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アレジオ公国の花嫁 後編

アレジオ公国の花嫁 後編

著: ペニー・ジョーダン 翻訳: 春野ひろこ
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス シリーズ: アレジオ公国の花嫁
価格:630円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 イギリスの作家。ロマンス映画を見るよりも、ロマンス小説を読むのが好きだという。十一歳でイギリスのハーレクイン社のロマンス小説のなかのヒーローと“恋に落ち”、それ以来のロマンス小説ファン。結婚後もしばらく大手銀行で働いていたが、現在は執筆に専念。イングランド北西部チェシャーの古い館で四匹の犬、二匹の猫と一緒に暮らしている。

解説

 「結婚一周年だよ、ミセス・パレンティ」夫サウルのささやきに、ジゼルの胸は幸福感で満たされた。孤独を乗り越え、やっとつかんだ永遠の約束。だが、愛を確かめ合った直後、衝撃の一報がもたらされた。サウルのいとこであるアレジオ国の大公アルドが暗殺事件に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ったという。急いで駆けつけたサウルに跡を継ぐよう頼み、アルドは息を引き取る。子供は作らない。それがサウルとジゼルの婚前の取り決めだった。だが大公の座に就けば、世継ぎをもうけざるをえない。喪失感ととまどいの中で、夫婦の果てしない葛藤が始まった。
 ■連続刊行の『アレジオ公国の花嫁』二部作、後編をお届けします。ある事情から子供を持たないことに合意しているサウルとジゼル。とつぜん大公と妃となった二人の愛の揺らぎを描きます。

抄録

 部屋に帰ってきたサウルがまずしたのは、ジゼルをしっかりと抱きしめることだった。
 彼の体からは香のにおいが立ちのぼっていた。
 ジゼルが彼の顔を見つめると、サウルはむさぼるようなキスをした。ジゼルも夫の情熱にすぐさま応えた。
 アルドの死についてジゼルと語り合えるかどうか、サウルは自信がなかった。いとこの死はあまりに急で衝撃的だったため、両親を亡くしたときの絶望と怒りがよみがえった。それとともに大切な人を失ったときの自分の弱さも痛感した。サウルにとって唯一耐えられないのが、自分の精神的な弱さを突きつけられることだった。
 彼にとっては話すよりも行動するほうが簡単だった。ジゼルにそばにいてほしい、彼女に癒されたいという気持ちを体で表現するほうが。つまるところ、男は自分の弱さをさらけだすことができない。たとえ相手が心から愛する女性であっても。なぜなら、女性はみな、自分を守ってくれる強さを男に求めるものだから。
 二人はあたかも出会ったばかりの恋人同士のように、あるいは長く離れ離れになっていた恋人同士のように、お互いを求めた。サウルの求め方は欲望を抑え続けてきたあげく、自制がきかなくなった若者を思わせた。それはジゼルの欲望をかきたてると同時に彼女を奔放にし、二人の愛情以外はどうでもいいという気持ちにさせた。率直に同情の念を夫に伝えるには、安らぎを与えるには、愛の営みを通じて行うのがいちばんだ。サウルの触れ方からは野性味が、荒々しさと言ってもいい激しさが感じられる。ごつごつした手に胸のふくらみを包まれるなり、ジゼルは唇を重ねたまま喜びのうめき声をもらした。静けさは、二人の情熱的な声とはっと息をのむ音に破られた。
 決して優しく思いやりに満ちた愛の交歓ではなかった。動物的な衝動に駆られた男と、欲望をかきたてられて相手に応えようとする女の、情熱のぶつけ合いだった。ジゼルの胸をあらわにしたサウルが勝ち誇ったような叫び声をあげた瞬間、彼女はそう思った。
 つんととがった胸の頂を指でエロティックに刺激され、ジゼルの体はみだらな快感に打ち震えた。
 二人の欲望はいまや本能のレベルまで徹底的にむきだしにされ、沸騰寸前の危険きわまりない状態になっていた。
 すべてを焼きつくすような情熱に身をゆだねるには、女性はパートナーを完全に信頼しなければならない。そして、いまのジゼルはサウルを完全に信頼していた。
「もっとキスをして」自分が燃えさかる炎のただなかに入っていこうとしていることを、サウルのなすがままになろうとしていることを自覚しながら、ジゼルは切に願った。
 お互いの情熱の激しさは二人ともよく知っている。けれど、今日の営みには新たな要素が加わったようにジゼルには思えた。まるでいとこの死が、サウルの生への渇望、ジゼルへの渇望を改めて呼び覚ました気がしてならなかった。それほどに二人の営みには切迫感があり、サウルは彼女の体を隅々まであがめるように愛撫した。欲望を限界までかきたてられたジゼルはついに耐えられなくなり、この甘い責め苦を終わらせてくれるよう、彼女の中でうずいている空虚な部分を満たしてくれるよう、夫に懇願した。
 ほどなくジゼルは最初のクライマックスを迎えたが、サウルにさらに何度も深く貫かれ、これまで知らなかった新たな境地に足を踏み入れた。サウルにしがみつくと、ジゼルの体は彼の体に吸いこまれるように密着した。
 二人が手を携えてめくるめく世界へと運ばれたとき、サウルは心の底から絞りだしたような声をあげた。
 ジゼルを抱いたまま鼓動が平常どおりに落ち着くと、サウルは安堵が満ちてくるのを感じた。
 僕たちは生きている。僕とジゼルはともにいる。アルドの死によって生じた陰鬱なしこりがサウルの胸から取り除かれた。ジゼルと二人で高みにのぼりつめ、そこから飛び下りることによって、自信と強さを取り戻すことができたのだ。
 いまの二人の営みはサウルの魂を震わせた。とはいえ、自分がどう感じたかを話すことはできなかった。こんなにも愛しているジゼルに、夫は精神的にもろく、アルドを失ったショックに対処しきれないなどと思われたくないからだ。
 僕は強くあらねばならない。ジゼルと立てていた計画を焼きつくす葬送の炎の中から、二人の新たな未来をつくりだす必要がある。僕にはそれが可能だということをジゼルに証明しなければ。運命のいたずらで重荷を担わされても、僕には二人が思い描いていた人生にできるだけ近い人生を実現する力がある、と彼女に信頼してもらうために。同時に僕はアルドとの約束を果たす。そのためにはどうしたらいいかがわかるまで、自分が置かれた状況を彼女に話すのはやめておこう。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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