マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

寄り道の恋

寄り道の恋

著: リズ・フィールディング 翻訳: 上村悦子
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:525円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 リズ・フィールディング(Liz Fielding)
 イングランド南部バークシャー生まれ。二十歳のときアフリカに渡り、秘書の仕事に就いた。土木技師と結婚し、その後十年間をアフリカと中東で暮らす。夫は激務で、彼の帰宅を待つ長い時間、ものを書いて過ごすうち作家の道に。現在はウェールズに住んでいる。夫とのあいだに二人の子供がある。

解説

 ロンドン一の秘書派遣会社を経営するアマンダ・ガーランド。事業は順調、何不自由ない生活を送っている彼女だが、三十歳を目前に、突然子供が欲しくなった。欲しいものを手に入れるには? 計画を練り、実行し、目的を達成する。彼女の十八番だ。育児書と栄養剤の購入を部下に頼み、クリニックを予約……。そんなおり、仕事で使ったハイヤーの運転手に、一目で心を奪われた。青灰色の瞳と印象的な笑顔の、ダニエル・レッドフォードに。彼は子供の父親として完璧だ! アマンダを秘書だと勘違いした彼は、彼女の噂話を始める。正体を明かして、彼が驚くのを楽しみにしていたはずなのに、気がつくと別の名前を名乗っていた。そして彼の車の中に、再会を期して、そっとイヤリングの片方を落とした。

抄録

 これも自業自得だ、とダニエルは思った。実際、ふたりとも時間給で人に雇われているという点で違いはない。「この仕事をしていると、ときどき面白い人に会えるからね」それは本当だ。
「私もそうよ」
 その声には何かがあった。みぞおちに巻きついて、温かな子犬のようにぬくぬくとそこに落ち着く、柔らかい何かが。ダニエルはまたミラーを見ずにいられなかった。しかし彼がそこに見たのは唇だけだった。ふっくらして、つやつやして、キスをそそる唇。キスだって? だんだんエスカレートしてきたぞ。ダニエルはミラーの角度を変え、サングラスをかけてから、前の車に全神経を集中しようと決めた。しかし口は勝手に動いてしまう。「ときには名前も教えてもらえるしね」彼は促すように言った。
「あらそう?」アマンダはいつになったら名前をきかれるのかと思っていたし、名乗るのを楽しみにしていた。私はがみがみ女のアマンダ・ガーランドよ、はじめまして、と告げて、相手がぎょっとするのを見てみたかった。しかし気づいたときにはこう言っていた。「私はマンディ・フレミングよ」
 それは事実だ。子供のころは父にマンディと呼ばれていたし、今も兄にはそう呼ばれている。それにガーランドは単に会社の名前だ。がみがみ女の名前。
「それはがみがみ女の名前じゃないのかい?」
 ダニエルの言葉が頭の中の言葉と共鳴し、あざけっているように聞こえた。やはり知っていたんだわ……こうなったら笑い物になるのはどちらかしら?
「それは君の上司の名前じゃないのかい?」ダニエルがもう一度きいた。「アマンダ・ガーランドの。マンディはアマンダの愛称だろう?」
 アマンダは止めていた息を吐いた。長く止めすぎたらしく、息切れがする。「会社ではみんなあの人をミス・ガーランドとしか呼ばないわ」それは事実だ。例外はベスだけだが、ベスとは最初から一緒に働いてきた仲だ。ベスはアマンダが雇った最初の秘書で、一週間後には事務所を切りまわしていた。
「絶対にマンディとは呼ばないわけか?」
 ダニエルはサングラスをかけているので、アマンダには彼の目は見えない。「オフィスではね」
 ダニエルはそれ以上話すのをやめ、ロンドンの都心を脱出することに全神経を集中した。一瞬アマンダは、混雑した道路で大きな車を器用に走らせる彼の手に見とれたが、そのうちはっと気づいて目をそむけ、コンピュータを開いて電源を入れ、メモを取りはじめた。しかしいつものようには集中できなかった。フィットネスクラブで運動するときをのぞけば、心臓の鼓動が速まるのは本当に久々のことで、それがどんな気持ちか忘れかけていたほどだ。
 窓の外を見ると、車はチズィックの立体交差の高架道を走っていた。まわりは灰色のオフィスビルばかりで、見るものは何もない。アマンダは抵抗するのをやめ、ダニエル・レッドフォードのうなじを見つめた。彼は帽子も制服も着けていない。彼が働いているハイヤー会社では、運転手たちに仕立てのよいダブルのグレーのスーツと白いシャツと会社のロゴ入りのワインレッドのネクタイを着用させるようだ。おしゃれで控えめな服。うちのベビーシッターに何を着せるかを考えなければ、とアマンダは思った。ダニエルの大きな体はスーツにしっくり収まっている。明るい茶色の髪は短すぎず長すぎず、見事にカットされてなめらかに首まで続き、日に輝いている。横顔もいい。たくましい顎の線と険しい頬骨。それに今は見えないが、彼の鼻は人生をがむしゃらに生きてきたような印象があった。美しくはないけれど強い鼻。大きな手もそうだ。先の角張った長い指、きちんと切った爪。その手は軽くハンドルを握っている。しかし彼はまわりのものを完璧にコントロールできる人だ。手に触れるものすべてを……。
「カピトルカー社に入って長いの?」よからぬ空想から気をそらそうとして、アマンダはきいた。
「二十年さ」
「本当に?」ダニエルの頬が動いた。きっと微笑しているのだろう。ミラーの角度が変わったので口は見えないが、先刻、車のドアを開けたとき、あの口の片側がけだるげに上がり、頬に魔法のようにしわが現れたのは覚えている。この人は女殺し。そうに違いない。それに絶対、結婚している。彼のような人は必ずそうだ。忘れなさい、アマンダ、計画からそれてはだめよ。「じゃ、このお仕事が好きなのね」
「だと思うよ」ダニエルがちらりとミラーを見るのが見えた。私を見ているの? それとも後ろの車? サングラスで目が隠れているのでよくわからない。「それにチップもいいしね。この前は劇場のチケットをペアでもらったよ」彼は数週間前に開幕して絶賛を浴びているミュージカルの名を挙げた。
「すごいチップね。あのチケットはなかなか手に入らないそうよ」誘われたがっているように聞こえたかもしれない。実際、誘われたかったりして……。「で、どうだったの?」アマンダは急いできいた。
「まだわからないよ」
「お芝居は嫌い?」あるいは妻が嫌いなのかもしれない。彼は結婚指輪はしていないけれど、今は結婚せずに同棲する人も多い。三十代後半の魅力的な男性がひとり暮らしというのはありえそうにない。ゲイでなければ。ああ、ゲイでありませんように!
「来週の分なんだ。あなたはどうだい?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。