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再会のモンテカルロ
著: スーザン・スティーヴンス 翻訳: 西江璃子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタル
価格:525円(税込)
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著者プロフィール
スーザン・スティーヴンス(Susan Stephens)
プロのオペラ歌手として活躍していた経歴を持つ。夫とは、出会って五日後には婚約をし、三カ月後には結婚したという。現在はチェシャー州で、三人の子供とたくさんの動物たちに囲まれて暮らしている。昔からロマンス小説を読むのが大好きだった彼女は、自分の人生を“果てしない、ロマンティックな冒険”と称している。
プロのオペラ歌手として活躍していた経歴を持つ。夫とは、出会って五日後には婚約をし、三カ月後には結婚したという。現在はチェシャー州で、三人の子供とたくさんの動物たちに囲まれて暮らしている。昔からロマンス小説を読むのが大好きだった彼女は、自分の人生を“果てしない、ロマンティックな冒険”と称している。
解説
★わたしを豪華なヨットに閉じ込めて、いったい何をするつもりなの? ★
事故で片目の視力を失ったせいで、ミアはインテリアデザイナーになる夢を絶たれてしまった。今モンテカルロのヘアサロンで受付係として働いている彼女は、ある日、新聞でラム・ヴァリンダに関する記事を目にした。彼はミアの兄の全寮制学校時代からの親友で、王族――マハラジャの後継者にして世界的なカーレーサーだ。ラムはミアが10代のころの淡い恋の相手でもあったが、身分の違いもあり、その恋が実ることはなかったのだった。再びラムに会って自分の望みを伝えたい気持ちを抑えきれず、ミアは思いきってラムに連絡を取るが……。
事故で片目の視力を失ったせいで、ミアはインテリアデザイナーになる夢を絶たれてしまった。今モンテカルロのヘアサロンで受付係として働いている彼女は、ある日、新聞でラム・ヴァリンダに関する記事を目にした。彼はミアの兄の全寮制学校時代からの親友で、王族――マハラジャの後継者にして世界的なカーレーサーだ。ラムはミアが10代のころの淡い恋の相手でもあったが、身分の違いもあり、その恋が実ることはなかったのだった。再びラムに会って自分の望みを伝えたい気持ちを抑えきれず、ミアは思いきってラムに連絡を取るが……。
抄録
ミアとの再会は、ラムを心底から揺さぶった。今はこうしてホテルのペントハウスのバルコニーをぶらぶら歩いているが、ホテルに戻ってからたっぷり一時間は、あちこちに電話して指示を飛ばしていた。
金や影響力をこれほどありがたいと思ったのは初めてだ。自家用ヨットは一時間以内に港に入る。その他のさまざまな手配も進んでいるはずだ。ぼくの助けを必要としている人間を見捨てることはしないし、ミアから立ち去るつもりもない。ミアはぼくからの哀れみなど絶対に受けたくないと思うだろう。ぼく自身もややこしい話はごめんだが、ミアの傷跡を見た瞬間、頭の中でベルが鳴り響いたのだ。
これまで、故国の統治は楽なやり方でごまかしてきた。遠方から指示を出し、いずれ自分が住む場所として、エコ対応の家の建設も進めさせてきた。だが、あのミアとの再会で、そんな考えが一変した。彼女に関しては遠方からの指示などできない。そばにいてぬくもりと支えを与えてやらねば。もちろんそれは故国の国民たちも同じだ。故国にミアも一緒に連れていこう。彼女の心が完全に癒されたら、また一人で帰ってくればいい。無理をして強がることなく、昔のままのミアとして生きていけばいい。ぼくが己の罪悪感を受け入れていくにはそれしかない。ミアのためにも、彼女の家族、そして親友のトムのためにも、彼女が苦しんでいるときにそばにいてやりたい。トムにはさっき電話をして責め立てたが、ミアに口止めされていたのだから、彼を責めるのはお門違いだ。
