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ヴェネチアの憂鬱
著: ケイト・ヒューイット 翻訳: 小林ルミ子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:630円(税込)
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著者プロフィール
ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。
アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。
解説
ヴィットリオはイタリアに広大な葡萄畑を有するワイナリーの経営者。爵位の継承をめぐる家族間の争いを阻止するため、彼は結婚して子供をもうける必要に迫られた。花嫁候補として目をつけたのは、父親の世話をしながら懸命にワイン造りに取り組むアナ・ヴィアーレだ。容姿にコンプレックスをいだくアナは女としての自信が持てず、29歳でバージンのまま、結婚をあきらめていた。ところが、ある日、彼女の身に胸躍るような出来事が起きる。罪なほど魅力的な男性、ヴィットリオに結婚を申しこまれたのだ。
抄録
「あなたはわたしにキスしたがっていないわ」アナは率直に事実を告げた。
「いや、きみにキスしたい」ヴィットリオは吐息をもらすように言った。アナは今晩ずっと彼にキスされたかったし、自分からもキスしたかった。そしてとうとうそれが叶うときがきたのだと知った。
「わかったわ」アナは心を決めると、心臓が激しく打つのを感じながら彼のほうに歩いていった。だが、足を早く出しすぎてつまずきそうになった。するとヴィットリオの手が伸びてきて、彼女の肩をつかんで腕のなかに引き寄せた。彼の男らしい体を肌に感じたとたん、アナの体中の神経が命を吹きこまれたように甘くざわめいた。
ヴィットリオは彼女の唇すれすれのところまで口を近づけてささやいた。「きみはいったん決めたら、とことんそれをやり抜こうとする。そんなきみが好きなんだ」
アナはその言葉を聞いて、自分から彼にキスしようとした。彼女はキスがへただった。それは自分でもわかっている。経験がほとんどないのだからしかたがない。彼女はぎこちなく彼の口に唇を押しつけた。しかし、そのあとどうすればいいのかわからず、途方に暮れた。
ヴィットリオがふいに唇を柔らかく開いた。どうしてこんなことができるのだろう? アナはぼうっとしながら思った。すると驚くことに彼の舌がアナの温かな口のなかに入ってきた。そのとたんアナの全身を稲妻のような鋭い喜びが貫いた。彼女は無意識のうちに手を伸ばし、彼の体を引き寄せた。腰と腰が触れ合い、彼の下半身のこわばりを感じた。彼は嘘をついていたのではなかったんだわ。ヴィットリオはわたしに欲望を抱いている。
そう思うと、全身がぞくぞくした。ここにいる男性は、わたしのキスや体に熱い反応を示している。そう、少なくとも今の彼はわたしを求めている。わたしを女性として見ている。
体を駆けめぐる自信がアナを大胆にさせた。彼女は彼のシャツの背中にまわした手を腰へと下ろし、体をさらに引き寄せた。ヴィットリオがはっと息をのんでから、重ねた唇の下でほほ笑むのがわかった。
彼は唇を合わせたまま、舌をアナの歯の奥へと滑らせて舌を絡め、キスを深めていく。アナは頭がくらくらして呼吸が浅くなった。こんなキスをしたのは初めてだ。デートの終わりに、ついばむような軽いキスをしたことはあったが、それとは比べものにならなかった。
だがヴィットリオは唐突に彼女を離した。
アナはよろめきながら後ろに下がると、ふっくらした自分の唇に手を当てた。頭がぼうっとし、五感はたった今起こったことにまだ反応している。ヴィットリオが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。たった今、何かを証明したと言いたげに。アナもそれは認めざるをえなかった。
「これで提携がうまくいくことを証明できた。そうは思わないか?」
「何も証明できていないわ」アナはすぐに言い返した。キスという単純な行為だけで将来を決める気にはなれない――“単純”とはとても言えない行為だけれど。自分がすっかり変わってしまうようなすばらしいキスだった。しかし、それはヴィットリオが望めば、なんでも彼の思いどおりになるという証明でもあるのだ。「あなたは数日の猶予をわたしにくれると言ったわね」
「きみが考えてくれる気になっただけでもありがたいよ」
アナはその返事を聞いて、何を言っても彼の自信を崩すことはできないのだと知った。わたしとのキスが彼の心を揺さぶったのだとしても、今の彼は何もなかったように取り澄ました顔をしている。彼にとっては、ただのキスだったのだ。わたしのように衝撃を受けていない。確かにあの瞬間、彼はわたしに欲望を感じていた。でも、さっきのわたしみたいに無防備に腕のなかに飛びこんでいったら、男性なら誰でもあんな反応を示すのではないだろうか。
けれどもロベルトは違った。わたしが腕のなかに飛びこんでいったら、彼は大理石の銅像のようになってしまった。そしてわたしがキスすると、彼は一歩下がって軽蔑に満ちた声でこう言った。“アナ、ぼくはきみには恋愛感情は抱けない”そしてわたしの心にとどめを刺したのだった。“きみをそんなふうに見られるわけがないだろう”
でも、とアナは思った。欲望がこめられたすばらしいキスをされたからといって、それが結婚してもうまくやっていける証明になるのだろうか?
