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著者プロフィール
ミランダ・リー(Miranda Lee)
オーストラリアの田舎町に、四人兄弟の末っ子として生まれ育つ。スポーツが大好きな子供で、本を読むよりは外で遊ぶほうが好きだったという。父は教師、母は才能あるドレスの縫製師という家庭に育ち、全寮制の学校を出てクラシック音楽の勉強をしたのち、シドニーに移った。幸せな結婚をして三人の娘に恵まれたが、家にいて家事をこなす合間に姉エマ・ダーシーのすすめでロマンス小説を書き始める。趣味は幅広く、長編の物語を読むことからパズルを解くこと、そして賭事にまで及ぶ。小説を書くときのアイデアは、普段読む新聞、雑誌、小説、伝記、テレビ、そして少なくとも週に一度は見に行く映画から得る。現実に自分のまわりにいる人たちを登場させることはなく、“いつ私をヒロインにしてくれるの?”という娘たちの問いかけに、“決してないわ”と答えつづけているという。
オーストラリアの田舎町に、四人兄弟の末っ子として生まれ育つ。スポーツが大好きな子供で、本を読むよりは外で遊ぶほうが好きだったという。父は教師、母は才能あるドレスの縫製師という家庭に育ち、全寮制の学校を出てクラシック音楽の勉強をしたのち、シドニーに移った。幸せな結婚をして三人の娘に恵まれたが、家にいて家事をこなす合間に姉エマ・ダーシーのすすめでロマンス小説を書き始める。趣味は幅広く、長編の物語を読むことからパズルを解くこと、そして賭事にまで及ぶ。小説を書くときのアイデアは、普段読む新聞、雑誌、小説、伝記、テレビ、そして少なくとも週に一度は見に行く映画から得る。現実に自分のまわりにいる人たちを登場させることはなく、“いつ私をヒロインにしてくれるの?”という娘たちの問いかけに、“決してないわ”と答えつづけているという。
解説
シドニーの高級宝石店に勤める美貌の販売員タラは、ホテル王のマックスに見そめられベッドをともにした。一年がたち、二人は関係を続けているものの、最近のタラは恋人というより愛人に近い。仕事で世界じゅうを飛び回るマックスはあまりシドニーに戻らず、たまに会ってもホテルのベッドで過ごすだけだ。彼は将来の約束も口にしない。二人の関係はこれからどうなるのかしら。胸に不安がめばえ始めたのと時を同じくして、タラは彼の子を身ごもっていることに気づいた。
■セクシーで情熱的な作風が読者を魅了してやまないミランダ・リーの作品をお届けします。来日経験もある彼女が描く今回のヒロインは、母国語並みに日本語を操るという女性です。
■セクシーで情熱的な作風が読者を魅了してやまないミランダ・リーの作品をお届けします。来日経験もある彼女が描く今回のヒロインは、母国語並みに日本語を操るという女性です。
抄録
マックスはわたしを愛している。タラには確信があった。
人生のこの時期に彼が結婚したがらないのは、愛がないからではなく、タイミングの問題なのだ。結婚は予定外だとマックスが言ったことは、一度もないのだから。
母親に告げたとおり、タラも結婚を急いではいない。いまの彼女は、早くBゲートにたどり着くために急いでいた。早くマックスを出迎え、リージェンシー・ロイヤル・ホテルに連れていくのだ。
運が味方したのか、タラがBゲートの手前で息を切らして立ち止まったとき、マックスが税関の出口から現れ、決然とした足どりで傾斜した通路を下りてきた。片手にラップトップ・コンピューターを提げてもう一方の手でキャスターつきの黒いスーツケースを転がしている。
その姿は、きょう空港にたくさんいる身なりのいいほかのビジネスマンたちと大差ないように思えた。背は人一倍高いかもしれない。肩幅も広く、ハンサムだけれど、取りたててほかの人と変わっているわけではない。
なのにタラは彼の姿を見ただけで、どう説明しても母にはわかってもらえないような心地になった。頭の中で喜びがはじけ、体の血も熱くわき立つようだ。ひとりのときはこんなにいきいきとした気分にはなれない。
整ってはいるが地味なマックスの顔立ちや、とても保守的な服装に、二十四歳の女性すべての心がときめくとは限らないだろう。タラはスーツ姿以外の彼をあまり見たことがない。きょうもマックスはチャコールグレーのシングルのスーツだ。ぱりっとした白いシャツと、ストライプの青いネクタイを合わせている。
どれをとっても、ごく控えめだ。
