和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>シルエット・スペシャル・エディション
今日からは特別な人
著: ジーナ・ウィルキンズ 翻訳: 藤田由美発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディション
価格:630円(税込)
10ポイント還元
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著者プロフィール
ジーナ・ウィルキンズ(Gina Wilkins)
アメリカ南部は物語の舞台にふさわしい、魅力にあふれた土地だと語り、根っからの南部人を自負している。南部、とくにアーカンソー州北部とミズーリ州南部にまたがるオザーク山地の一帯を舞台にし、そこに住む誇り高い人々を描いた作品を数多く書く。長くシルエット・シリーズで活躍しており、ジーナ・フェリス、ジーナ・フェリス・ウィルキンズというペンネームも使っていた。現在は夫と三人の子供とともに、アーカンソー州に住んでいる。
アメリカ南部は物語の舞台にふさわしい、魅力にあふれた土地だと語り、根っからの南部人を自負している。南部、とくにアーカンソー州北部とミズーリ州南部にまたがるオザーク山地の一帯を舞台にし、そこに住む誇り高い人々を描いた作品を数多く書く。長くシルエット・シリーズで活躍しており、ジーナ・フェリス、ジーナ・フェリス・ウィルキンズというペンネームも使っていた。現在は夫と三人の子供とともに、アーカンソー州に住んでいる。
解説
ダラスに引っ越す途中で事故に遭ったケリーは、つらいリハビリを経て回復し、修士号をめざし勉強に励んでいる。心の支えは、入院中に知りあったシェーン・ウォーカーと、姉のように慕ってきたブリン・ラーキン・ダレッサンドロだ。うれしいことに、シェーンとブリンはいとこ同士と判明。ふたりにつながる大家族の輪にケリーも加わるようになった。出会いから一年半、ケリーとシェーンは親友のように楽しみをわかちあい、ときにはふれあってきた。ある夜、シェーンは実母の訃報をケリーに明かし、アル中で一緒に暮らすことのできなかった母への思いを話した。なぐさめようと彼を抱きしめたケリーの中に、突然、熱い炎が燃えあがる。もう親友には戻れないの? ケリーは怖くなった。友達を失うなんて、耐えられない。
抄録
ケリーは笑みを浮かべたまま、バッグとカーラにもらった容器を左の小脇に抱え、実用一辺倒の小さな愛車をロックした。そのとき肩をつかまれて息がとまりそうになり、抱えていたものをあやうくすべて落とすところだった。
「ごめん。驚かせてしまった?」
ケリーは右手で早鐘のように打つ胸を押さえてシェーンを見あげた。「驚いたなんてものじゃないわ。心臓が飛びだしそうになっちゃったわよ。こんなところでなにしているの?」
シェーンはすまなそうにほほえんだ。「ビデオデッキを持ってきたんだ。どこが故障しているのかわかった。ちゃんと直せたと思うよ」
「それでわざわざ来てくれたの? 木曜日の感謝祭に、あなたの牧場に集まったときでよかったのよ」
シェーンは肩をすくめた。「町に用があったから、ついでに渡そうと思ったんだ。今朝送水ポンプが壊れてしまって、部品を買わなきゃならなくてね」
ケリーは鼓動が正常に戻るまで、弱々しくほほえんでいた。「心臓の調子がもとに戻ったわ。なかに入らない?」
シェーンはケリーの肩をいたわるように抱いてから手を離した。「トラックからビデオデッキを持ってくる」
シェーンは片手でビデオデッキを抱えてアパートメントに入った。そして、小型テレビの横の棚に置いた。「一分もあれば、配線はできる」
「本当にありがとう」
「いいんだよ」シェーンはコードをつなぎはじめた。
「お礼をしたいんだけど。おなかはすいていない? 夕食をごちそうしたいわ」
