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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

帰ってきた侯爵夫人

帰ってきた侯爵夫人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・アシュリー(Anne Ashley)
 イギリス中部レスターシャーで生まれ育つ。幼い息子たちを寝かしつけるときに役立った物語を作る才能が、歴史ロマンス小説の分野でも開花した。趣味はガーデニングで、自宅の庭を開放することも。現在は夫と二人の息子、二匹の猫とともにイギリス西南部に在住。

解説

 9年ぶりにロンドンの自宅に戻ったジェニファーは決心していた。夫であるロクサム侯爵と正式に離婚し、自分の道を歩むのだと。あの日、彼のもとを去ったのは、不貞の罪を決めつけられたから。誤解を解こうにも、夫は固く心を閉ざしてしまった。以後、人の助けも借りて、貧しいけれど幸せな日々を得たのだ。一方、ロクサム侯爵は不信と感慨、そして嫉妬に駆られていた。彼が酒にひたって放蕩の日々を過ごしているうちに、幼かった妻は、美しく自信あふれるレディに変身してしまった! 秘密めいたその瞳に、どんな過去を隠しているのだ?

抄録

 九年前に侯爵夫人が失踪した理由を知る人がある程度いたとしても、もちろんその人たちは口を堅く閉ざしていた。だから、上流階級の人間は侯爵夫妻の結婚の破綻原因についても引き続き推測するか、いろいろな事実が明らかになるのを待つしかない。当然、大多数の人が興味津々でロクサム侯爵の行動を監視しつづけていたが、次の週末になってようやく優秀な鹿毛を操ってカーゾン・ストリートに入っていく彼の姿が目撃された。侯爵が二頭立ての二輪馬車を止めたのは、社交シーズン中に使用するために借りられた、とある家の前だ。
 従僕はロクサム侯爵を家に入れてしばらく玄関ホールで待たせたあと、通りに面した気持ちのよい部屋に案内した。窓から差し込む明るい朝の陽光はその部屋にいる一人の人間だけに注がれているかのようだ。眩い光が机に向かってせっせと手紙を書いている女性のほっそりした体を包み込んでいる。日差しを浴びた髪は燃え立つように赤い。ずいぶん前、野生の花が咲き乱れる野原で楽しそうに遊び戯れる彼女を初めて見た瞬間、侯爵はあの美しい鳶色の髪にすっかり心を奪われたのだった。
 部屋の中央にたたずんだとき、どんな思いが侯爵の心をよぎったのか言い当てるのは、どんなに親しい友人でもむずかしかっただろう。というのも、彼の表情はいつものように謎めいていたのだ。ただ、こめかみの血管が脈打ち、きっと結んだ口の横の筋肉が少しこわばっているところを見ると、この女性との約九年ぶりの再会にそれほど無関心でないことがわかる。
「どうぞおかけになって、ロクサム」彼女は小さな声で勧めたが、顔も上げないし、手紙を書く手も止めない。
 侯爵はその場にたたずんだまま、便箋の上を行ったり来たりするほっそりとした白い手を見つめていた。彼女は用事を終えて手紙に砂を振りかけると、ようやく頭を上げて初めて優美な顔をはっきりと見せた。
 この数日間、大勢の人が厚かましくも侯爵夫人の美しさについてあれこれ言っていた。今、侯爵は自分の目で見て、みなの称賛の言葉がまったく正しかったと実感した。以前の彼女は確かにかわいらしい娘だった。そして時の流れがよい効果をもたらし、繊細な頬骨や唇の官能的な曲線の魅力が増していることを、認めずにはいられなかった。ただし、あのどきっとするような澄んだ輝くグリーンの瞳は変わっていない。
「立っているほうがいいようですね」耳に心地よい柔らかな声は完璧に抑制されて、表情と同様まったく感情が表れていないので、彼女が久しぶりの再会にどんな思いでいるのかわからない。
 ロクサム侯爵は前々から、自分が感情を抑える力が卓越していることに大いに満足していた。また他人のそういう力も高く評価しているが、今回にかぎっては、妻がずば抜けた自制心を発揮しているのでかすかないらだちを覚えた。もちろん彼女も二人の再会に何かを感じているはずではないのか?
「たぶんあなたにとって、時間は大切なものなのでしょうね」彼女の話し方は相変わらず淡々としている。「わたしにもかぎられた時間しかありません。二、三日中にロンドンを離れますので」
 口元に面白がっているような表情を漂わせながら立ち上がると、彼女は淑やかに窓のほうへ歩いていった。侯爵には美しい後ろ姿がはっきりと見えた。彼女の体は相変わらずほっそりとしているが、以前よりも女らしい曲線を描いている。
「あなたがわざわざ訪ねてきてくださったのですから、光栄に思わなくてはいけませんね」
 その言葉に含まれる皮肉に気づいて、ロクサム侯爵は顔をしかめた。「きみが残した手紙には、どうしてぼくと会いたいのか、理由が書かれていなかったからね」そう言いながら考えた。どうして彼女は陰気な黒いドレスを着ているのだろう?
「あなたのように頭の切れるかたなら、理由はすぐにわかると思ったのです」彼女は振り返って再び侯爵と向かい合った。ゆっくりと頭のてっぺんから爪先まで彼を値踏みするように見たあと、まばたきもせずに冷笑を浮かべたグレーの目と目を合わせた。「もういいかげんにわたしたちのばかげた婚姻関係を正式に終わらせたほうがいいのではないでしょうか。離婚が生易しいことでないのは承知していますが、あなたのような地位のかたなら実現するのは不可能ではないでしょう」
「たぶんね」ロクサム侯爵はうなずいた。仕立てのよい上着のポケットに手を入れて嗅ぎたばこ入れを取り出すと、一服してから慣れた手つきで美しい彩色が施された蓋を閉めた。「好奇心の強い下品な人間と思われたくないのだが、これだけ長い年月がたったあとで、どうして急にぼくたちの結婚生活に終止符を打ちたいと思ったのか、理由を教えてくれないか?」
「ほかの男と結婚するために自由になりたいのか、とおたずねなら……返事はノーですわ、ロクサム」侯爵の目に浮かぶ冷笑に負けず劣らず、彼女の目にもはっきりと嘲笑が見える。「幸せな結婚を経験するのは一度で十分ですから」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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