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薬指についた嘘
著: キャロル・マリネッリ 翻訳: 深山咲発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:630円(税込)
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著者プロフィール
キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。
イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。
解説
世界に冠たる高級ブランド〈ハウス・オブ・コロフスキー〉。社長のアレクセイはセクシーな魅力あふれる、女泣かせのプレイボーイだ。ケイトがそんなアレクセイの秘書に抜擢されたのは、ちょっと太めで冴えない彼女となら過ちを犯さずにすむからだった。だから五年ものあいだ、ケイトは彼への密かな想いを隠しつづけてきた。ところが、アレクセイが事故にあい療養中に、事態は一変する。会社の支配権を奪おうと動きだした冷血な母ニーナに対抗するため、アレクセイが役員たちを味方につけようと一計を案じたのだ。見せかけの婚約劇を演じ、彼の私生活にまつわる悪評を返上するという。そして相手役として彼が選んだのは、なんとケイトだった!
■ロシア系大富豪コロフスキー家の愛と煩悶を描いた『きらめきの一夜』と『罪な一夜』につづく物語。陰ながらボスを愛する秘書のせつない片思いは、一族の騒動のために踏みにじられて……。
■ロシア系大富豪コロフスキー家の愛と煩悶を描いた『きらめきの一夜』と『罪な一夜』につづく物語。陰ながらボスを愛する秘書のせつない片思いは、一族の騒動のために踏みにじられて……。
抄録
「ケイト……」アレクセイは腿を這いあがってくる彼女の手を押さえた。「そんなことをする必要は……」
「わかっているわ」そう答えたものの、ケイトは欲望にとらわれていた。ええ、これで状況は変わるわ。でも、私たちの関係はもう変わってしまっているのよ。
アレクセイをずっと自分のもとに引きとめておけないのはわかっている。でも、せめてしばらくの間だけ、彼を自分のものにしたい。
ケイトは温かい手をアレクセイの脚の間にすべりこませた。
「ケイト……」アレクセイは再び言った。その声は奇妙なくらい緊張していた。この痛みと罪悪感と恥辱は明日の朝も消えてはいないだろう。しかし今、ケイトの手が与えてくれる喜びがすべてを溶かし去った。なにも要求せず、ゆっくりとリズミカルに動く彼女の手はアレクセイを黙らせ、目を閉じさせた。
ケイトの触れ方は未熟で、アレクセイは思わず彼女の手を取り、巧みな愛撫の仕方を教えたくなった。それでも彼女の献身的な行為に身をゆだねるうちに、これ以上すばらしい愛撫はないと気づいた。
ケイトはアレクセイの高ぶりを手の中に包みこみ、二人だけの親密な世界で我を忘れた。
体の奥から激しい興奮がこみあげてきた。理屈より欲望に導かれ、ケイトは身をかがめてアレクセイの胸にキスをした。自分でもなにを期待しているのかわからなかった。もう十分だと彼が言うこと? やめろと警告すること? しかし、聞こえたのは荒くなった彼の息遣いだけだった。ケイトはキスを続けた。最初は慎重に、それから飢えたように。
アレクセイの胸から平らな腹部へ唇を這わせていき、手に触れる感触一つ一つ、舌に感じる感触一つ一つを心ゆくまで味わった。
ケイトの唇の動きはぎこちなくつたなかったが、そこに迷いはなかった。
その単純さがアレクセイに喜びをもたらした。彼は一瞬ベッドを下りてケイトに言いたくなった……いったいなにを?
結局、アレクセイは横たわったままでいた。
ケイトはアレクセイにキスをした。彼を感心させるためでも、喜ばせるためでもなく、ただ自分の欲望をなだめるために。彼の指が髪に巻きつけられると彼女はさらに大胆になり、キスを深め、彼を味わった。
アレクセイにとってそれは新たな発見だった。
なにもせず、そこに横たわっていることが。
自分の体をなぞる女性の唇のことだけを考えていることが。毎週予約を取っていても、彼にとってマッサージはただ耐えるだけのものにすぎない。
横たわりながら、いつも早くその時間が終わればいいと思っている。たくさんのチップを払い、最高の気分だったと言い、同じ気持ちでスーツを着こむ。
今回もそうだと、今までは思っていた。
だが、アレクセイは初めて、ただそこに横たわっていた。急ぎもせず、わざとらしいうめき声ももらさず、ゆったりした気持ちで。
それから腰を持ちあげた。
本当はそんなに早く終わりにしてほしくなかった。だからもう少し横たわったまま、その感覚以外なにも存在しない無の空間に入りこんでいた。
「ケイト」彼はあえぐように言うと、また腰を持ちあげ、うるんできた目をきつく閉じた。
この献身的な行為をやめてほしくなかったが、アレクセイの体がとうとうその至福の安らぎを打ち砕いた。彼はそんな場所に身を置いたことがなかった。平穏で、静かな、ケイトの舌と唇と息遣いしか存在しない場所に。
なんの要求もせず、互いの権利を主張し合うこともないそんな場所を、アレクセイは知らなかった。なじみのないその場所で、彼は目を開け、隣に横たわる寛大な女性を見た。今も心からベッドをともにしたいと思っている女性を。
