和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
著者プロフィール
ルーシー・モンロー(Lucy Monroe)
アメリカ、オレゴン州出身。姉の影響でハーレクインのロマンス小説を読み始めた。大学在学中に“生涯でいちばんすてきな男性”と知り合って結婚し、子供が生まれてからは母親としての道を選んだ。十八歳の夏に家族で旅行に行ったヨーロッパが忘れられず、今も時間があれば旅行を楽しんでいる。
アメリカ、オレゴン州出身。姉の影響でハーレクインのロマンス小説を読み始めた。大学在学中に“生涯でいちばんすてきな男性”と知り合って結婚し、子供が生まれてからは母親としての道を選んだ。十八歳の夏に家族で旅行に行ったヨーロッパが忘れられず、今も時間があれば旅行を楽しんでいる。
解説
「知ってる? あの大富豪、今度は孫娘に夫を買い与えるそうよ」嘲りをこめてささやかれる自分の噂話に、ホープは身をこわばらせた。いまどき珍しいほど内気な彼女には恋人の一人もいない。しかし、ひそかに憧れている男性ならいる。祖父の仕事仲間で実業家のシチリア人、ルチアーノだ。今夜は祖父が開いた大晦日のパーティ。もちろん彼も招かれている。夜も更け、やがて新年へのカウントダウンが始まった。そして恒例のキスでルチアーノが選んだ相手は、なんとホープだった! 二人のキスは新年を祝うにしてはあまりにも熱く、甘く、長かった。ある裏取り引きをもくろむ祖父がほくそえんで見ているとも知らず……。
抄録
祖父の主催する今夜のパーティには男性客がおおぜいいるけれど、結局一人で立ち尽くして、ほかの人たちがキスをする姿を眺めることになるのは目に見えている。きらびやかな女性とルチアーノが唇を重ねる光景が頭をよぎり、胃が締めつけられるような気がした。今夜のパーティには美人もたくさんいる。そういう女性たちが裕福な実業家に魅力を感じるのは当然のことだった。
階下に戻らなくても、ルチアーノは取り残された気にはならないだろう。こうしている今だって、だれかがテーブルの向かい側に座っているかもしれないし、もう私のことなど待ってもいないかもしれない。テーブルにいなければさがしに来るだろうと、別の場所でだれかと談笑しているかもしれない。
今、一階に下りていけば、祖父が招いた華やかな招待客の中で自分だけが浮いている事実をまた痛感することになる。ジョシュア・レイノルズの孫娘として生まれても、祖父の属する世界にはいっこうになじめない。そもそも自分がなじめる世界などないのではないかと、不安に思うこともある。
ホープは壁にかかっている小さな額に目を移した。額には尊敬するエレノア・ルーズベルトの言葉が書かれている。その言葉を読むたびに、内気な性格は変えられないにしても、それを恥じて臆病な生き方をする必要はないのだと、勇気をもらうのだった。
視界の隅にホープが現れるなり、ルチアーノはその存在に気づいた。ホープはなにを言うでも、なにをするでもなかったが、なじみのある甘い香りが漂ってきたところで、話をしていた女性から目をそらし、ホープのほうに向き直った。北欧出身のモデルだというその女性は、ホープが席を立つなり近づいてきたのだった。「やあ、戻ったな」
ホープはちらりとモデルに目をやった。「ええ」そう言って手を差し出す。ほっそりとした人さし指と親指の間には白い名刺がはさまっている。「施設の連絡先はここにあるわ」
ルチアーノは名刺を受け取り、タキシードの内ポケットに入れた。「ありがとう《グラッツィエ》」
「こちらこそ、ありがとう」
突然周囲が騒がしくなり、隣の部屋でカウントダウンが始まった。新年まであと十秒。ほかの客同様、横にいるモデルも楽しそうにカウントダウンに加わった。ホープも声を合わせはじめたが、その表情にはなぜか暗い影が差している。新年を祝う瞬間が迫っているのに、どうして悲しげな顔をしているのだろう? ラベンダー色の瞳も陰っているように見える。北欧出身のモデルが腕に手をかけてきたので我に返ると、周囲では男女がカップルになって隣の部屋に移りはじめていた。幸せな新年を祈って、恒例のキスをするつもりなのだろう。その瞬間、ホープがなぜ暗い表情を浮かべているのか理解できた。
