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鷹の公爵とシンデレラ

鷹の公爵とシンデレラ

著: キャロル・モーティマー 翻訳: 古沢絵里
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:735円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 キャロル・モーティマー(Carole Mortimer)
 ハーレクイン・シリーズでもっとも愛され、人気のある作家の一人。1978年にイギリスでデビューして以来、これまでに刊行された作品は実に百冊を超える。十四歳のころからロマンス小説に傾倒し、アン・メイザーの作品に感銘を受けて作家になることを決意した。キャロルは三人兄妹の末っ子としてイギリスはベッドフォードシャー州の小村で育った。一時は看護師を志したが、転倒した際に痛めた背中が治りきらず断念。その後、某有名文房具メーカーのコンピューター部門に勤め、そこで働く間に時間を見つけて小説を書くようになった。物語を書くときに一番楽しいのは、ヒロインとヒーローの性格を考えるとき。書いているうちに徐々に主導権がヒロインとヒーローに移り、いつのまにか彼らが物語を語りはじめるのだという。現在キャロルは“イギリスで最も美しい場所”マン島に、夫と子供たちと住む。

解説

 幼いころに親を亡くしたジェーンは、後見人の母娘に疎まれ、使用人同然の生活を送ってきた。みじめな将来を思って悲嘆に暮れていたとき、屋敷に公爵を招いてハウスパーティーが開かれることになる。現れたスタワーブリッジ公爵はこのうえなく優雅で、ジェーンは遠くから眺めるだけで満足をおぼえるが、なぜか公爵は彼女に興味を示してきた。それが後見人の不興を招き、ジェーンは屋敷を追われてしまう。頼る人もいないのに、どうやって生きていけばいいの……? 困り果てた彼女は、ある計画を胸に秘めて公爵を訪ねた。
 ■華麗なるセントクレア家の4兄妹の恋を描く第1話は、堅物の長男ホークの傲慢な恋模様。10/20刊のハーレクイン・ロマンスでは、現代の同一族の物語を3カ月連続刊行でお届けします。

抄録

「では、どうぞいらしてください、閣下」ジェーンは反抗的に頭をもたげ、堂々と相手と向かいあった。「マーカム・パークにご滞在中は、もう二度とご迷惑をおかけしないよう気をつけますから!」
「ジェーン、何か誤解しているようだが――」
「そんなことはないと思いますけど、閣下」
「ジェーン、そうやってばかにした口調で閣下、閣下と連呼するのはやめてもらいたい」
「お断りします!」すでに理性も用心もどこかに吹き飛び、ジェーンはただ、自分が傷ついたのと同じくらい相手を傷つけることだけを望んでいた。
「ジェーン、いいかげんにしないと火傷するぞ」公爵が脇に垂らした両手をきつく握りしめ、荒々しい口調で警告する。
「火傷ですって、閣下?」ジェーンは嘲りをこめて問い返した。もううんざりだ。この十二年間、ずっとおとなしく従順にふるまい、自分の考えや意思を持つことはいっさい許されなかった。「火について何をご存じなんですか? 冷たくて尊大で、すべての人間を見くだしているあなたが。何をするんです、閣下?」公爵に腕をつかまれ、強引に引き寄せられながら、ジェーンは驚きの声をあげた。
「ホークだよ、ジェーン」公爵の顔がわずか数センチ先に迫り、あたたかい息が頬をくすぐった。尊大さを感じさせる顔は月光のなか、獲物を狙う猛禽のような厳しい表情をたたえている。「わたしの名前はホークだ」公爵が荒々しい口調で説明した。
 ジェーンは尋ねるように相手を見上げた。
 鷹?
 スタワーブリッジ公爵は猛禽と同じ名前をつけられたの?
 危険な捕食者と同じ名前を。今日の午後、この人を猛禽になぞらえたことをぼんやりと思いだしながら、ジェーンは呪縛されたように公爵を見上げていた。
「母の気まぐれでね」むっつりした口調で言うと、公爵はジェーンの体をやすやすと引き寄せ、自分のがっしりしたたくましい体に密着させた。
 公爵がそんな変わった名前を持つことになったいきさつは、いまのジェーンにはどうでもいいことだった。どうでもよくないのは、あの尊大で超然と構えているスタワーブリッジ公爵がジェーンをきつく抱きすくめ、そのやわらかな体の曲線を自分のがっしりした体の線に添わせたまま、食いいるようにジェーンの唇を見つめているという事実だけだ。
 そして雲の上の存在である大貴族スタワーブリッジ公爵は、どう見てもジェーンにキスしようとしているとしか思えない!
 あり得ないわ。
 いくらなんでも、そんなこと……。
 そんな思いとはうらはらに、ジェーンの頭にはその場面が浮かびあがっていた。すでに自分の唇をふさぎ、むさぼり、味わいつくす、公爵の形のいい唇の弾力に満ちた感触さえ感じられる気がする。なぜならスタワーブリッジ公爵の熾烈な光をたたえた瞳は、公爵がいつもは細心の注意を払って周囲に隠している情熱が――公爵にキスされた女ならだれでも余すところなく知ることになるはずの猛々しい情熱が、ありありと浮かんでいるのだから。ぴったりと押しつけられた公爵の体から、張りつめた硬さが伝わってくるのと同じくらいはっきりと……。
「きみは一人でこんなところに来てはいけなかったんだ、ジェーン」強烈な光を放つ金色の瞳が、探るように、むさぼるようにジェーンの顔を這いまわった。「きみはしてはならないことをしたんだ、ジェーン!」公爵の顔がゆっくりと近づいてくる。
 長く感じられる数秒間、ジェーンは縛られたように動くことができなかった。近づいてくる唇を迎えようと、本能的に唇が開く。
 キス。
 ただ一度のキス。
 生まれてはじめてのキス。
 いいわよね、それくらいのことは。十二年ものあいだ、他者との触れあいがもたらすぬくもりをいっさい与えられずに生きてきたのだから。
 だが心のもっと奥深くにある本能が、さかしげにささやいた。ホーク・セントクレアが――強引な権力者のスタワーブリッジ公爵が、キス一つで引きさがるはずはない。年齢を重ね、多くの経験を積んでいる公爵は、はるかに多くを求めずにいられないだろう。この人は何度でも飽くことなく奪い、その一方で、自分からは何一つ与えない種類の人間だ。
「やめて!」ジェーンはキスを避けようとして顔をそむけ、公爵の胸に手を突っぱって、鋼の輪のような腕のなかから逃れようともがいた。そしてその結果、かえって前よりもぴったりと相手の体を押しつけることになってしまった。「やめてください!」なおも公爵を捕らえていることが明らかな欲望に不安をそそられ、ふたたび抗議の声をあげる。「いけません! お願い、ホーク、やめて……」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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