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八幡太郎義家

八幡太郎義家

著: 桜田晋也
発行: オンライン出版
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著者プロフィール

 桜田 晋也(さくらだ しんや)
 一九四九年(昭和二四)札幌生。
 一九七二年『浪漫』に文芸評論を発表。以後同誌を中心に評論活動に入る。一九八〇年『奈良日々新聞』に『南朝記』を連載。歴史小説の執筆活動に入る。主著に『明智光秀』『足利高(尊)氏』(以上読売新聞社刊)『尼将軍 北条政子』(角川書店刊)『元就軍記』(徳間書店刊)など歴史大河小説を中心に多数。他にNHK文化講演会、NTV「知ってるつもり」(北条政子編)などに出演。文芸家協会会員。静岡県下田市在住。

解説

 時は平安後期。腐敗の極みに達した摂関政治下の奥州を颯爽と駆け抜けた英雄がいた。武家政治の基盤を築き、“武神”とたたえられた伝説の貴人・義家である。源氏の氏神である八幡神の名を持つ、誇り高き美丈夫武者のあざやかな生きざまを描く。

目次

八幡太郎義家

抄録

 日本の武家の歴史の中で八幡太郎義家ほど有名でありながら、実像が意外に知られていない人物も少ない。
 最大の理由は彼の合戦の舞台が奥州だったため、十分な記録や戦記物語が残らなかったせいであろう。
 奥羽合戦については様々な議論がある。現代では、大和民族の蝦夷民族に対する侵略戦説や東北の特産品を狙った源氏の征服戦説が目立つが、階級闘争史観もどきの行きすぎた解釈と言うべきであろう。
 なるほど摂関政府の植民地主義的な支配は過酷だったが、それは坂東に対しても同じだった。朝廷の対蝦夷政策は数百年以上前から比較的にゆるやかな同化政策を伝統としており、世界史上に多く見られるような異民族の大量虐殺や絶滅策を採った記録はない。
 九州の熊襲や隼人の例を待つまでもなく、狭い日本列島では遅かれ早かれ中央の統一が実現され、民族間の同化が進む歴史の流れにあった。
 山形の伝承によると、安倍一族による収奪や徴発は悪国司に優るとも劣らぬものだったという。実際、彼らが真に蝦夷の民意を体した政権だったならば、内部からの造反はなかっただろうし、国税を永年にわたって横領しもしなかったはずである。
 後三年の役の場合も同じで、むしろ己の野望の実現のために蝦夷を巻き込んで合戦を引き起こしたのは、大和民族出の家衡と武衡の方である。金沢柵の戦いに彼らが最後まで自分の生命に代えて城内の民を救おうとはしなかったことはその証拠であろう。
 ちなみに義家自身に関しては、奥羽や坂東の地で収奪をした記録は一切ない。
 義家は生存中から多くの伝説をうみ、畏敬と称賛の声が高かった半面では、無責任な嫉妬や中傷に晒された存在だった。現代流に言えばマスコミや世間の好奇と嫉妬と、中傷に晒された不出世のヒーローだったわけである。

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