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罪深き純潔
著: キャロル・モーティマー 翻訳: 漆原麗発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:630円(税込)
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著者プロフィール
キャロル・モーティマー(Carole Mortimer)
ハーレクイン・シリーズでもっとも愛され、人気のある作家の一人。1978年にイギリスでデビューして以来、これまでに刊行された作品は実に百冊を超える。十四歳のころからロマンス小説に傾倒し、アン・メイザーの作品に感銘を受けて作家になることを決意した。キャロルは三人兄妹の末っ子としてイギリスはベッドフォードシャー州の小村で育った。一時は看護師を志したが、転倒した際に痛めた背中が治りきらず断念。その後、某有名文房具メーカーのコンピューター部門に勤め、そこで働く間に時間を見つけて小説を書くようになった。物語を書くときに一番楽しいのは、ヒロインとヒーローの性格を考えるとき。書いているうちに徐々に主導権がヒロインとヒーローに移り、いつのまにか彼らが物語を語りはじめるのだという。現在キャロルは“イギリスで最も美しい場所”マン島に、夫と子供たちと住む。
ハーレクイン・シリーズでもっとも愛され、人気のある作家の一人。1978年にイギリスでデビューして以来、これまでに刊行された作品は実に百冊を超える。十四歳のころからロマンス小説に傾倒し、アン・メイザーの作品に感銘を受けて作家になることを決意した。キャロルは三人兄妹の末っ子としてイギリスはベッドフォードシャー州の小村で育った。一時は看護師を志したが、転倒した際に痛めた背中が治りきらず断念。その後、某有名文房具メーカーのコンピューター部門に勤め、そこで働く間に時間を見つけて小説を書くようになった。物語を書くときに一番楽しいのは、ヒロインとヒーローの性格を考えるとき。書いているうちに徐々に主導権がヒロインとヒーローに移り、いつのまにか彼らが物語を語りはじめるのだという。現在キャロルは“イギリスで最も美しい場所”マン島に、夫と子供たちと住む。
解説
弁護士のジョーイは義兄が経営する会社で、1カ月のあいだ個人秘書として働くことになった。上司となるのはギデオン・セントクレア――以前、彼女が手がける案件に有無を言わさず介入してきて、まるで自分の仕事かのようにさっさと解決してしまった傲慢な男。だしぬかれたのは今でも腹立たしいけれど、理知的でセクシーな魅力を意識せずにはいられなかった。そして初日、彼がジョーイと同僚弁護士のあらぬ恋の噂に触れたとき、彼女はむきになって否定しながら詰めよった。するとギデオンは横柄に見下ろしながら、冷徹な言葉を吐いた。「はっきり言っておくが、ぼくは君の恋愛にはまったく興味がない」
■華麗なる公爵家3兄弟の物語もいよいよ最終話。セントクレア一族最後の独身貴族である次男ギデオンが、才気煥発なジョーイをどのように手なずけるのか、あるいは手なずけられるのか。ロマンスの話巧者C・モーティマーが綴る、愛憎入り乱れるラブストーリー!
■華麗なる公爵家3兄弟の物語もいよいよ最終話。セントクレア一族最後の独身貴族である次男ギデオンが、才気煥発なジョーイをどのように手なずけるのか、あるいは手なずけられるのか。ロマンスの話巧者C・モーティマーが綴る、愛憎入り乱れるラブストーリー!
