和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
著者プロフィール
ケイト・ウォーカー(Kate Walker)
イングランド中部ノッティンガムシャーの生まれだが、ブロンテ姉妹の生地ヨークシャーで育った。ウェールズの大学、大学院に学び、ブロンテ姉妹の研究で修士号を取得した。夫とは学生時代に知り合う。児童館の司書から出発し、息子の誕生を機に作家活動を開始した。刺繍や編み物が趣味。
イングランド中部ノッティンガムシャーの生まれだが、ブロンテ姉妹の生地ヨークシャーで育った。ウェールズの大学、大学院に学び、ブロンテ姉妹の研究で修士号を取得した。夫とは学生時代に知り合う。児童館の司書から出発し、息子の誕生を機に作家活動を開始した。刺繍や編み物が趣味。
解説
ギリシアで海運業を手がける夫のザレクが失踪して二年、ペニーは野心的な義母や義弟から経営権を譲るよう迫られていた。夫は船の試乗中に、海賊に頭を撃たれて海に沈んだと言われている。じつのところ、ペニーは夫を愛していたが、彼は妻を愛してはいなかった。結婚は後継ぎを作るためだと、彼の口からはっきりと聞かされたのだ。それでも、このままザレクの死を認めるのはあまりにつらく、ペニーはだれに明け渡すことなく夫の会社を守ってきた。だけど、もう潮時ね……。とうとう心を決めた彼女は経営陣を招集する。そして義弟に会社を譲ると宣言したそのとき、会議室の扉が開いた――見るとそこには、冷徹な瞳でペニーを見据えるザレクの姿があった。
抄録
「見張っていた?」ザレクが皮肉な口調で言った。「つまり、きみはぼくに隠さないといけないことがあるという意味だな」
こんなことをしてはいけない、とペニーは自分に言い聞かせた。こんなくだらない話をしていてはいけない。ザレクがどこに行っていたのか、何が起こったのかを尋ねないといけない。どうしてこんなひどい傷ができたのか、何があったのか知りたかった。それなのに舌が動かなくなり、喉から言葉が出てこなかった。代わりに彼を刺激し、攻撃的な言葉が口をついて出た。
もっと前に島に帰っていたのに、生きていると知らせてくれなかったのだと思うと、怒りを覚えた。ペニーを見張り、ザレクを裏切るまで待っていたのだと思うと、傷口にナイフをねじこまれるようだった。彼が生きて元気だと知ったら、きっと大喜びするだろうと確信したことがあった。そしてもう一度やりなおすチャンスだと考えてもいいとさえ思った。
ところがこれだ……。
これ以上どんな証拠が必要だろう? 彼に何が起こったにせよ、結婚生活に対する気持ちはまったく変わっていなかったのだ。いまだにペニーのことを信用できない人間として、疑いの目で見ている。彼が愛し、恋しかった女性としてではない。だがもちろん、最初からわかっていたことだ。
「ぼくがいないあいだに何が起こっていたか、ぼくに知る権利があるとは思わないのか?」
「わたしに会いたくなかったの? わたしに尋ねてくれたらいいのに」
また暗く燃えるまなざしが尋ねる必要はないと言っている。彼の頭の中では、すでにペニーを裁き、有罪だと決めつけているのだ。
「“ここから離れ、生活をやりなおしたい”」ザレクはペニーの言葉を皮肉な口調で引き合いに出した。彼はイアソンとの会話をすべて聞いていたのだ。「“無益な時間を過ごすのはうんざりだわ”」
「人の話を盗み聞きするものではないわ」ペニーは言い返した。彼がどう解釈したか知り、吐き気がしそうだった。「盗み聞きする者はけっして自分のいい噂は聞かないという格言をご存じ?」
「妻が夫の失踪宣告をしようとしていると聞く者はあまりいないだろうな」
「あなたは死んでいたのよ! 少なくとも、わたしは――わたしたちはそう思っていた」
「それがきみにとって都合がよかったからだ」
ザレクは話しながら、ペニーの手をさらに強く握りしめた。だがペニーを驚かせたのは痛いほどの彼の力ではなく、腕に電流が走ったことだった。その早い反応にわれながらぞっとした。彼の心は冷えきっているとわかっているのに、どうしてこれほど影響を受けるのだろう?
