マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

知られざる思い エメラルド色の誘惑 III

知られざる思い エメラルド色の誘惑 III

著: キャロル・モーティマー 翻訳: 柿原日出子
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスエメラルド色の誘惑
価格:525円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 キャロル・モーティマー(Carole Mortimer)
 ハーレクイン・シリーズでもっとも愛され、人気のある作家の一人。1978年にイギリスでデビューして以来、これまでに刊行された作品は実に百冊を超える。十四歳のころからロマンス小説に傾倒し、アン・メイザーの作品に感銘を受けて作家になることを決意した。キャロルは三人兄妹の末っ子としてイギリスはベッドフォードシャー州の小村で育った。一時は看護師を志したが、転倒した際に痛めた背中が治りきらず断念。その後、某有名文房具メーカーのコンピューター部門に勤め、そこで働く間に時間を見つけて小説を書くようになった。物語を書くときに一番楽しいのは、ヒロインとヒーローの性格を考えるとき。書いているうちに徐々に主導権がヒロインとヒーローに移り、いつのまにか彼らが物語を語りはじめるのだという。現在キャロルは“イギリスで最も美しい場所”マン島に、夫と子供たちと住む。

解説

 実業家ジェローム・サマーの三女アンディは、安穏に暮らしてきた世界が急速に変わりつつあるのを感じた。仲のよかった姉二人は幸せな結婚をし、アンディの身にも遠からず劇的な変化が訪れようとしていた。密かに愛していた人と初めて結ばれ、身ごもってしまったのだ。だが、彼が本当に愛しているのは、わたしではない。アンディは切なくつらい立場に追い込まれた。心身の癒しを求め、マジョルカ島へ飛んだが、南の島の平穏はすぐに破られた。「おなかにぼくの子どもがいることを、いつまで隠しておくつもりだ?」別荘にいきなり現れた男性の声に、アンディは愕然とした。アダム・マンロー、今をときめく映画プロデューサー。そして、わたしの亡き母を愛していた人……。

抄録

 アンディは指輪のない左手を見下ろした。ずっとこのままだろう。わたしは愛する人とは結ばれないまま……。
「ありそうにないわ」涙が突然こみあげ、アンディは目をしばたたいた。このところ、ひどく涙もろくなっている。きっと体調のせいだ。「わたしはオールド・ミスになるでしょうね」自嘲ぎみにつけ加えた。
「からかっただけだよ」アダムは机をまわり、彼女の細い肩に腕をまわした。「これからゆっくり恋をして、きっと結婚するよ。きみはまだ二十五歳じゃないか」
「あと二カ月で二十六よ」アダムは涙のわけを完全に取り違えている。恋や結婚など問題ではない。もし愛する男性と結ばれないのなら――たぶんそうなるだろう――アンディは一生誰とも結婚するつもりはなかった。
「そんな年か?」アダムはつぶやき、アンディの顔を上向かせて、じっと見つめた。「もうおばあさんだな」
 アンディは首を横に振り、アダムから体を離した。「涙のわけを誤解しているみたいね。ハリーとダニーがわたしの姉というだけでなく、クインとジョナスの奥さんだと思うと、なんだか妙な気持ちがしたの」
 三カ月前までは、誰も結婚する気配はなかった。三人姉妹はとても仲がよく、友だちなどいらないくらいだった。それがこの二カ月の間に、ハリーもダニーも結婚してしまった。アンディにはちょっとつらかった。特に今は。
「ハリーは銀行家の妻。そしてあの無鉄砲なダニーが……」アダムは信じられないというように首を振った。「今や医者の妻だ」
 そう、確かに姉たちは変身を遂げた。わたしは新しい姉たちにうまく適応しなければならない。けれども近い将来、わたしは自分自身の境遇の変化に適応しなければならなくなる……。
「アンディ、一緒にランチを食べに行こう」アダムが優しい声で言った。「若くて美しい女性と一緒にいるところを目撃されれば、ぼくの株が上がるというものだ」
「また新たな交際相手の出現というわけ?」アダムがこれまで取っかえ引っかえ若い女性とつき合ってきたのを、アンディは知っていた。
 アダムはため息をつき、二、三歩下がった。「きみがまだ小さいときに、ジェロームはもっとお尻を引っぱたいておくべきだったな」
「そんなこと、ママがさせるものですか」アンディは、優しかった母親バーバラになり代わって断言した。
「そうだな」アダムの表情が曇り、口調がぶっきらぼうになった。
 アンディには彼の表情がかげった理由がわかっていた。彼女は以前から知っていた、アダムが彼女の母親を愛していたことを。
 アンディたちが子どものころ、田舎嫌いのはずなのに、アダムはほとんど毎週のように屋敷に遊びに来た。その理由がわかったのは、アンディがずいぶん大きくなってから、母が十年前に亡くなったときだった。ジェロームや娘たちと同じようにアダムも打ちひしがれ、慰めるすべがないほど悲嘆にくれたのだ。
 アダムは母を愛していた……。
 アンディは呆然となったが、ただでさえ気持ちの沈んでいる姉たちに打ち明けることはできなかった。アダムの悲しみように父がどう反応するか、アンディは気がかりだった。だが意外にも、父はアダムが母を愛していたという事実に慰めを見いだしたようだった。
 以来、二人の絆はいっそう強くなり、十年後の今では厚い友情で結ばれている。
 アンディはアダムの目をのぞきこんだ。「ランチの誘いは取り消しかしら?」
 不機嫌そうな目が彼女を見返した。「いいや。しかし、もう頼んだりはしない。命令だ。それがなんであるにしろ」机の上のレイアウト紙をぞんざいに手で示す。「何か食べたほうが、能率はずっと上がるというものだ」
 相手が誰であれ、命令されるのはごめんだわ。アンディは首を横に振った。「答えはノーよ。申しわけないけど――」
「きみが申しわけないなんて思っているもんか。アンディ、ぼくたちは友だちだったじゃないか」
「今だってそうよ」アダムの癇癪に、彼女はいささかも動じなかった。「だけど、何度も言ったとおり、忙しいの」
「わかった」アダムの顎はこわばっていた。「代わりにエイプリルを誘ってみるか」
 アンディの顔にいたずらっぽい笑みが広がった。「彼女、きっと喜ぶわ。ただし、フィアンセがなんて言うかしら」
 アダムは顔をしかめた。「きみはこんなに気むずかしい女性じゃなかったはずだが」
 アンディは椅子に座ったまま背筋を伸ばした。後ろの窓から差しこむ陽光が、背中に流れ落ちているゆったりと編んだ髪や、耳や眉にかかる巻き毛を金色に染めている。
「昔は何もかもが単純だったわ」声に悲しみの調べが帯びたのをアダムに気づかれませんように。アンディは願った。彼女は彼に詮索されるのを恐れた。心配しすぎる父親を相手にするだけでもひと苦労だったのに、アダムを巻きこんだりしたらいったいどうなることかしら。
 アダムは豪華な室内をじっくりと見渡した。「きみはグロス社のトップという境遇を楽しんでいるようだね」
 アンディはうなずき、そっけなく答えた。「あなたが映画制作会社の経営を楽しんでいるのと同じだわ」
 アダムの思慮深いまなざしがアンディに注がれた。「つまり仕事ひと筋ということかな?」
 そうではない。今週を最後に、しばらく雑誌の仕事を休むことになる。だからなおさらこの号は完璧に仕上げておきたかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。