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三年目の償い
著: クリスティ・ゴールド 翻訳: 木内重子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタル
価格:525円(税込)
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著者プロフィール
クリスティ・ゴールド(Kristi Gold)
作品がウォールデンブックスのベストセラーリストにたびたび登場する人気作家。十二歳のときからロマンス小説を書き始める。当時のヒーローは学校の男の子や芸能人だった。やがてカウボーイと医者に変わるが、夫はその両方でもあった。テキサスの小さな農場に、元神経外科医の夫と三人の子供、様々な種類の家畜と共に住む。かつては馬を乗りこなして大会にまで参加していたが、小説を書くために乗馬をやめ、今は末娘に“愛のむち”をふるっている。執筆をしていないときは、オフィスで執筆している夢を見るという。
作品がウォールデンブックスのベストセラーリストにたびたび登場する人気作家。十二歳のときからロマンス小説を書き始める。当時のヒーローは学校の男の子や芸能人だった。やがてカウボーイと医者に変わるが、夫はその両方でもあった。テキサスの小さな農場に、元神経外科医の夫と三人の子供、様々な種類の家畜と共に住む。かつては馬を乗りこなして大会にまで参加していたが、小説を書くために乗馬をやめ、今は末娘に“愛のむち”をふるっている。執筆をしていないときは、オフィスで執筆している夢を見るという。
解説
★黙ってわたしの前から消えた恋人。なぜ今になって戻ってきたの?★
ルネ・マルシャンは故郷のニューオリンズに戻ってきた。仕事のパートナーで、恋人でもあったピート・トレイナーが、突然プロジェクトを降り、行方をくらましてしまったからだ。彼女は責任を問われて仕事を辞め、愛も失った。いったいなぜ、彼はいなくなってしまったの? 二人で過ごした幸せな日々の思い出を忘れられないまま、家族で経営する〈ホテル・マルシャン〉の仕事に没頭するルネの前に、突然ピートが現れたのはただの偶然だろうか。仕事で来たという彼は、しばらくホテルに滞在することになった。ルネの心は開いた古傷に疼くが、胸のざわめきはやまず……。
ルネ・マルシャンは故郷のニューオリンズに戻ってきた。仕事のパートナーで、恋人でもあったピート・トレイナーが、突然プロジェクトを降り、行方をくらましてしまったからだ。彼女は責任を問われて仕事を辞め、愛も失った。いったいなぜ、彼はいなくなってしまったの? 二人で過ごした幸せな日々の思い出を忘れられないまま、家族で経営する〈ホテル・マルシャン〉の仕事に没頭するルネの前に、突然ピートが現れたのはただの偶然だろうか。仕事で来たという彼は、しばらくホテルに滞在することになった。ルネの心は開いた古傷に疼くが、胸のざわめきはやまず……。
抄録
タクシーが改装した倉庫の前にとまったときには、今夜はピートと昔の話を蒸し返す時間も体力もないという結論に達していた。それに、そんな話をすれば、ピートに長居させてしまうことになるだけだ。
ピートが運転手に料金を払っている間に、ルネはなめらかな身のこなしでタクシーから降りた。しかし、そのままタクシーが走り去ってしまったので、ただ唖然としてピートを見つめた。「待っていてもらえばよかったのに」
「それは思いつかなかったな」無邪気な顔を装おうとしていたが、うまくいくはずもない。ピート・トレイナーに無邪気なところなどまったくないのだから。とりわけ、必殺の視線を放つ焦茶色の目には。「またタクシーを呼ぶよ。きみの家に電話がないなら別だが」
「もちろん、電話くらいあるわ」それに、ピートの顔にキスして、逆らえるものなら逆らってみろと言いたげな笑みをぬぐい落としたくてたまらない気持ちもある。とりあえず、今はその気持ちを無視するとしても。
八角形のロビーに入ると、隅のデスクの向こうに座っていた二十代の警備員に挨拶された。