僕は今、選択を迫られている。左側にいるセクシーなモデルにキスをするか、ホープにキスをするか。
ルチアーノはモデルにキスをするとホープが確信しているのは明らかだった。こういう状況でほうっておかれる経験を何度もしているのかもしれない。積極的になりたい気持ちはあっても、周囲の目を気にして行動を起こせずにいるのだ。新年のキスへの期待など、最初から抱いていないに違いない。悲しみをおびた瞳がそう物語っている。
ホープは思いやりにあふれるやさしい心の持ち主だ。そんな彼女に目もくれないとは、ボストンの男たちはどういう趣味をしているのか? 繊細にして魅惑的な花が、すぐそばに咲いているというのに。
ルチアーノはブロンドのモデルの手を払い、ホープに歩み寄った。ホープは途中でカウントダウンをやめたまま口をぽかんと開け、目をみはっている。ルチアーノは両手を彼女の頬に添えて顎を上げさせると、周囲で“一!”という声が響き渡るのを合図に、ゆっくりと顔を近づけた。
強引に唇を求めて怖がらせるつもりはなかった。先ほど泣かせてしまったからには、これくらいのことはしなければという思いもあった。ホープが働く施設の家具をそろえるのは寄付であり、個人的な侮辱には個人的な行為で償う必要がある。
唇が重なった瞬間、ホープは身を震わせた。彼女の唇は甘く、柔らかかった。そっと舌を差し入れると、かすかに口が開かれ、ルチアーノはホープのぬくもりをもっと味わおうと唇を押しつけた。
ホープはためらいがちに舌で応えた。そのとたん、熱い血潮が全身を駆けめぐり、ルチアーノは彼女の背中に手を当てて引き寄せた。ホープは抵抗することなく、型に流しこまれる溶けた鉄のようにしなだれかかってきた。そこで彼は背中に当てた手に力を入れてホープの足を床から浮かせ、いっそう激しいキスができるように、お互いの顔を同じ高さにした。
両腕をルチアーノの首にからませたホープは、うめき声をもらしながら情熱的なキスを返してくる。興奮のあまり、まわりにいる人々の存在も忘れ、二人は熱い口づけを続けた。
できることならこの場でホープの服を脱がせて、華奢な体の隅々まで味わいたい。そう、書斎だ。書斎に連れていけば、人目を気にする必要もない。
ルチアーノがホープを抱きあげようと、彼女の膝に手を伸ばしかけたときだった。そばで野太い声がして、欲望に染まった考えは一瞬にしてかき消された。
「それだけ熱いキスをすれば、二人は中国の龍がもたらす幸運より強い絆で結ばれそうだな」
*この続きは製品版でお楽しみください。
階下に戻らなくても、ルチアーノは取り残された気にはならないだろう。こうしている今だって、だれかがテーブルの向かい側に座っているかもしれないし、もう私のことなど待ってもいないかもしれない。テーブルにいなければさがしに来るだろうと、別の場所でだれかと談笑しているかもしれない。
今、一階に下りていけば、祖父が招いた華やかな招待客の中で自分だけが浮いている事実をまた痛感することになる。ジョシュア・レイノルズの孫娘として生まれても、祖父の属する世界にはいっこうになじめない。そもそも自分がなじめる世界などないのではないかと、不安に思うこともある。
ホープは壁にかかっている小さな額に目を移した。額には尊敬するエレノア・ルーズベルトの言葉が書かれている。その言葉を読むたびに、内気な性格は変えられないにしても、それを恥じて臆病な生き方をする必要はないのだと、勇気をもらうのだった。
視界の隅にホープが現れるなり、ルチアーノはその存在に気づいた。ホープはなにを言うでも、なにをするでもなかったが、なじみのある甘い香りが漂ってきたところで、話をしていた女性から目をそらし、ホープのほうに向き直った。北欧出身のモデルだというその女性は、ホープが席を立つなり近づいてきたのだった。「やあ、戻ったな」
