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甘い降伏 役員室の恋人たち II

甘い降伏 役員室の恋人たち II

著: リズ・フィールディング 翻訳: 鈴木けい
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス役員室の恋人たち
価格:525円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 リズ・フィールディング(Liz Fielding)
 イングランド南部バークシャー生まれ。二十歳のときアフリカに渡り、秘書の仕事に就いた。土木技師と結婚し、その後十年間をアフリカと中東で暮らす。夫は激務で、彼の帰宅を待つ長い時間、ものを書いて過ごすうち作家の道に。現在はウェールズに住んでいる。夫とのあいだに二人の子供がある。

解説

 ロンドンの老舗百貨店C&Fの経営を担うクレイボーン三姉妹。その経営能力を見るための、ファラディ一族による密着調査は、三女ロマーナとニール・ファラディを結びつけた。続いては弁護士のブラム・ファラディが、アクセサリー・デザイナーの次女フローラを調査する番だった。経営に興味のないフローラには、密着調査など迷惑なかぎり。だから、南の島で古代宝飾品について取材してほしいと言われたとき、渡りに船とばかりに飛びついた。服装も髪型もぱっとせず、仕事にしか興味のないフローラ。同行したブラムはいささかうんざりの体だったが、二人は、南国の楽園で二週間一緒に過ごさなければならなかった。

抄録

 ジョーダンの“勝負を互角にしろ”という言葉を思い出すと、彼女が用心深くするのも当然だという気がした。戦法としては警戒させず、まずは友達になること……。
 考えるのはやめにした。そうしないと戦略がどんどん浮かんでくる。
 それに、まだこれからだ。彼女には隠された何かがある、まだ発見していないものが。それを突き止めるのがぼくの務めだ。フローラ・クレイボーンを突き動かしているものを見つけだす。どんな小さな弱点でもいいから探しだす。秘密を暴く。
 さしあたり単純なことから始めよう。「ほかに、きみについて知っておいたほうがいいことはないかい? 万が一、病院にかつぎこまれたときの予備知識として」
「どうして病院にかつぎこまれるの?」
 遺跡が崩れ落ちてくるかもしれない。「さあ、わからないからきいてるんだ」ブラムは少しいらだたしげに答えた。彼女は単純な質問すら、尋問に変えてしまう。「血液型が特殊だとか、ペニシリンにアレルギーがあるとか、ナッツ類がだめだとか」なぜこんな質問をしているんだ?。
「いいえ、防虫剤だけよ。だからエッセンシャルオイルを使っているわ。うちの店に優秀なアロマセラピーの専門家がいるの。去年アフリカへ行ったときも、彼女に特別なオイルを調合してもらったわ」
「効き目はあるのか?」
「ほかと比較はできないけど、化学的なものよりずっといいにおいよ」フローラは彼の感想を知りたくて手首をさしだした。
 ほかの女性にそんなことをされたら、相手の気持ちを察して手首をつかんで揺らし、顔に近づけてその白い肌にキスを……あとはなるようになる。だが、フローラ・クレイボーンはブラムにとって謎だらけの女性だ。そこで彼はそうする代わりに立ちあがった。
「あら。撃退するのは男性じゃなくて虫のはずなのに」
「気にしないでくれ」ブラムは腕時計を見た。「今夜出かけるなら、その前にぼくは二時間ほど眠っておくよ。このままじゃ料理の上に突っ伏してしまいそうだ。七時半までに行かなかったら、部屋のドアをノックしてくれないか」
「眠る?」
 彼女は人をひやかすのも一流だ。とはいえ、きのうの沈黙に比べたら大進歩だろう。
「あなた、現地時間に体を合わせられる強い人じゃなかったの?」
日はね」
 フローラは帽子に手をかけ、つばの下から彼を見上げた。「でも、あなたは休暇中じゃないわ。少なくとも自分でそう言ったもの」
ムはいらいらしてきた。「鼻が日に焼けて赤くなってるぞ。亜鉛の日焼け止めを使うといい。持っているかい?」
 答える代わりに、フローラはバッグのなかから小瓶をとりだした。蓋をとり、白いクリームをたっぷりすくって鼻につける。
「ご満足?」
「言うことなしだ」

 フローラの目は、リゾートホテルのロビーへ歩いていくブラムの長い脚を追った。鋭いまなざしは、いやでも脚から腰へ移る。彼の腰は、人一倍プライドの高い女性の意志さえぐらつかせるほどたくましい。
 ひとりの男性がそんなにたくさんのものを持っていいのだろうか。幸い、ブラムはすべてを持っているわけではない。彼が女性を意識して以来、女性たちは彼に身を投げだしてきただろう。そんな男性に温かい思いやりと感じがいいことを期待するのは欲張りというものだ。
 ブラム・ギフォードがフローラと一緒にいたくないのは、彼女の外見が彼の高い基準に達していないからだ。フローラはインディアが集めた彼に関するファイルを読んだ。彼には二つの顔がある。昼間は多忙を極める優秀な顧問弁護士。夜は美しい女性を相手にするプレイボーイ。相手は必ず複数。長続きする関係など信じていない。
 フローラが彼と一緒にいたくない理由はもっと込み入っていた。ブラムは彼女の夢の男性によく似ている。彼が優しければ、嫌いになろうと努力しなくてはいけない。
 実際はあまり努力しなくてもいいから、ありがたく思うべきだ。
ってこなければいいと思いながら、ひとりぼっちのブロンド女性を観察する。彼女こそ、ブラム・ギフォードがふだんつきあっているタイプだ。おそらく少し年上だけれど、なんといっても彼は休暇中だし、ちょっと目をつぶれば格好の気晴らしになるだろう。
 ところが、ブラムは彼女の魅力にも目を奪われないようだ。フローラはそのことで少し浮き浮きした気分になっている自分に腹が立った。ショルダーバッグの奥に手を入れ、先ほどの地図とは違う精密な地図をとりだす。その地図は彼に見つからないよう、バッグの底に押しこんであった。
 地図には売店の女性が埋葬地の場所に印をつけてくれた。
 こうしてブラム・ギフォードが遅いシエスタをとっているあいだ、フローラはプールサイドで翌日の計画を練った。夢中になるあまり、シャドー・マンのことをいっとき忘れた。
 彼を欺いていることに後ろめたさを感じるべきだった。しかし、クレイボーン家の女性が策略に長けていることを披露するのが彼女の任務だ。
 あっというまに日没が訪れ、フローラはようやくブラムとの食事に出かけるためにバンガローへ戻ろうと腰を上げた。シャワーを浴びて着替えなければ。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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