あのヘアサロンはことさらに派手な趣向を凝らし、スタッフも全員奇抜な衣装を身につけている。ミアがインテリアデザイナーとしての有望なキャリアを捨ててしまったのは残念だが、さっきの衣装はなかなか魅力的だった。トムのお下がりを着て木のぼりをするミア。やけに古風なイブニングドレス姿のミア。そのどちらもほほえましい思い出だが、形のいいヒップが半分見えるような黒革のぴったりしたホットパンツ姿となると……。
なんだ。“ミアを助けてやりたい”が聞いてあきれる。いつからそんな自分勝手な欲望にすり替わったんだ。早く話を事故に戻さなければ。ミアは事故後よく立ち直ったと思う。それは尊敬に値する。二人とも昔から危なっかしいことが好きで、戦うからには勝たねばという考えだった。ぼくは彼女をレースの交替ドライバーとして採用することを了承した――彼女が本当に明日レースに来れば、の話だが。それでもミアは来ずにはいられないはずだ。
翌日、ラムがレーシングクラブの玄関の外で体をほぐしていると、ミアがつかつかと歩み寄ってきた。よれよれのジーンズにスニーカー姿で、強気な態度を前面に出し、彼女のために用意しておいた耐火仕様のレーシングスーツをこれ見よがしに振っている。ふっくらと、キスしたくなるような唇が……ぎゅっと固く結ばれている。
戦闘開始かとラムが身構えると、ミアは彼の目の前で足を止めた。
「わかっていたはずだろう。きみはカーレースをよく知っているんだし」
「言っておいてほしかったわ、あなたの会社のロゴがスーツ全面にべたべた貼ってあるなんて。もっと地味なものも用意できたのに」
「裸の女は嫌いかい?」
ミアはラムの身がすくむような視線を投げた。「『カーマ・スートラ』の挿絵をそのまま使っているのなら、ちょっと許せないわね」
「以前は男しかいないチームだったんだよ」
「すみませんね、女で」
「もう終わりか?」
「だましたのね、ラム」
「だました? ぼくが?」ラムはミアをにらみつけて言い返した。「ぼくの手助けをすると言い出したのはきみのほうだし、スーツのことなど一言もきかなかっただろう。文句はそれくらいにして、人生で最高のナビゲーションができるよう集中してくれ」
ミアは口の中でひどい悪態をついた。
「とにかく、がっかりさせないでくれよ」
「それはこっちのせりふよ」ミアが噛みついた。「わたしたち、チームなんだから。そうでしょう?」
「ああ、優勝チームだ」着替えに行くミアの後ろ姿にラムが呼びかけた。
ラリーをしていた当時から、レーシングスーツには慣れっこだ。下着のショーツ以外は全部耐火仕様だ。ラムの隣に長時間座るとなれば、このショーツこそ耐火仕様でなければならないのに。
何を考えているの? そんな不埒な考えは胸の奥深くにしまい込みなさい。今のわたしたちはチームメイト。ただ、それだけなんだから。
ミアはファスナーがすべてきちんと締まっているか確認した。自分がレースモードに入っていくのを感じる。スタートゾーンに入ると、もうレースのことだけに集中する。以前はラリーが得意だったのだ。今度だって、ちゃんとできる。世界的なレベルのレーサーでもあるラムと同乗することも、自信を取り戻す格好の足がかりとなるに違いない。
だが、更衣室から出てラムが美女たちに囲まれているのを見た瞬間、そんな決意はあっという間に崩れた。黒く豊かな巻き毛と楽しげな瞳、黒の野球帽を目深にかぶり、レーシングスーツに身を包んだラムは確かに魅力的だ。他のどの選手よりも背が高く、たくましくてセクシーだ。けれども、その思わせぶりな笑みやいたずらっぽい目の輝きを見れば、まともな女性なら近づいてはいけない、危険なものをはらんでいることに気づく。
*この続きは製品版でお楽しみください。
金や影響力をこれほどありがたいと思ったのは初めてだ。自家用ヨットは一時間以内に港に入る。その他のさまざまな手配も進んでいるはずだ。ぼくの助けを必要としている人間を見捨てることはしないし、ミアから立ち去るつもりもない。ミアはぼくからの哀れみなど絶対に受けたくないと思うだろう。ぼく自身もややこしい話はごめんだが、ミアの傷跡を見た瞬間、頭の中でベルが鳴り響いたのだ。