「やめて」ペニーは手に力を入れ、できるだけザレクから離れようとした。
彼から離れ、静かなところで考えをまとめ、これからどうするか決めないといけない。
「放して!」
もしザレクにもっと強くつかまれ、近くに引き寄せられたら、自分がどうするかわからなかった。あいまいな気持ちが竜巻のように渦を巻き、考えることもできない。
「放してと言っているでしょう!」
あまりにも早く彼がペニーの手を放したので、彼女はさらにショックを受けた。けれどもまたザレクが近づいてくるのが怖くて、ふらつきながら離れ、近くの椅子をつかんで体を支えた。
「近づかないで! 近くに来ないで!」
ああ、嘘つきね、心の中でペニーは自分を責めた。何よりもザレクの腕に抱きしめてほしかった。体を寄せ合い、慰め、温め、心の真ん中で硬く凍りついた芯を溶かしてほしかった。
だがザレクは広い胸の前で腕を組み、よく磨かれた鋼鉄のような目で冷ややかにペニーを見ているだけだった。
「そうだろうとも」ザレクは苦々しげに言った。「きみはぼくに戻ってきてほしくなかったのだからな」
それはペニーが言ったことだった。出ていくなら、戻ってきたときにわたしが待っていると思わないで、と。あのときは苦痛のあまり言ってしまった。ザレクはペニーのことを、喜んで彼のベッドを温める体、彼の子どもを産むための繁殖用の雌馬としてしか見ていなかった。彼を愛していると気づかれるより、死んだほうがましだ。けれども、乱暴で無分別な言葉を投げ返されると、胸が痛んだ。
「そんな話を持ち出すのね、死からよみがえってきたと思ったら。わたしには時間が必要なの」ペニーはなんとかザレクの気持ちをなだめようとしたが、冷たく燃える目で見つめられていては、どうしようもない。胸の前で組まれたたくましい腕は、ペニーが何を求めようと跳ね返そうとする堅固な盾のようだった。
「では時間をかけるといい」
「なんですって?」
闘うために防御を固めたのに、ザレクが思いがけず降参したので、まるで風船がしぼむように力が抜けていった。
「時間をかけろ」
*この続きは製品版でお楽しみください。
こんなことをしてはいけない、とペニーは自分に言い聞かせた。こんなくだらない話をしていてはいけない。ザレクがどこに行っていたのか、何が起こったのかを尋ねないといけない。どうしてこんなひどい傷ができたのか、何があったのか知りたかった。それなのに舌が動かなくなり、喉から言葉が出てこなかった。代わりに彼を刺激し、攻撃的な言葉が口をついて出た。
もっと前に島に帰っていたのに、生きていると知らせてくれなかったのだと思うと、怒りを覚えた。ペニーを見張り、ザレクを裏切るまで待っていたのだと思うと、傷口にナイフをねじこまれるようだった。彼が生きて元気だと知ったら、きっと大喜びするだろうと確信したことがあった。そしてもう一度やりなおすチャンスだと考えてもいいとさえ思った。
ところがこれだ……。
これ以上どんな証拠が必要だろう? 彼に何が起こったにせよ、結婚生活に対する気持ちはまったく変わっていなかったのだ。いまだにペニーのことを信用できない人間として、疑いの目で見ている。彼が愛し、恋しかった女性としてではない。だがもちろん、最初からわかっていたことだ。
「ぼくがいないあいだに何が起こっていたか、ぼくに知る権利があるとは思わないのか?」
「わたしに会いたくなかったの? わたしに尋ねてくれたらいいのに」
また暗く燃えるまなざしが尋ねる必要はないと言っている。彼の頭の中では、すでにペニーを裁き、有罪だと決めつけているのだ。
「“ここから離れ、生活をやりなおしたい”」ザレクはペニーの言葉を皮肉な口調で引き合いに出した。彼はイアソンとの会話をすべて聞いていたのだ。「“無益な時間を過ごすのはうんざりだわ”」
「人の話を盗み聞きするものではないわ」ペニーは言い返した。彼がどう解釈したか知り、吐き気がしそうだった。「盗み聞きする者はけっして自分のいい噂は聞かないという格言をご存じ?」
「妻が夫の失踪宣告をしようとしていると聞く者はあまりいないだろうな」
「あなたは死んでいたのよ! 少なくとも、わたしは――わたしたちはそう思っていた」
「それがきみにとって都合がよかったからだ」
ザレクは話しながら、ペニーの手をさらに強く握りしめた。だがペニーを驚かせたのは痛いほどの彼の力ではなく、腕に電流が走ったことだった。その早い反応にわれながらぞっとした。彼の心は冷えきっているとわかっているのに、どうしてこれほど影響を受けるのだろう?
「やめて」ペニーは手に力を入れ、できるだけザレクから離れようとした。
彼から離れ、静かなところで考えをまとめ、これからどうするか決めないといけない。
「放して!」
もしザレクにもっと強くつかまれ、近くに引き寄せられたら、自分がどうするかわからなかった。あいまいな気持ちが竜巻のように渦を巻き、考えることもできない。
「放してと言っているでしょう!」
あまりにも早く彼がペニーの手を放したので、彼女はさらにショックを受けた。けれどもまたザレクが近づいてくるのが怖くて、ふらつきながら離れ、近くの椅子をつかんで体を支えた。
「近づかないで! 近くに来ないで!」
ああ、嘘つきね、心の中でペニーは自分を責めた。何よりもザレクの腕に抱きしめてほしかった。体を寄せ合い、慰め、温め、心の真ん中で硬く凍りついた芯を溶かしてほしかった。
だがザレクは広い胸の前で腕を組み、よく磨かれた鋼鉄のような目で冷ややかにペニーを見ているだけだった。
「そうだろうとも」ザレクは苦々しげに言った。「きみはぼくに戻ってきてほしくなかったのだからな」
それはペニーが言ったことだった。出ていくなら、戻ってきたときにわたしが待っていると思わないで、と。あのときは苦痛のあまり言ってしまった。ザレクはペニーのことを、喜んで彼のベッドを温める体、彼の子どもを産むための繁殖用の雌馬としてしか見ていなかった。彼を愛していると気づかれるより、死んだほうがましだ。けれども、乱暴で無分別な言葉を投げ返されると、胸が痛んだ。
「そんな話を持ち出すのね、死からよみがえってきたと思ったら。わたしには時間が必要なの」ペニーはなんとかザレクの気持ちをなだめようとしたが、冷たく燃える目で見つめられていては、どうしようもない。胸の前で組まれたたくましい腕は、ペニーが何を求めようと跳ね返そうとする堅固な盾のようだった。
「では時間をかけるといい」
「なんですって?」
闘うために防御を固めたのに、ザレクが思いがけず降参したので、まるで風船がしぼむように力が抜けていった。
「時間をかけろ」
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
紙書籍初版: 2011/8/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛の復活/運命の再会
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛なき結婚
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ラテン
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
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小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ラテン
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