「真面目に考えるわ」アナは言った。「でもイエスと返事するとは決まっていないわよ」
「もちろん、わかっているさ」
アナはもう一度自分の唇に手で触れたが、すぐに手を下ろした。そのしぐさがいかにもものほしげに見えることに気づいたからだ。「もう帰るわ」
*この続きは製品版でお楽しみください。
「いや、きみにキスしたい」ヴィットリオは吐息をもらすように言った。アナは今晩ずっと彼にキスされたかったし、自分からもキスしたかった。そしてとうとうそれが叶うときがきたのだと知った。
「わかったわ」アナは心を決めると、心臓が激しく打つのを感じながら彼のほうに歩いていった。だが、足を早く出しすぎてつまずきそうになった。するとヴィットリオの手が伸びてきて、彼女の肩をつかんで腕のなかに引き寄せた。彼の男らしい体を肌に感じたとたん、アナの体中の神経が命を吹きこまれたように甘くざわめいた。
ヴィットリオは彼女の唇すれすれのところまで口を近づけてささやいた。「きみはいったん決めたら、とことんそれをやり抜こうとする。そんなきみが好きなんだ」
アナはその言葉を聞いて、自分から彼にキスしようとした。彼女はキスがへただった。それは自分でもわかっている。経験がほとんどないのだからしかたがない。彼女はぎこちなく彼の口に唇を押しつけた。しかし、そのあとどうすればいいのかわからず、途方に暮れた。
ヴィットリオがふいに唇を柔らかく開いた。どうしてこんなことができるのだろう? アナはぼうっとしながら思った。すると驚くことに彼の舌がアナの温かな口のなかに入ってきた。そのとたんアナの全身を稲妻のような鋭い喜びが貫いた。彼女は無意識のうちに手を伸ばし、彼の体を引き寄せた。腰と腰が触れ合い、彼の下半身のこわばりを感じた。彼は嘘をついていたのではなかったんだわ。ヴィットリオはわたしに欲望を抱いている。
そう思うと、全身がぞくぞくした。ここにいる男性は、わたしのキスや体に熱い反応を示している。そう、少なくとも今の彼はわたしを求めている。わたしを女性として見ている。
体を駆けめぐる自信がアナを大胆にさせた。彼女は彼のシャツの背中にまわした手を腰へと下ろし、体をさらに引き寄せた。ヴィットリオがはっと息をのんでから、重ねた唇の下でほほ笑むのがわかった。
彼は唇を合わせたまま、舌をアナの歯の奥へと滑らせて舌を絡め、キスを深めていく。アナは頭がくらくらして呼吸が浅くなった。こんなキスをしたのは初めてだ。デートの終わりに、ついばむような軽いキスをしたことはあったが、それとは比べものにならなかった。
だがヴィットリオは唐突に彼女を離した。
アナはよろめきながら後ろに下がると、ふっくらした自分の唇に手を当てた。頭がぼうっとし、五感はたった今起こったことにまだ反応している。ヴィットリオが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。たった今、何かを証明したと言いたげに。アナもそれは認めざるをえなかった。
「これで提携がうまくいくことを証明できた。そうは思わないか?」
「何も証明できていないわ」アナはすぐに言い返した。キスという単純な行為だけで将来を決める気にはなれない――“単純”とはとても言えない行為だけれど。自分がすっかり変わってしまうようなすばらしいキスだった。しかし、それはヴィットリオが望めば、なんでも彼の思いどおりになるという証明でもあるのだ。「あなたは数日の猶予をわたしにくれると言ったわね」
「きみが考えてくれる気になっただけでもありがたいよ」
アナはその返事を聞いて、何を言っても彼の自信を崩すことはできないのだと知った。わたしとのキスが彼の心を揺さぶったのだとしても、今の彼は何もなかったように取り澄ました顔をしている。彼にとっては、ただのキスだったのだ。わたしのように衝撃を受けていない。確かにあの瞬間、彼はわたしに欲望を感じていた。でも、さっきのわたしみたいに無防備に腕のなかに飛びこんでいったら、男性なら誰でもあんな反応を示すのではないだろうか。
けれどもロベルトは違った。わたしが腕のなかに飛びこんでいったら、彼は大理石の銅像のようになってしまった。そしてわたしがキスすると、彼は一歩下がって軽蔑に満ちた声でこう言った。“アナ、ぼくはきみには恋愛感情は抱けない”そしてわたしの心にとどめを刺したのだった。“きみをそんなふうに見られるわけがないだろう”
でも、とアナは思った。欲望がこめられたすばらしいキスをされたからといって、それが結婚してもうまくやっていける証明になるのだろうか?
「真面目に考えるわ」アナは言った。「でもイエスと返事するとは決まっていないわよ」
「もちろん、わかっているさ」
アナはもう一度自分の唇に手で触れたが、すぐに手を下ろした。そのしぐさがいかにもものほしげに見えることに気づいたからだ。「もう帰るわ」
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
紙書籍初版: 2011/10/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛なき結婚
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