けれどタラは、流行にとらわれない彼のイメージがかもし出す落ち着きや安心感が好きだった。いつ見ても、中身のある男性という感じがする。顔立ちそのものも大好きだ。
Bゲートを通ってくるマックスの視線はまだ、タラの目をとらえていない。その間に彼女はいつもより客観的にマックスの姿を眺めていた。
あらためて見ると、彼はまさに正統派のハンサムな男性だ。美青年ふうでもなく、粗削りな魅力の持ち主というわけでもない。
男らしさが漂う顔は、大きくてバランスがとれている。それを取り囲む焦茶色の豊かな髪は、裾が短く刈られ、必ず横分けにしてある。知的な青い瞳は奥深く、鼻は長くまっすぐで、焦茶色の濃い眉が全体を引き締めている。口は下唇がふっくらしているが、女姓っぽい感じはまったくない。反対に、いつも断固とした印象を与える。
マックスはにこやかな男性ではない。ほとんどの場合、唇は固く閉じられ、突き刺すような青い瞳は硬質の輝きを帯びている。そこがセクシーだとタラは思う。だがいらだったり怒ったりしたときは、近寄りがたい険しい光を放つのではないだろうか。ご機嫌を損ねると怖い上司になりそうだ。電話で数回、彼が従業員をどなりつけているのを聞いた覚えがある。
けれどマックスは、タラに対しては、いらだったことも怒ったこともない。人前でキスしたときだけは困った様子をしていた。それに、彼が車を買ってあげようと言ったときタラが断ったのが不満らしい。でも、彼が機嫌を損ねるとしたら、その程度だ。
ここに立って待っているわたしの姿に目を留めたら、マックスはきっとほほ笑んでくれるに違いない。
不意にマックスの唇がほころび、瞳の輝きもやわらかくなった。タラは彼のもとに駆け寄って腕の中に身を投げ出したいのをやっとの思いでこらえた。その場にとどまり、うれしさをこめてほほ笑み返すと、マックスはゆっくりとこちらに歩いてきた。
「一瞬、きみは来ていないのかと思ったよ」マックスは向き合うなり言った。
「もう少しで間に合わないところだったの」タラは打ち明けた。「すごく遅れてしまって。このサンダルで駐車場を必死に走ったわ」
マックスは問題のサンダルを見下ろしてから、彼女の体に沿ってゆっくりと目を上げていった。
「そのみだらな白いパンツのせいじゃないんだね? そもそも、どうやってはいたんだい? 縫いつけたみたいじゃないか」
「ストレッチ素材なの」
マックスの瞳がセクシーにきらめく。タラがいつも見とれる輝きだ。「そいつはありがたいね。脱がせるのに夜の半分を費やす場面が浮かんだよ。いいかい、一カ月近くも離れていたあと、そんな格好で迎えに来ちゃだめだ。ぼくがつらくなる」
「悩ましい服が好きなのかと思って」彼は遅れてきたわけを聞こうともしない。タラは腹立たしかった。彼にとってはどうでもいいことなのかしら。タラには少しばかりショックだった。
「どのくらい長く離れていたかにもよるよ。ブラジャーをつけているので助かったが」
「いいえ、つけていないわ」
マックスは彼女の胸を見つめ、それから口元まで目を上げた。「言わないでほしかったな」低い声でつぶやく。
「ねえ、マックス、きょうはあなたを何ひとつ喜ばせられないの?」
「きみはいつも喜ばせてくれるよ」ざらついた声でマックスが答える。彼はラップトップ・コンピューターを下に置き、手を伸ばして彼女の頬を優しく撫でた。
そしてタラが驚いたことに、マックスは彼女にキスをした。彼は片手をタラの髪の下にすべりこませ、うなじを包むようにして、きっぱりと情熱的に唇を重ねた。
キスはたっぷり一分は続いたに違いない。タラは欲望にのまれて膝から力が抜け、頬が恥じらいの色に染まった。人に見られたに決まっている。
*この続きは製品版でお楽しみください。
人生のこの時期に彼が結婚したがらないのは、愛がないからではなく、タイミングの問題なのだ。結婚は予定外だとマックスが言ったことは、一度もないのだから。
母親に告げたとおり、タラも結婚を急いではいない。いまの彼女は、早くBゲートにたどり着くために急いでいた。早くマックスを出迎え、リージェンシー・ロイヤル・ホテルに連れていくのだ。
運が味方したのか、タラがBゲートの手前で息を切らして立ち止まったとき、マックスが税関の出口から現れ、決然とした足どりで傾斜した通路を下りてきた。片手にラップトップ・コンピューターを提げてもう一方の手でキャスターつきの黒いスーツケースを転がしている。
その姿は、きょう空港にたくさんいる身なりのいいほかのビジネスマンたちと大差ないように思えた。背は人一倍高いかもしれない。肩幅も広く、ハンサムだけれど、取りたててほかの人と変わっているわけではない。