抄録
「そうやってお昼までずっとふんぞり返っているつもり? それとも、この荷物を運ぶのを少しでも手伝ってくれるのかしら?」
ギデオンは目を閉じ、ゆっくりと十まで数えた。さらにゆっくりと深呼吸をして目を開ける。
だめだ。ジョーイ・マッキンリーはまだ目の前にいる。地下の駐車場で、車のトランクに身をかがめていた彼女は、今や背筋をまっすぐに伸ばし、九センチの細いヒールをコンクリートの床にこつこつと打ちつけている。これから四週間、この女性が悩みの種となるのはわかっていた。四週間も耐えられると仮定しての話だが。
ジョーイ・マッキンリー、二十八歳、身長百六十三センチ。シルクのような赤毛は短くカットされ、ハート形の美しい顔を縁取っている。翡翠にも似た緑色の瞳は挑戦的な光を宿し、肌はクリームのようになめらかで、小さな鼻のまわりにうっすらとそばかすがある。唇はふっくらとして官能的だ。そして体は……鍛えているに違いない。注文仕立ての黒いスーツに瞳と同色のシルクのブラウスが、引き締まった体を際立たせている。
「で、どうするの?」
宿敵が再び挑戦してきた。赤褐色の眉を上げ、もどかしげにヒールを床に打ちつけながら。
ギデオンはまたも深く息を吸いこんだ。このような人材配置は適切とは言いがたく、会社にも被害を及ぼしかねない――そう言って兄のルーカンを説得するべきだった。もっとも、兄が少々不快な思いをしたところでぼくには関係ないし、向こうだってぼくのことをなんとも思っちゃいない。だから、こんな女性を押しつけたのだ。
ギデオンはこの三十六時間の出来事を思い返していた。土曜日の晩、ルーカンの結婚披露宴で、〈セントクレア・コーポレーション〉の会長を臨時に務めるよう兄から言い渡された。ルーカンはレクシーと一カ月ハネムーンに出かける。その間、ギデオンが会長となり、会社の顧問弁護士という彼本来の仕事はジョーイ・マッキンリーにやらせるという。
会長職と顧問弁護士は兼任できるとはっきり言ったのだが、兄は聞く耳を持たなかった。ジョーイ・マッキンリーとはそりが合わないと言ったのも無視された。
弁護士としてのジョーイ・マッキンリーを悪く言う者はひとりもいない。法廷での能力は確かに尊敬に値する。だが、そのほかの面ではいらいらさせられてばかりいる。
あの赤毛はどこにいても灯台の光のように目立つ。笑い声は低く、そばにいる男性全員が振り返るほどセクシーだ。二カ月ほど前に会ったときは、くるぶしまで届く深緑色のドレスを着ていた。彼女の双子の姉であるステファニーと、ギデオンの双子の弟、ジョーダンの結婚式で、ジョーイは花嫁の付添役を務めた。先週のルーカンとレクシーの結婚式のときは膝丈の赤いドレスだった。赤毛とはいえ、金色とシナモン色がまじっているため、ドレスの赤が髪の色を引き立てていた。
今日は黒のビジネススーツだ。いかにも職業的と評したいところだが……。上着は体にぴったりとして、丈は短く、緑色のシルクのブラウスは上のボタンが三つも外れているため、クリーム色の胸の上部が垣間見える。膝丈のタイトスカートの下からは長く形のよい脚が伸びていた。
つまり、ジョーイ・マッキンリーは……。
「あなたが態度を決めるより早く乾くペンキを見たことがあるわ」
まさに目の上のこぶだ。
ギデオンはもう一度息を吸いこんだ。「いつもそんなふうに癇に障る言い方をしなくては気がすまないのか?」
愚かな質問だ。ジョーイが思ったことを口にするタイプなのはわかっている。言葉を慎重に選ぶギデオンは、その点が引っかかっていた。
「あなたがたまには偉そうな態度をやめて、わたしたち一般人の仲間入りをしたら、噛みつきたい気持ちもおさまると思うんだけれど」
ギデオンは顔をしかめた。ジョーイと会ったのはたしかこれが四度目だ。初めて会ったのは九週間前、ピッカード・アンド・ライト法律事務所でだった。ギデオンはジョーイの姉のステファニーをややこしい状況から救いだし、そのことを告げに行ったのだ。それから二週間後、弟ジョーダンとステファニーの結婚式のリハーサルで再会し、さらにその一週間後に結婚式でまた会った。
新郎の付添役を務めたギデオンは、ジョーダンと並んで祭壇の前に立っていた。双子の弟の幸せを思い、胸にこみあげるものがあった。ステファニーが通路を進んでくる。美しい花嫁だ。だが、その後ろに続くジョーイは、あざけりの色を目に浮かべ、彼を見ていた。
別に驚きはしなかった。初対面のときから、彼女とはそりが合わなかったからだ。ギデオンが驚いたのは、新郎新婦が結婚登録台帳に署名したときだった。天使の歌声が聞こえてきたのだ。
まさに天使の声としか言いようがなかった。甘く朗々とした歌声が教会に響きわたった。
人の声をこれほど美しいと感じたのは生まれて初めてだった。まさに心を震わせる声だった。聴き入っていたギデオンは、しばらくして、招待客が全員、教会の右側のほうを見ていることに気づき、声の主を見た。“天使”はジョーイ・マッキンリーだった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ギデオンは目を閉じ、ゆっくりと十まで数えた。さらにゆっくりと深呼吸をして目を開ける。