シェーンは肩越しに物憂げな笑みを返した。「ぼくはいつでも腹ぺこさ。ごちそうになるよ」
えくぼのできるシェーンの笑みを見るたびに、ケリーはなぜか心が乱れた。だが、この一年のあいだに、自分の思いがけない反応を上手に隠し、彼と同じようにさりげなく答えることができるようになっていた。「なにかつくるわ。楽にしていて」
ケリーは迷うことなくなにをつくるか決めた。がらんとしたキッチンには限られた材料しかないし、シェーンの好物はパスタだと知っている。彼は三度の食事がパスタでもいいくらいで、食後のデザートに甘いものがあればなお喜んだ。
ケリーは食品庫から全粒小麦粉のパスタの袋をとりだした。シェーンに喜んでもらえる料理がすぐに頭に浮かぶ。隣の部屋にいる彼の動きを感じながら料理をしていたら、いつのまにかそっとハミングをしていた。
三十分後、ふたりはテーブルに着き、フランスパンを盛ったバスケットと、バジル、ガーリック、オリーブオイルでつくったソースをかけたパスタの皿を前にしていた。ちょうど冷凍庫にアップルパイがあったので、オーブンで焼いているところだ。キッチンから漂ってくるおいしそうなりんごとシナモンの香りに引かれるように、シェーンが目を輝かせてときどきそちらに視線を投げかけることにケリーは気づいていた。
食事中、シェーンもよく知っているダレッサンドロ家のパーティーの様子や友達のこと、牧場のこと、ケリーの授業のこと、地元の映画館で公開されている映画、政治情勢などについて話した。
ケリーにとってシェーンは話しやすい相手だ。子供のころ兄がほしいと夢見ていた彼女は、この一年半のあいだ、シェーンをきょうだいかいちばん気の合ういとことだと思うようにつとめてきた。だが、どうしてもうまくいかない。
デザートはテレビの前で食べた。ビデオデッキがちゃんと動くか確かめるためだと言って、シェーンがビデオを持ってきたのだ。ケリーの趣味ではない、アクションシーン満載で男の友情が色濃く描かれた映画だったが、シェーンにしきりに勧められて見ることにした。終盤で予想に反してふたり組のヒーローのひとりが壮絶な死を遂げると彼女ははなをすすりはじめ、生き残ったヒーローと恋人が幸せをつかむ結末まで見つづけた。
映画が終わるとシェーンはテープを巻き戻し、ケリーを見てくすくす笑った。「泣いちゃったのか」
ケリーはあわてて手で顔をおおった。「泣いてなんかいないわ」
シェーンは笑いながら片腕をケリーの肩にまわし、もう片方の手で涙をぬぐってからかった。「ただの映画なんだよ。本当に死んだわけじゃないんだ」
「そんなこと、わかっているわ」ケリーはシェーンに抱かれていることを意識しながらも、できるだけ毅然として答えた。しかし涙はまだにじんでいた。「ちょっと感動しただけよ」
シェーンは指先でケリーの涙のあとをなぞった。「涙もろいって言われたことはないかい?」
ケリーは、恥ずかしくなるほど涙もろかった。悲しい映画や哀愁漂うラブソング、心の込められたグリーティングカードに弱い。感傷的なテレビコマーシャルですら泣いてしまうことがある。悔しいが、白状しよう。「あるわ。一回や二回じゃないの」
「きみのそんなところもすごく好きだよ」シェーンは顔を傾けてケリーの頬にキスした。ところが、唇はそのまま彼女の唇のほうへとずれていった。
ケリーは目を見開き、胸の奥に息が引っかかってしまったかのように感じた。シェーンはわずかに唇を離し、びっくりしたまなざしでケリーと目を合わせている。次の瞬間、彼は唇を重ねてきて、ふたりは今までしたこともないようなキスをしていた。
それは、家族やきょうだい、いとこのあいだで交わされるようなものではなく、男性が好きになった女性にするようなキスだった。
ケリーははじめ歓びそのものを感じていた。シェーンの肩にためらいがちに手を置き、われを忘れそうになっていた。すてきなキス……。
ところが、ふいにひどいパニックに陥った。シェーンはいったいなにをしているの?