ホープはちらりとモデルに目をやった。「ええ」そう言って手を差し出す。ほっそりとした人さし指と親指の間には白い名刺がはさまっている。「施設の連絡先はここにあるわ」
ルチアーノは名刺を受け取り、タキシードの内ポケットに入れた。「ありがとう《グラッツィエ》」
「こちらこそ、ありがとう」
突然周囲が騒がしくなり、隣の部屋でカウントダウンが始まった。新年まであと十秒。ほかの客同様、横にいるモデルも楽しそうにカウントダウンに加わった。ホープも声を合わせはじめたが、その表情にはなぜか暗い影が差している。新年を祝う瞬間が迫っているのに、どうして悲しげな顔をしているのだろう? ラベンダー色の瞳も陰っているように見える。北欧出身のモデルが腕に手をかけてきたので我に返ると、周囲では男女がカップルになって隣の部屋に移りはじめていた。幸せな新年を祈って、恒例のキスをするつもりなのだろう。その瞬間、ホープがなぜ暗い表情を浮かべているのか理解できた。
僕は今、選択を迫られている。左側にいるセクシーなモデルにキスをするか、ホープにキスをするか。
ルチアーノはモデルにキスをするとホープが確信しているのは明らかだった。こういう状況でほうっておかれる経験を何度もしているのかもしれない。積極的になりたい気持ちはあっても、周囲の目を気にして行動を起こせずにいるのだ。新年のキスへの期待など、最初から抱いていないに違いない。悲しみをおびた瞳がそう物語っている。
ホープは思いやりにあふれるやさしい心の持ち主だ。そんな彼女に目もくれないとは、ボストンの男たちはどういう趣味をしているのか? 繊細にして魅惑的な花が、すぐそばに咲いているというのに。
ルチアーノはブロンドのモデルの手を払い、ホープに歩み寄った。ホープは途中でカウントダウンをやめたまま口をぽかんと開け、目をみはっている。ルチアーノは両手を彼女の頬に添えて顎を上げさせると、周囲で“一!”という声が響き渡るのを合図に、ゆっくりと顔を近づけた。
強引に唇を求めて怖がらせるつもりはなかった。先ほど泣かせてしまったからには、これくらいのことはしなければという思いもあった。ホープが働く施設の家具をそろえるのは寄付であり、個人的な侮辱には個人的な行為で償う必要がある。
唇が重なった瞬間、ホープは身を震わせた。彼女の唇は甘く、柔らかかった。そっと舌を差し入れると、かすかに口が開かれ、ルチアーノはホープのぬくもりをもっと味わおうと唇を押しつけた。
ホープはためらいがちに舌で応えた。そのとたん、熱い血潮が全身を駆けめぐり、ルチアーノは彼女の背中に手を当てて引き寄せた。ホープは抵抗することなく、型に流しこまれる溶けた鉄のようにしなだれかかってきた。そこで彼は背中に当てた手に力を入れてホープの足を床から浮かせ、いっそう激しいキスができるように、お互いの顔を同じ高さにした。
両腕をルチアーノの首にからませたホープは、うめき声をもらしながら情熱的なキスを返してくる。興奮のあまり、まわりにいる人々の存在も忘れ、二人は熱い口づけを続けた。
できることならこの場でホープの服を脱がせて、華奢な体の隅々まで味わいたい。そう、書斎だ。書斎に連れていけば、人目を気にする必要もない。
ルチアーノがホープを抱きあげようと、彼女の膝に手を伸ばしかけたときだった。そばで野太い声がして、欲望に染まった考えは一瞬にしてかき消された。
「それだけ熱いキスをすれば、二人は中国の龍がもたらす幸運より強い絆で結ばれそうだな」
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本の情報
紙書籍初版: 2011/11/20
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