だめだ。ジョーイ・マッキンリーはまだ目の前にいる。地下の駐車場で、車のトランクに身をかがめていた彼女は、今や背筋をまっすぐに伸ばし、九センチの細いヒールをコンクリートの床にこつこつと打ちつけている。これから四週間、この女性が悩みの種となるのはわかっていた。四週間も耐えられると仮定しての話だが。
ジョーイ・マッキンリー、二十八歳、身長百六十三センチ。シルクのような赤毛は短くカットされ、ハート形の美しい顔を縁取っている。翡翠にも似た緑色の瞳は挑戦的な光を宿し、肌はクリームのようになめらかで、小さな鼻のまわりにうっすらとそばかすがある。唇はふっくらとして官能的だ。そして体は……鍛えているに違いない。注文仕立ての黒いスーツに瞳と同色のシルクのブラウスが、引き締まった体を際立たせている。
「で、どうするの?」
宿敵が再び挑戦してきた。赤褐色の眉を上げ、もどかしげにヒールを床に打ちつけながら。
ギデオンはまたも深く息を吸いこんだ。このような人材配置は適切とは言いがたく、会社にも被害を及ぼしかねない――そう言って兄のルーカンを説得するべきだった。もっとも、兄が少々不快な思いをしたところでぼくには関係ないし、向こうだってぼくのことをなんとも思っちゃいない。だから、こんな女性を押しつけたのだ。
ギデオンはこの三十六時間の出来事を思い返していた。土曜日の晩、ルーカンの結婚披露宴で、〈セントクレア・コーポレーション〉の会長を臨時に務めるよう兄から言い渡された。ルーカンはレクシーと一カ月ハネムーンに出かける。その間、ギデオンが会長となり、会社の顧問弁護士という彼本来の仕事はジョーイ・マッキンリーにやらせるという。
会長職と顧問弁護士は兼任できるとはっきり言ったのだが、兄は聞く耳を持たなかった。ジョーイ・マッキンリーとはそりが合わないと言ったのも無視された。
弁護士としてのジョーイ・マッキンリーを悪く言う者はひとりもいない。法廷での能力は確かに尊敬に値する。だが、そのほかの面ではいらいらさせられてばかりいる。
あの赤毛はどこにいても灯台の光のように目立つ。笑い声は低く、そばにいる男性全員が振り返るほどセクシーだ。二カ月ほど前に会ったときは、くるぶしまで届く深緑色のドレスを着ていた。彼女の双子の姉であるステファニーと、ギデオンの双子の弟、ジョーダンの結婚式で、ジョーイは花嫁の付添役を務めた。先週のルーカンとレクシーの結婚式のときは膝丈の赤いドレスだった。赤毛とはいえ、金色とシナモン色がまじっているため、ドレスの赤が髪の色を引き立てていた。
今日は黒のビジネススーツだ。いかにも職業的と評したいところだが……。上着は体にぴったりとして、丈は短く、緑色のシルクのブラウスは上のボタンが三つも外れているため、クリーム色の胸の上部が垣間見える。膝丈のタイトスカートの下からは長く形のよい脚が伸びていた。
つまり、ジョーイ・マッキンリーは……。
「あなたが態度を決めるより早く乾くペンキを見たことがあるわ」
まさに目の上のこぶだ。
ギデオンはもう一度息を吸いこんだ。「いつもそんなふうに癇に障る言い方をしなくては気がすまないのか?」
愚かな質問だ。ジョーイが思ったことを口にするタイプなのはわかっている。言葉を慎重に選ぶギデオンは、その点が引っかかっていた。
「あなたがたまには偉そうな態度をやめて、わたしたち一般人の仲間入りをしたら、噛みつきたい気持ちもおさまると思うんだけれど」
ギデオンは顔をしかめた。ジョーイと会ったのはたしかこれが四度目だ。初めて会ったのは九週間前、ピッカード・アンド・ライト法律事務所でだった。ギデオンはジョーイの姉のステファニーをややこしい状況から救いだし、そのことを告げに行ったのだ。それから二週間後、弟ジョーダンとステファニーの結婚式のリハーサルで再会し、さらにその一週間後に結婚式でまた会った。
新郎の付添役を務めたギデオンは、ジョーダンと並んで祭壇の前に立っていた。双子の弟の幸せを思い、胸にこみあげるものがあった。ステファニーが通路を進んでくる。美しい花嫁だ。だが、その後ろに続くジョーイは、あざけりの色を目に浮かべ、彼を見ていた。
別に驚きはしなかった。初対面のときから、彼女とはそりが合わなかったからだ。ギデオンが驚いたのは、新郎新婦が結婚登録台帳に署名したときだった。天使の歌声が聞こえてきたのだ。
まさに天使の声としか言いようがなかった。甘く朗々とした歌声が教会に響きわたった。
人の声をこれほど美しいと感じたのは生まれて初めてだった。まさに心を震わせる声だった。聴き入っていたギデオンは、しばらくして、招待客が全員、教会の右側のほうを見ていることに気づき、声の主を見た。“天使”はジョーイ・マッキンリーだった。
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