「こんばんは、ミズ・マルシャン」ピートを目にとめて、ハロゲンライトのように明るく顔を輝かせる。「あれ? 『ホットニュース』を撮った監督さんじゃないですか?」
ピートはこの場にふさわしい控えめな態度で手を差し出した。「ピート・トレイナーだ」
「ダニー・ジョーンズです」警備員は両手で握ったピートの手を少し長すぎるくらい放さずにいた。「あの映画、大好きなんです。DVDも持ってます。十回以上は見たけど、何度見ても超怖くて」
「気に入ってもらえてうれしいよ」
ダニーが信じられないという顔でゆっくりと首を振った。「友だちに言っても信じてもらえないだろうな。サイン、もらえます?」そう言いながら机の引き出しをかきまわす。
「帰るときに頼んだらどう?」ルネは永遠に解放してもらえないのではないかと思って言った。「サインする紙を彼に持っていかせるから」
「わかりました、ミズ・マルシャン」警備員はピートにウインクした。「お二人にはもっと差し迫った用事がありそうですからね」
ピートはずうずうしくも自分のものだと言わんばかりにルネの腰に手を置いた。「そうなんだ、ダニー。おやすみ」
ルネは歯を食いしばって、ピートがアパートメントへやってきた理由を長々と説明したいのをこらえ、ついでに、どこまでも厚かましいピートをののしってやりたいのをこらえた。運がよければ、明日の朝目覚めたら、新聞の社交欄に映画監督との密会を詳しく報じた好意的な記事を見つけるだけですむだろう。でも、計画どおりにピートをすぐに追い返せなかったら?
ルネは足を速めた。ピートはすぐ後ろをついてきて、エレベーターの前まで来た。
エレベーターが下りてくるのを待つ間、二人は何もしゃべらなかった。ルネは自分の胸に尋ねた。ピートも覚えているかしら? たぶん、覚えていないわ。エレベーターの中でピートに誘惑された女性が何人いるかは想像するしかなかった。でも、そんな想像はしたくない。そんなことは考えたくもない。
やがてエレベーターの扉が開くと、ルネはあわただしく乗り込んでボタンを押した。また二人を包んでいた沈黙を破って、ピートが言った。「この前、こういう状況になったとき――」
「言わないで」
「わかった、言わないよ。だけど、忘れているとは思わないでくれ。きみも覚えていないふりをしても無駄だ。覚えているのはわかってるからね」
ルネは細かいことまで忘れていなかった。何一つとして。脚本の最終稿にオーケーを出すとすぐ、ルネはお祝いの乾杯をしようと、サンタモニカのコンドミニアムにピートを誘った。あの夜も、これよりずっと大きなエレベーターの中で二人きりになったのだ。ピートは扉を背にして、例のはっと息をのむような笑顔を彼女に向けていた。あのころは、二人とも笑顔になる理由がたくさんあったのだ。
あのとき上昇するエレベーターの中でピートに何を言ったか、正確に思い出すことができる。“本当に実現するのね”
ピートの返事もまるでさっき聞いたばかりのように覚えている。“ああ、間違いなくね”
そして、ピートはルネの背中を鏡張りの壁に押しつけ、キスをした。それまで何度も打ち合わせをしたり、映画の話をしながら二人で食事をしたり、陽気な冗談をひとしきり言い合ったりしたことは、すべてそのキスへの序章だった。さらに、あの夜のキスは、ルネをなんの前置きもなく寝室へと直行させた。お酒を飲むことも、着ていた服をわざわざ全部脱ぐこともなく。
今も、ピートのすべてに意識が向いている。コロンのかすかな香りから、ほんのわずかに体重を移すしぐさに至るまで。あの夜に感じた熱い欲望がよみがえってくるのをルネは必死に抑え込んだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ピートが運転手に料金を払っている間に、ルネはなめらかな身のこなしでタクシーから降りた。しかし、そのままタクシーが走り去ってしまったので、ただ唖然としてピートを見つめた。「待っていてもらえばよかったのに」
「それは思いつかなかったな」無邪気な顔を装おうとしていたが、うまくいくはずもない。ピート・トレイナーに無邪気なところなどまったくないのだから。とりわけ、必殺の視線を放つ焦茶色の目には。「またタクシーを呼ぶよ。きみの家に電話がないなら別だが」
