一瞬、親密な空気が流れ、メガンの希望と夢が燃えあがった。ジョニーが立ちあがり、彼女も一緒に起こした。メガンの胸は大きく飛びはねた。彼が手を離す。今度は抱き寄せるつもりだろうか。そう願う気持ちがあふれ、警戒心があったとしても今はすっかり押し流された。
ジョニーが鋭く息を吸いこむ音がして、広い胸が持ちあがった。メガンが目を上げると、彼の頭が下がってきた。ジョニーは両手を彼女の腕に巻きつけ、視線を唇に釘づけにしている。押し殺していた息でメガンの唇が開いた。熱い期待に理性が吹き飛ぶ。彼はキスするつもりだ。ジョニー・エリスが私にキスしようとしている。
だが代わりに彼は話をした。
「メガン、今までずっときみを小さな妹のように思ってきた」
や、め、て……。声にならない叫びがメガンの頭のなかでこだました。
「きみも僕を大きな兄貴だと……きみの強い味方だと思ってくれたら……お父さんも喜ぶだろう」
いや……いや……いや!
メガンの反抗心が訴えた。これは父とはなんの関係もないのよ。何ひとつ!
「もうベッドに行ってやすんだほうがいいよ」ジョニーが言った。その笑みは兄らしい、いたわりの笑みだ。そして唇ではなく、額にキスをした。「おやすみ、メガン」
彼女の腕を放してあとずさると、ジョニーは背を向け、芝地の先の自室がある客用の翼棟まで歩いていった。
メガンは両手を握りしめた。彼のあとを追って身を投げだし、兄らしい感情をこなごなにしたいという衝動は抑えがたいほど強かった。けれどプライドが許さなかった。ここは良識に従って自室に戻り、ドアを閉めて、明日まで待とう。
明日は彼に見せつけてやるわ。小さい女の子ではなく、ひとりの女性であることを。男っぽい服装で中性化したりするものですか。この髪だって……。
見せつけてやる。
ただの妹として片づけられてなるものですか!
*この続きは製品版でお楽しみください。
ええ、それはわかる。でも……。「あなたの里親はどうなったの?」
ジョニーは首を振った。「世の中には、子供をまかせないほうがいい大人もいるんだ。僕は十二歳のとき、里親の家を出た。裏通りで生きるために」
メガンはショックを受けた。今朝、虐待の話が出たけれど、どれくらい続いたのだろうか。彼は教えてくれそうにない。メガンは答えが期待できる話題に移った。「教育はどうしたの?」
「僕が受けた最高の教育は、きみのお父さんがしてくれた。どんな勉強より役に立った」
また父の話だ。愛のない少年にとって、それほど大切な存在だったのだ。愛がないどころか……ジョニーは人間そのものが信じられなかったに違いない。ほほ笑みは悪を避けるためだったという。
「どこで音楽を学んだの?」
「技術的なことはバンドの連中に教わった。だけど僕は小さいころから頭のなかで音楽をつくっていた。ほかのことを締めだせるから」
それを私は狡猾なコマーシャリズムだとさげすむなんて!
話を聞いていると、彼の歌さえもが、メガンの父親が教えたこととつながってくる。ジョニーの今あるすべてがそうなのかもしれない。
「父はあなたにギターをあげたわね」
「ああ。今でも持っているよ。ガンダムラで聖歌を歌うときは、あれを弾いている」
ここでもらったものは、すべて彼の大切な宝物なのだ。メガンの父親はそれを知っていた。
では、ジョニー・エリスを選んだのはなぜ?
ジョニーがいちばん息子のような気がしたから?
メガンはいちばんの娘だったから?
そう考えたいけれど、父はどの娘も一様に愛していた。それぞれに違う個性を。なのに自分たちがどんなに幸運か、感謝したことさえなかった。世話をしてもらうのが当たり前だと思っていた環境で、両親に愛されて育った。両親は娘たちの話を聞き、各自の興味を深めるために必要なものを精いっぱい与えてくれた。
メガンの子供時代はとても幸せだった。十代のころもおおむね楽しかった。寄宿学校にいるあいだはガンダムラが恋しかったけれど。のちの日々を暗くしたのは、ジョニーへの強い執着心だけだ。
彼のせいではない。
誕生日パーティに来てくれず、自分が考えた役を演じてくれなかったからといって、メガンはわがまま娘のように怒った。そして今度は別の役を考えたが、それも彼にはふさわしくないものだった。
けれど、ジョニーに対する見方は今日、たしかに変わった。問題は……彼の魅力がいっそう増したことだ。
「あなたに言ってなかったわね……お悔やみを」メガンは彼の手をつかみ、誠意を伝えた。「本当に気の毒だと思うわ、ジョニー」
ジョニーがすばやく視線を戻した。星もない、永遠の夜を思わせるような、暗い瞳だった。「明日は一緒にいてくれるかい? 墓前で。パトリックが僕らを結びつけてくれたんだ、メガン。きみと一緒にいたい」
一緒にいたい――それも、彼の頼みをはるかに超える形でひとつになりたいというメガン自身の欲求が全身を貫き、腹部をくねらせ、体じゅうの血を熱くさせた。メガンは顔のほてりを彼に見られませんようにと祈った。「ええ」喉がふさがれ、ほとんど声にならない。
「ありがとう」
一瞬、親密な空気が流れ、メガンの希望と夢が燃えあがった。ジョニーが立ちあがり、彼女も一緒に起こした。メガンの胸は大きく飛びはねた。彼が手を離す。今度は抱き寄せるつもりだろうか。そう願う気持ちがあふれ、警戒心があったとしても今はすっかり押し流された。
ジョニーが鋭く息を吸いこむ音がして、広い胸が持ちあがった。メガンが目を上げると、彼の頭が下がってきた。ジョニーは両手を彼女の腕に巻きつけ、視線を唇に釘づけにしている。押し殺していた息でメガンの唇が開いた。熱い期待に理性が吹き飛ぶ。彼はキスするつもりだ。ジョニー・エリスが私にキスしようとしている。
だが代わりに彼は話をした。
「メガン、今までずっときみを小さな妹のように思ってきた」
や、め、て……。声にならない叫びがメガンの頭のなかでこだました。
「きみも僕を大きな兄貴だと……きみの強い味方だと思ってくれたら……お父さんも喜ぶだろう」
いや……いや……いや!
メガンの反抗心が訴えた。これは父とはなんの関係もないのよ。何ひとつ!
「もうベッドに行ってやすんだほうがいいよ」ジョニーが言った。その笑みは兄らしい、いたわりの笑みだ。そして唇ではなく、額にキスをした。「おやすみ、メガン」
彼女の腕を放してあとずさると、ジョニーは背を向け、芝地の先の自室がある客用の翼棟まで歩いていった。
メガンは両手を握りしめた。彼のあとを追って身を投げだし、兄らしい感情をこなごなにしたいという衝動は抑えがたいほど強かった。けれどプライドが許さなかった。ここは良識に従って自室に戻り、ドアを閉めて、明日まで待とう。
明日は彼に見せつけてやるわ。小さい女の子ではなく、ひとりの女性であることを。男っぽい服装で中性化したりするものですか。この髪だって……。
見せつけてやる。
ただの妹として片づけられてなるものですか!
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