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雇われた婚約者 ダンテ一族の伝説 VI

雇われた婚約者 ダンテ一族の伝説 VI

著: デイ・ラクレア 翻訳: 藤峰みちか
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタルダンテ一族の伝説
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 デイ・ラクレア(Day Leclaire)
 家族とともに、ノースカロライナ州東岸沖の小さな島、ハッテラス島に住む。毎年激しい嵐に襲われ、しばしば停電に悩まされながらも、それを補って余りある、美しい自然や楽しい釣り、そしてこの上なくすばらしい海の眺めに魅せられている。家族で飼う猫や、息子が飼うハムスターなどに囲まれ、にぎやかに暮らしている。

解説

 レイフは豪華な会場で、大勢の花嫁候補たちを紹介され辟易していた。運命の相手と出会ったとき、その身を“炎”に包まれる――そんなダンテ家の伝説などレイフは信じていなかった。事故死した妻に対しても“炎”は感じなかったし、再婚する気もない。弟の入れ知恵どおり、偽りの婚約者を仕立て上げてお茶を濁そうか……。そのとき、後ろで立ち働いていたウエイトレスがトレイをひっくり返し、グラスが派手な音をたてて割れた。シャンパンが飛び散る。その場で解雇されうなだれる彼女に尋ねると、金に困っているという。レイフは気の毒に思い、彼女に婚約者役として雇いたいと申し出た。優雅な妖精のように美しい彼女と話すうち、キスしたくなったレイフがそれを実行に移した瞬間……思いもよらない感覚が二人を襲った。
 ■『めぐり逢いの交差点』に続く、人気ミニシリーズ〈ダンテ一族の伝説〉です。結婚願望のないレイフが周囲の干渉をかわそうと雇った、偽りの婚約者ラーキン。二人が出会ったのは決して偶然ではありませんでした。ラーキンに隠された驚くべき秘密とは?

抄録

「そこが次のポイントだ。君は嘘をつきたくない。僕も君に嘘をつかせたくない。だから、僕たちが婚約したら、その瞬間から婚約は本物となる。唯一の違いは、僕たちの婚約は必ず終了し、終了時に君は拘束時間に見合った報酬を受けるという点だ」
「婚約は本物だけれど、結末が予定されているわけね」ラーキンは一方の眉を引き上げた。「鈍いふりをするつもりはないけれど、そういう場合はどこまで親密に接するべきなのかわからないわ」
 レイフは落ち着かなげに口ごもった。自制心で暴れ出しそうな感情を抑えこむ。「僕は人づき合いが苦手でね。人にもそう言われる。おそらく君もすぐに実感して、さっさと僕と縁を切りたいと思うだろう。そのときまではほかの婚約となんら変わりはない。君の指には指輪がはまるし、結婚式の予定も立てる」彼が口元を曲げた。「結婚式はできるだけ先のほうがいい。実際の日取りや手付け金なんかがからんでこないように」
 ラーキンのユーモアが顔を出した。「何ごともあわてて進めたくないわ。あなたの最初の結婚のこともあるし、婚約期間を長く取って着実に進めましょう」
「なんだ、もうせりふが板についてるじゃないか」
 彼の顔がユーモアで明るくなり、今度は笑みが目元にまで広がった。レイフほどすてきな男性には会ったことがない。ひとりの人間にこれほど男性らしい美しさが与えられるなんて不公平ではないだろうか。高い頬骨、力強い顎、キスをするのにうってつけの形をした口、日が当たるとところどころ筋状に金色に輝くこげ茶色の髪。でも、ラーキンが最も惹かれるのは彼の目だった。鮮やかな翡翠色をしていて、気分によって陰の垂れこめた森のように色が濃くなるのだ。
「それで、私たちはどうすればいいの?」ラーキンはようやく尋ねた。「私があなたの計画に同意したと仮定して」
「最初に簡単なテストをする。合格しなければ、この件は忘れてくれ。君には社内の仕事を斡旋しよう。だがうまくいけば、次のステップに進む」
「どんなテストなの?」ラーキンはびくびくしながら尋ねた。
「これだ」
 彼が立ち上がり、ふたりを隔てていたコーヒーテーブルをまわってきて手を差し出した。彼女も立ち上がり、彼のてのひらに指をのせた。そのとたん、ふたりのあいだに弾けるような熱が広がった。まばゆい閃光がとてつもない速さで肉体と骨に切りこんでくるかのようだ。痛くはない。痛くはないけれど……ふたりの手が溶けてくっついたみたいだ。ラーキンは信じられない思いで息をのみ、手を引いた。
「いま、何を?」ふたりは同時に言った。
 レイフが一歩下がり、ラーキンに鋭い疑惑の目を向けた。「君も感じたのか?」
「もちろんよ」ラーキンはてのひらをスラックスにこすりつけ、そこに残る感覚を消そうとしたが無駄だった。「なんだったのかしら?」
「見当もつかない」
 ラーキンはてのひらを見つめた。なんの痕もない。あれほどの熱ならまだ煙を上げていてもよさそうなものだ。「これってまさか……」ラーキンは咳払いをした。「ひょっとしたら……」
 彼の顔に断固とした否定の表情が浮かんだ。目からはためらいの色が消え、ぎらついた光が現れた。「炎じゃないかって?」彼はつぶやいた。「まさにそのようだ」
 ラーキンは愕然として彼を見つめた。「冗談でしょう?」
「僕は個人的には信じていない。だが、伝説の炎のことをたったいま僕たちが感じたのと同じように表現しているのを聞いたことがある」
「これがあなたのテストだったの? あなたと私が触れ合ったときに、炎を感じるかどうかを確かめるのが」
「違う。じつを言うと、僕は君にキスをするつもりだった」
 ラーキンは一歩後ろに下がった。発言自体と、それが仕事の話でもしているように伝えられたことがショックだった。「どうして?」
「君が僕に肉体的に嫌悪を感じたりすれば、婚約しても意味はない。家族は即座に勘づくだろう」
 ラーキンは自分の手を見下ろし、かすかに脈動するてのひらのまんなかを親指で引っかいた。「それで、いま私たちが触れ合ったときに起こったことは単なる偶発的なできごとなの?」
「そう願いたいね」
 ラーキンは顔を上げて彼を見た。ふたりの視線がぶつかると、てのひらのまんなかの熱がより強く感じられた。心臓が一回打つごとに体に熱が広がる。危険な好奇心がつのり、口に出すつもりはまったくなかった言葉がこぼれた。
「私にキスをするところだったのよね?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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