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孤高の不良公爵

孤高の不良公爵

著: ハイディ・ライス 翻訳: 山口絵夢
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタル
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 ハイディ・ライス(Heidi Rice)
 ロンドンで生まれ育ち、口論好きな二人の息子と夫、そして二匹のハムスターとともに現在もそこに暮らす。十代のはじめのころからずっと映画マニアであり、ロマンス中毒だという。イギリスの大衆紙デイリーメールと、そのアイルランド版姉妹紙で、十年間、映画批評家として活躍。数年前、新しい理想の仕事、ロマンス小説家に転身することに決めた。

解説

 幻ではない。目の前にいるのは、本当にジオだ。酔っぱらいに襲われたイシーを助けてくれたのは、あの、ジョヴァンニ・ハミルトンだった。子供の頃、イシーの母が家政婦をしていた公爵家の息子。複雑な家庭環境のせいで心を閉ざした少年の、不良っぽく大人びた雰囲気はイシーを夢中にさせたが、彼女が十七歳だったあの夜、幼い恋心は粉々に打ち砕かれた。二度と会いたくないと思っていたジオ。なぜここにいるの? 戸惑う彼女を、彼は十年前よりさらにセクシーになった瞳で見つめた。「大人になったな、イシー。そろそろ仲直りしないか?」そう言うと、彼は口もきけずに立ちすくむイシーの唇をふさいだ。
 ■窮地にいたイシーをジオが助け、運命的な再会を果たした二人。再び情熱におぼれますが、ジオの孤独な魂は、決してイシーをそれ以上近づけようとはせず……。

抄録

「仕事だったの」彼女はカーステアズたちの前にいたとき以上に肌が露出しているのを気にしながら、言いわけがましく言った。
「仕事? あれが仕事かい?」ジオはそっけなく言った。「カーステアズのような愚か者に襲われそうになるとは、いったいどういう仕事なんだ?」彼は目を細めた。「僕があの場にいなければどうなったと思う?」
 イシーは分別めいた非難の声を聞き取り、大きなお世話よ、と叫びたくなった。
 今思えば、予約は受けるべきではなかった。それに、客がどんなに酔っぱらっているかわかっていながら室内に入ったのも間違いだったかもしれない。でも、何カ月も大変なプレッシャーにさらされていたし、シアターの従業員たちの生活がかかっていた。
 だから危険を冒した。愚かだった。でも、自分以外誰のことも気にしない、ジオのような人に批判されたくはない。
「カーステアズのひどい振る舞いのことで私を責めたりしないで」怒りのせいで彼女の声は意図した以上に大きくなった。
 ジオの目に驚きがよぎった。
 けっこう。
 私がもう、かつてのようにあこがれのまなざしで彼を追いかけていたファンではないと気づいていいころだ。
「彼は酔っぱらって、いやらしいことをしようとしたわ」イシーはベッドの反対側に体をずらし、床に足を下ろした。「でも、誰もあなたに助けてなんて頼んでないわ」彼女は立ち上がり、彼に向き合った。「あなたが自分でそうしたのよ。あなたがいなくても、私は全然大丈夫だったわ」
 たぶん。
 イシーはたわむ衣装を必死につかんだまま、贅沢な内装の寝室をずんずん歩いた。今すぐお気に入りのジーンズとTシャツが着られるならなんでも差し出しただろう。ムーラン・ルージュから抜け出してきたような格好では何を言ってもあまり迫力がない。
「どこに行くつもりなんだ?」ジオは危険なほど低い声で言った。
「帰るのよ」イシーはドアに手を伸ばした。
 しかし、堂々と退場しようとドアを開けると、大きな日焼けした手が頭上に伸び、ばたんとドアを閉めた。
「いや、それはない」ジオは言った。
 イシーはぱっと振り向いたが、すぐに間違いに気づいた。肩がドアにぶつかり、息をのんだ。瞳の金色の虹彩が見えるほど彼が間近に立ち、イシーにはアフターシェイブのぴりっとした香りや体温さえ感じられた。
 彼女は胸の先端が縮こまるのを感じ、しっかり腕を組んでいたが、胸は彼に聞こえそうなほど高鳴っていた。
「何?」彼女は追いつめられ、ぴしゃりと言った。前回こうしてジオの間近にいたときに、彼女は処女を失ったのだ。
「怒って出ていくことはないだろう」耳の横のたくましい腕が下ろされ、彼が後ろに下がると、大きく息を吐いた。
「きみは誤解している」ジオは言い、もどかしそうにため息をもらした。
「正確には、何を?」イシーは首をかしげ、顎を突き出した。
 なんて腹立たしい。
 身長百六十八センチの私が十五センチヒールを履いたら、彼と目の高さが同じになってもいいはずだ。だが、そううまくはいかなかった。ジオは前から長身だった。背が高く、痩せていた。でも……いつのまにこんなにがっしりしたの?
 イシーはうんざりしているふりをしようとしたが、彼女の乏しい演技力と、心臓が飛び出しそうなほど激しく打っている状態では成功は望めなかった。イシーは過去の記憶を、“人生最大の失敗”と記した箱に押し戻して鍵をした。ジオは彼女を眺めていたが、チョコレート色の瞳からは何も読み取れない。かつてはそんな荒涼とした表情を謎めいていると思ったものだが、それはジオには魂がないという証拠だった。
「カーステアズには当然の報いだし、僕は喜んでそうした」ジオはきっぱりと言い、ズボンのポケットに拳を突っ込んだ。「きみを責めてなどいない。悪いのはあの状況だ」目が合うと、イシーは一瞬、驚くものを見たと思った。まさか心配しているの?
「金が必要なら、僕の所に来るべきだったんだ」
 ジオが有無を言わせぬ口調で言うと、イシーは愚かな間違いだったと悟った。さっき見たと思ったのは心配ではなかった。軽蔑。
「ストリッパーになる必要はなかったんだよ」
 イシーの胸の鼓動が止まり、顔は野火のように赤くなった。
 今、ストリッパーって言った?
 ジオは彼女の頬に手を当てた。思いがけず触れられ、彼女の怒りの反応は喉もとで止まった。
「たしかに、僕たちは悪い別れ方をしたが、一度は友達だったんだ。僕ならきみを助けられる」ジオは親指で彼女の頬をごく軽く撫でた。「それに、何があろうと、ほかの仕事を見つけるべきだ」保護者ぶった口調で言っても、彼は興奮を抑えることはできず、目は深みを増した。「だって、きみのストリップ・ショーはひどいものだったからね」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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