アレクセイはケイトを引き寄せた。彼女の体の曲線と、からみ合う手足の感触が好ましかった。肌が、髪の香りが、自分の胸に触れる胸の重みが好ましかった。
この数カ月間、言いたいことをぴったり表せる言葉が頭に浮かぶことはまずなかった。それでもアレクセイはいつものように頭の中の辞書を検索した。検索のスピードはひどく遅く、出てくる答えはたいてい間違っていたが。
“安らか”
アレクセイはそれがどういうものか知らなかったし、そんな気持ちになったこともなかった。だが、異議を唱えて別の答えをさがそうとしても、その言葉は頭から消えなかった。やがてついに眠りが彼を侵し、支配した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「わかっているわ」そう答えたものの、ケイトは欲望にとらわれていた。ええ、これで状況は変わるわ。でも、私たちの関係はもう変わってしまっているのよ。
アレクセイをずっと自分のもとに引きとめておけないのはわかっている。でも、せめてしばらくの間だけ、彼を自分のものにしたい。
ケイトは温かい手をアレクセイの脚の間にすべりこませた。
「ケイト……」アレクセイは再び言った。その声は奇妙なくらい緊張していた。この痛みと罪悪感と恥辱は明日の朝も消えてはいないだろう。しかし今、ケイトの手が与えてくれる喜びがすべてを溶かし去った。なにも要求せず、ゆっくりとリズミカルに動く彼女の手はアレクセイを黙らせ、目を閉じさせた。
ケイトの触れ方は未熟で、アレクセイは思わず彼女の手を取り、巧みな愛撫の仕方を教えたくなった。それでも彼女の献身的な行為に身をゆだねるうちに、これ以上すばらしい愛撫はないと気づいた。
ケイトはアレクセイの高ぶりを手の中に包みこみ、二人だけの親密な世界で我を忘れた。
体の奥から激しい興奮がこみあげてきた。理屈より欲望に導かれ、ケイトは身をかがめてアレクセイの胸にキスをした。自分でもなにを期待しているのかわからなかった。もう十分だと彼が言うこと? やめろと警告すること? しかし、聞こえたのは荒くなった彼の息遣いだけだった。ケイトはキスを続けた。最初は慎重に、それから飢えたように。
アレクセイの胸から平らな腹部へ唇を這わせていき、手に触れる感触一つ一つ、舌に感じる感触一つ一つを心ゆくまで味わった。
ケイトの唇の動きはぎこちなくつたなかったが、そこに迷いはなかった。
その単純さがアレクセイに喜びをもたらした。彼は一瞬ベッドを下りてケイトに言いたくなった……いったいなにを?
結局、アレクセイは横たわったままでいた。
ケイトはアレクセイにキスをした。彼を感心させるためでも、喜ばせるためでもなく、ただ自分の欲望をなだめるために。彼の指が髪に巻きつけられると彼女はさらに大胆になり、キスを深め、彼を味わった。
アレクセイにとってそれは新たな発見だった。
なにもせず、そこに横たわっていることが。
自分の体をなぞる女性の唇のことだけを考えていることが。毎週予約を取っていても、彼にとってマッサージはただ耐えるだけのものにすぎない。
横たわりながら、いつも早くその時間が終わればいいと思っている。たくさんのチップを払い、最高の気分だったと言い、同じ気持ちでスーツを着こむ。
今回もそうだと、今までは思っていた。
だが、アレクセイは初めて、ただそこに横たわっていた。急ぎもせず、わざとらしいうめき声ももらさず、ゆったりした気持ちで。
それから腰を持ちあげた。
本当はそんなに早く終わりにしてほしくなかった。だからもう少し横たわったまま、その感覚以外なにも存在しない無の空間に入りこんでいた。
「ケイト」彼はあえぐように言うと、また腰を持ちあげ、うるんできた目をきつく閉じた。
この献身的な行為をやめてほしくなかったが、アレクセイの体がとうとうその至福の安らぎを打ち砕いた。彼はそんな場所に身を置いたことがなかった。平穏で、静かな、ケイトの舌と唇と息遣いしか存在しない場所に。
なんの要求もせず、互いの権利を主張し合うこともないそんな場所を、アレクセイは知らなかった。なじみのないその場所で、彼は目を開け、隣に横たわる寛大な女性を見た。今も心からベッドをともにしたいと思っている女性を。
アレクセイはケイトを引き寄せた。彼女の体の曲線と、からみ合う手足の感触が好ましかった。肌が、髪の香りが、自分の胸に触れる胸の重みが好ましかった。
この数カ月間、言いたいことをぴったり表せる言葉が頭に浮かぶことはまずなかった。それでもアレクセイはいつものように頭の中の辞書を検索した。検索のスピードはひどく遅く、出てくる答えはたいてい間違っていたが。
“安らか”
アレクセイはそれがどういうものか知らなかったし、そんな気持ちになったこともなかった。だが、異議を唱えて別の答えをさがそうとしても、その言葉は頭から消えなかった。やがてついに眠りが彼を侵し、支配した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
紙書籍初版: 2011/8/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>見せかけの恋人
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>オフィス/ボス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>シンデレラ
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