「もちろん、電話くらいあるわ」それに、ピートの顔にキスして、逆らえるものなら逆らってみろと言いたげな笑みをぬぐい落としたくてたまらない気持ちもある。とりあえず、今はその気持ちを無視するとしても。
八角形のロビーに入ると、隅のデスクの向こうに座っていた二十代の警備員に挨拶された。
「こんばんは、ミズ・マルシャン」ピートを目にとめて、ハロゲンライトのように明るく顔を輝かせる。「あれ? 『ホットニュース』を撮った監督さんじゃないですか?」
ピートはこの場にふさわしい控えめな態度で手を差し出した。「ピート・トレイナーだ」
「ダニー・ジョーンズです」警備員は両手で握ったピートの手を少し長すぎるくらい放さずにいた。「あの映画、大好きなんです。DVDも持ってます。十回以上は見たけど、何度見ても超怖くて」
「気に入ってもらえてうれしいよ」
ダニーが信じられないという顔でゆっくりと首を振った。「友だちに言っても信じてもらえないだろうな。サイン、もらえます?」そう言いながら机の引き出しをかきまわす。
「帰るときに頼んだらどう?」ルネは永遠に解放してもらえないのではないかと思って言った。「サインする紙を彼に持っていかせるから」
「わかりました、ミズ・マルシャン」警備員はピートにウインクした。「お二人にはもっと差し迫った用事がありそうですからね」
ピートはずうずうしくも自分のものだと言わんばかりにルネの腰に手を置いた。「そうなんだ、ダニー。おやすみ」
ルネは歯を食いしばって、ピートがアパートメントへやってきた理由を長々と説明したいのをこらえ、ついでに、どこまでも厚かましいピートをののしってやりたいのをこらえた。運がよければ、明日の朝目覚めたら、新聞の社交欄に映画監督との密会を詳しく報じた好意的な記事を見つけるだけですむだろう。でも、計画どおりにピートをすぐに追い返せなかったら?
ルネは足を速めた。ピートはすぐ後ろをついてきて、エレベーターの前まで来た。
エレベーターが下りてくるのを待つ間、二人は何もしゃべらなかった。ルネは自分の胸に尋ねた。ピートも覚えているかしら? たぶん、覚えていないわ。エレベーターの中でピートに誘惑された女性が何人いるかは想像するしかなかった。でも、そんな想像はしたくない。そんなことは考えたくもない。
やがてエレベーターの扉が開くと、ルネはあわただしく乗り込んでボタンを押した。また二人を包んでいた沈黙を破って、ピートが言った。「この前、こういう状況になったとき――」
「言わないで」
「わかった、言わないよ。だけど、忘れているとは思わないでくれ。きみも覚えていないふりをしても無駄だ。覚えているのはわかってるからね」
ルネは細かいことまで忘れていなかった。何一つとして。脚本の最終稿にオーケーを出すとすぐ、ルネはお祝いの乾杯をしようと、サンタモニカのコンドミニアムにピートを誘った。あの夜も、これよりずっと大きなエレベーターの中で二人きりになったのだ。ピートは扉を背にして、例のはっと息をのむような笑顔を彼女に向けていた。あのころは、二人とも笑顔になる理由がたくさんあったのだ。
あのとき上昇するエレベーターの中でピートに何を言ったか、正確に思い出すことができる。“本当に実現するのね”
ピートの返事もまるでさっき聞いたばかりのように覚えている。“ああ、間違いなくね”
そして、ピートはルネの背中を鏡張りの壁に押しつけ、キスをした。それまで何度も打ち合わせをしたり、映画の話をしながら二人で食事をしたり、陽気な冗談をひとしきり言い合ったりしたことは、すべてそのキスへの序章だった。さらに、あの夜のキスは、ルネをなんの前置きもなく寝室へと直行させた。お酒を飲むことも、着ていた服をわざわざ全部脱ぐこともなく。
今も、ピートのすべてに意識が向いている。コロンのかすかな香りから、ほんのわずかに体重を移すしぐさに至るまで。あの夜に感じた熱い欲望がよみがえってくるのをルネは必死に抑え込んだ。
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