*この続きは製品版でお楽しみください。
「ごめん。驚かせてしまった?」
ケリーは右手で早鐘のように打つ胸を押さえてシェーンを見あげた。「驚いたなんてものじゃないわ。心臓が飛びだしそうになっちゃったわよ。こんなところでなにしているの?」
シェーンはすまなそうにほほえんだ。「ビデオデッキを持ってきたんだ。どこが故障しているのかわかった。ちゃんと直せたと思うよ」
「それでわざわざ来てくれたの? 木曜日の感謝祭に、あなたの牧場に集まったときでよかったのよ」
シェーンは肩をすくめた。「町に用があったから、ついでに渡そうと思ったんだ。今朝送水ポンプが壊れてしまって、部品を買わなきゃならなくてね」
ケリーは鼓動が正常に戻るまで、弱々しくほほえんでいた。「心臓の調子がもとに戻ったわ。なかに入らない?」
シェーンはケリーの肩をいたわるように抱いてから手を離した。「トラックからビデオデッキを持ってくる」
シェーンは片手でビデオデッキを抱えてアパートメントに入った。そして、小型テレビの横の棚に置いた。「一分もあれば、配線はできる」
「本当にありがとう」
「いいんだよ」シェーンはコードをつなぎはじめた。
「お礼をしたいんだけど。おなかはすいていない? 夕食をごちそうしたいわ」
シェーンは肩越しに物憂げな笑みを返した。「ぼくはいつでも腹ぺこさ。ごちそうになるよ」
えくぼのできるシェーンの笑みを見るたびに、ケリーはなぜか心が乱れた。だが、この一年のあいだに、自分の思いがけない反応を上手に隠し、彼と同じようにさりげなく答えることができるようになっていた。「なにかつくるわ。楽にしていて」
ケリーは迷うことなくなにをつくるか決めた。がらんとしたキッチンには限られた材料しかないし、シェーンの好物はパスタだと知っている。彼は三度の食事がパスタでもいいくらいで、食後のデザートに甘いものがあればなお喜んだ。
ケリーは食品庫から全粒小麦粉のパスタの袋をとりだした。シェーンに喜んでもらえる料理がすぐに頭に浮かぶ。隣の部屋にいる彼の動きを感じながら料理をしていたら、いつのまにかそっとハミングをしていた。
三十分後、ふたりはテーブルに着き、フランスパンを盛ったバスケットと、バジル、ガーリック、オリーブオイルでつくったソースをかけたパスタの皿を前にしていた。ちょうど冷凍庫にアップルパイがあったので、オーブンで焼いているところだ。キッチンから漂ってくるおいしそうなりんごとシナモンの香りに引かれるように、シェーンが目を輝かせてときどきそちらに視線を投げかけることにケリーは気づいていた。
食事中、シェーンもよく知っているダレッサンドロ家のパーティーの様子や友達のこと、牧場のこと、ケリーの授業のこと、地元の映画館で公開されている映画、政治情勢などについて話した。
ケリーにとってシェーンは話しやすい相手だ。子供のころ兄がほしいと夢見ていた彼女は、この一年半のあいだ、シェーンをきょうだいかいちばん気の合ういとことだと思うようにつとめてきた。だが、どうしてもうまくいかない。
デザートはテレビの前で食べた。ビデオデッキがちゃんと動くか確かめるためだと言って、シェーンがビデオを持ってきたのだ。ケリーの趣味ではない、アクションシーン満載で男の友情が色濃く描かれた映画だったが、シェーンにしきりに勧められて見ることにした。終盤で予想に反してふたり組のヒーローのひとりが壮絶な死を遂げると彼女ははなをすすりはじめ、生き残ったヒーローと恋人が幸せをつかむ結末まで見つづけた。
映画が終わるとシェーンはテープを巻き戻し、ケリーを見てくすくす笑った。「泣いちゃったのか」
ケリーはあわてて手で顔をおおった。「泣いてなんかいないわ」
シェーンは笑いながら片腕をケリーの肩にまわし、もう片方の手で涙をぬぐってからかった。「ただの映画なんだよ。本当に死んだわけじゃないんだ」
「そんなこと、わかっているわ」ケリーはシェーンに抱かれていることを意識しながらも、できるだけ毅然として答えた。しかし涙はまだにじんでいた。「ちょっと感動しただけよ」
シェーンは指先でケリーの涙のあとをなぞった。「涙もろいって言われたことはないかい?」
ケリーは、恥ずかしくなるほど涙もろかった。悲しい映画や哀愁漂うラブソング、心の込められたグリーティングカードに弱い。感傷的なテレビコマーシャルですら泣いてしまうことがある。悔しいが、白状しよう。「あるわ。一回や二回じゃないの」
「きみのそんなところもすごく好きだよ」シェーンは顔を傾けてケリーの頬にキスした。ところが、唇はそのまま彼女の唇のほうへとずれていった。
ケリーは目を見開き、胸の奥に息が引っかかってしまったかのように感じた。シェーンはわずかに唇を離し、びっくりしたまなざしでケリーと目を合わせている。次の瞬間、彼は唇を重ねてきて、ふたりは今までしたこともないようなキスをしていた。
それは、家族やきょうだい、いとこのあいだで交わされるようなものではなく、男性が好きになった女性にするようなキスだった。
ケリーははじめ歓びそのものを感じていた。シェーンの肩にためらいがちに手を置き、われを忘れそうになっていた。すてきなキス……。
ところが、ふいにひどいパニックに陥った。シェーンはいったいなにをしているの?
*この続きは製品版でお楽しみください。
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