これまで、故国の統治は楽なやり方でごまかしてきた。遠方から指示を出し、いずれ自分が住む場所として、エコ対応の家の建設も進めさせてきた。だが、あのミアとの再会で、そんな考えが一変した。彼女に関しては遠方からの指示などできない。そばにいてぬくもりと支えを与えてやらねば。もちろんそれは故国の国民たちも同じだ。故国にミアも一緒に連れていこう。彼女の心が完全に癒されたら、また一人で帰ってくればいい。無理をして強がることなく、昔のままのミアとして生きていけばいい。ぼくが己の罪悪感を受け入れていくにはそれしかない。ミアのためにも、彼女の家族、そして親友のトムのためにも、彼女が苦しんでいるときにそばにいてやりたい。トムにはさっき電話をして責め立てたが、ミアに口止めされていたのだから、彼を責めるのはお門違いだ。
あのヘアサロンはことさらに派手な趣向を凝らし、スタッフも全員奇抜な衣装を身につけている。ミアがインテリアデザイナーとしての有望なキャリアを捨ててしまったのは残念だが、さっきの衣装はなかなか魅力的だった。トムのお下がりを着て木のぼりをするミア。やけに古風なイブニングドレス姿のミア。そのどちらもほほえましい思い出だが、形のいいヒップが半分見えるような黒革のぴったりしたホットパンツ姿となると……。
なんだ。“ミアを助けてやりたい”が聞いてあきれる。いつからそんな自分勝手な欲望にすり替わったんだ。早く話を事故に戻さなければ。ミアは事故後よく立ち直ったと思う。それは尊敬に値する。二人とも昔から危なっかしいことが好きで、戦うからには勝たねばという考えだった。ぼくは彼女をレースの交替ドライバーとして採用することを了承した――彼女が本当に明日レースに来れば、の話だが。それでもミアは来ずにはいられないはずだ。
翌日、ラムがレーシングクラブの玄関の外で体をほぐしていると、ミアがつかつかと歩み寄ってきた。よれよれのジーンズにスニーカー姿で、強気な態度を前面に出し、彼女のために用意しておいた耐火仕様のレーシングスーツをこれ見よがしに振っている。ふっくらと、キスしたくなるような唇が……ぎゅっと固く結ばれている。
戦闘開始かとラムが身構えると、ミアは彼の目の前で足を止めた。
「わかっていたはずだろう。きみはカーレースをよく知っているんだし」
「言っておいてほしかったわ、あなたの会社のロゴがスーツ全面にべたべた貼ってあるなんて。もっと地味なものも用意できたのに」
「裸の女は嫌いかい?」
ミアはラムの身がすくむような視線を投げた。「『カーマ・スートラ』の挿絵をそのまま使っているのなら、ちょっと許せないわね」
「以前は男しかいないチームだったんだよ」
「すみませんね、女で」
「もう終わりか?」
「だましたのね、ラム」
「だました? ぼくが?」ラムはミアをにらみつけて言い返した。「ぼくの手助けをすると言い出したのはきみのほうだし、スーツのことなど一言もきかなかっただろう。文句はそれくらいにして、人生で最高のナビゲーションができるよう集中してくれ」
ミアは口の中でひどい悪態をついた。
「とにかく、がっかりさせないでくれよ」
「それはこっちのせりふよ」ミアが噛みついた。「わたしたち、チームなんだから。そうでしょう?」
「ああ、優勝チームだ」着替えに行くミアの後ろ姿にラムが呼びかけた。
ラリーをしていた当時から、レーシングスーツには慣れっこだ。下着のショーツ以外は全部耐火仕様だ。ラムの隣に長時間座るとなれば、このショーツこそ耐火仕様でなければならないのに。
何を考えているの? そんな不埒な考えは胸の奥深くにしまい込みなさい。今のわたしたちはチームメイト。ただ、それだけなんだから。
ミアはファスナーがすべてきちんと締まっているか確認した。自分がレースモードに入っていくのを感じる。スタートゾーンに入ると、もうレースのことだけに集中する。以前はラリーが得意だったのだ。今度だって、ちゃんとできる。世界的なレベルのレーサーでもあるラムと同乗することも、自信を取り戻す格好の足がかりとなるに違いない。
だが、更衣室から出てラムが美女たちに囲まれているのを見た瞬間、そんな決意はあっという間に崩れた。黒く豊かな巻き毛と楽しげな瞳、黒の野球帽を目深にかぶり、レーシングスーツに身を包んだラムは確かに魅力的だ。他のどの選手よりも背が高く、たくましくてセクシーだ。けれども、その思わせぶりな笑みやいたずらっぽい目の輝きを見れば、まともな女性なら近づいてはいけない、危険なものをはらんでいることに気づく。
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