なのにタラは彼の姿を見ただけで、どう説明しても母にはわかってもらえないような心地になった。頭の中で喜びがはじけ、体の血も熱くわき立つようだ。ひとりのときはこんなにいきいきとした気分にはなれない。
整ってはいるが地味なマックスの顔立ちや、とても保守的な服装に、二十四歳の女性すべての心がときめくとは限らないだろう。タラはスーツ姿以外の彼をあまり見たことがない。きょうもマックスはチャコールグレーのシングルのスーツだ。ぱりっとした白いシャツと、ストライプの青いネクタイを合わせている。
どれをとっても、ごく控えめだ。
けれどタラは、流行にとらわれない彼のイメージがかもし出す落ち着きや安心感が好きだった。いつ見ても、中身のある男性という感じがする。顔立ちそのものも大好きだ。
Bゲートを通ってくるマックスの視線はまだ、タラの目をとらえていない。その間に彼女はいつもより客観的にマックスの姿を眺めていた。
あらためて見ると、彼はまさに正統派のハンサムな男性だ。美青年ふうでもなく、粗削りな魅力の持ち主というわけでもない。
男らしさが漂う顔は、大きくてバランスがとれている。それを取り囲む焦茶色の豊かな髪は、裾が短く刈られ、必ず横分けにしてある。知的な青い瞳は奥深く、鼻は長くまっすぐで、焦茶色の濃い眉が全体を引き締めている。口は下唇がふっくらしているが、女姓っぽい感じはまったくない。反対に、いつも断固とした印象を与える。
マックスはにこやかな男性ではない。ほとんどの場合、唇は固く閉じられ、突き刺すような青い瞳は硬質の輝きを帯びている。そこがセクシーだとタラは思う。だがいらだったり怒ったりしたときは、近寄りがたい険しい光を放つのではないだろうか。ご機嫌を損ねると怖い上司になりそうだ。電話で数回、彼が従業員をどなりつけているのを聞いた覚えがある。
けれどマックスは、タラに対しては、いらだったことも怒ったこともない。人前でキスしたときだけは困った様子をしていた。それに、彼が車を買ってあげようと言ったときタラが断ったのが不満らしい。でも、彼が機嫌を損ねるとしたら、その程度だ。
ここに立って待っているわたしの姿に目を留めたら、マックスはきっとほほ笑んでくれるに違いない。
不意にマックスの唇がほころび、瞳の輝きもやわらかくなった。タラは彼のもとに駆け寄って腕の中に身を投げ出したいのをやっとの思いでこらえた。その場にとどまり、うれしさをこめてほほ笑み返すと、マックスはゆっくりとこちらに歩いてきた。
「一瞬、きみは来ていないのかと思ったよ」マックスは向き合うなり言った。
「もう少しで間に合わないところだったの」タラは打ち明けた。「すごく遅れてしまって。このサンダルで駐車場を必死に走ったわ」
マックスは問題のサンダルを見下ろしてから、彼女の体に沿ってゆっくりと目を上げていった。
「そのみだらな白いパンツのせいじゃないんだね? そもそも、どうやってはいたんだい? 縫いつけたみたいじゃないか」
「ストレッチ素材なの」
マックスの瞳がセクシーにきらめく。タラがいつも見とれる輝きだ。「そいつはありがたいね。脱がせるのに夜の半分を費やす場面が浮かんだよ。いいかい、一カ月近くも離れていたあと、そんな格好で迎えに来ちゃだめだ。ぼくがつらくなる」
「悩ましい服が好きなのかと思って」彼は遅れてきたわけを聞こうともしない。タラは腹立たしかった。彼にとってはどうでもいいことなのかしら。タラには少しばかりショックだった。
「どのくらい長く離れていたかにもよるよ。ブラジャーをつけているので助かったが」
「いいえ、つけていないわ」
マックスは彼女の胸を見つめ、それから口元まで目を上げた。「言わないでほしかったな」低い声でつぶやく。
「ねえ、マックス、きょうはあなたを何ひとつ喜ばせられないの?」
「きみはいつも喜ばせてくれるよ」ざらついた声でマックスが答える。彼はラップトップ・コンピューターを下に置き、手を伸ばして彼女の頬を優しく撫でた。
そしてタラが驚いたことに、マックスは彼女にキスをした。彼は片手をタラの髪の下にすべりこませ、うなじを包むようにして、きっぱりと情熱的に唇を重ねた。
キスはたっぷり一分は続いたに違いない。タラは欲望にのまれて膝から力が抜け、頬が恥じらいの色に染まった。人に見られたに決まっている。
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