和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
著者プロフィール
キム・ローレンス(Kim Lawrence)
イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。
イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。
解説
人でごった返すスペイン、マドリードの空港。搭乗便を待つメーガンは思いがけない人物にでくわした。エミリオ・リオス――以前から憧れていた兄の友人であり、いまや派手な女性関係で知られる裕福な実業家の彼。2年前に冷たくあしらわれて以来、距離をおいてきたけれど……。すると彼は挨拶もないまま、メーガンを引き寄せてキスをした。呆然とするメーガンに、彼は謎めいた視線を送ってたたみかける。「今夜、僕と一緒に過ごさないか?」「100万ドル出せるならね」動揺のあまりメーガンは軽口で返した。それが、めくるめく嵐のような1日の始まりだった――
■恋する主人公たちの心の機微を繊細に描くキム・ローレンス。特に純真なヒロイン像に定評があり、その人気はじわじわと広がって、ハーレクイン・ロマンスを代表する作家になりました。先月の新刊『指輪より愛を』とともに、彼女の世界に浸ってください。
■恋する主人公たちの心の機微を繊細に描くキム・ローレンス。特に純真なヒロイン像に定評があり、その人気はじわじわと広がって、ハーレクイン・ロマンスを代表する作家になりました。先月の新刊『指輪より愛を』とともに、彼女の世界に浸ってください。
抄録
メーガンがどうすることもできないうちに、エミリオは次の行動に出た。頭をひょいと下げ、唇で彼女の唇をおおったのだ。
悲鳴をあげるのよ。蹴飛ばして、噛みついてやりなさい。頭の中の声が叫んでいる。
しかし、メーガンが実際にしたのは、エミリオに身をゆだねることだった。彼女のしなやかな体は、彼の引き締まった長身にぴったりと寄り添った。ため息とともに唇を開き、彼の舌を招き入れる。
圧倒的な欲求と情熱に全身を支配されるままに、エミリオの背中に腕をまわして、しがみついた。
周囲の喧騒も、自制心も、すべて遠ざかっていき、残ったのはエミリオの舌の味と温かな唇の感触だけだった。
メーガンは、なにも考えずにただひたすら彼の官能的な舌の動きに応じていた。
そのとき、キスは始まったのと同じくらい唐突に終わった。急にエミリオのぬくもりが遠ざかり、メーガンはぽつんと取り残された。たった今トラックに轢かれたのではないかと思えるくらいの衝撃に、ただただ震えていた。
メーガンは体の両わきに垂らした手を握り締めた。
「ミスター・リオス」くってかかるような口調で言った。「ちょうど今、あなたの話をしていたところなの」手にした携帯電話をエミリオの目の前に掲げた。力のこもった手の関節が白く浮き出ている。
ねえ、今、彼にキスされたわよね?
二年の月日が流れても、彼はほとんど変わっていなかった。ほんの少しやせて、さらに引き締まったように見える。魅力的な顔の彫りが際立ってよりシャープな印象になってはいるものの、基本的には以前と変わらないエミリオ・リオスだ。
でも、私は変わった。もう昔のメーガンじゃないのよ。彼女は必死に自分に言い聞かせた。
ねえ、今、彼にキスされたでしょう?
エミリオは、息遣いがいくらかでも正常に近いところまで戻るのをじっと待っていた。メーガンは彼の左肩の後方に目を向けながら、魅惑的な低い声で再び携帯電話の相手と話しだした。その声はややヒステリックにも聞こえた。オープンネックのブラウスからのぞく喉元では、血管が激しく脈打っているのが見える。
全身を駆けめぐる飢えにも似た欲求を抑えこみながら、エミリオはメーガンの唇を見るまいと目をそらした。見てしまったら、すでに痛いほどに反応している体をさらに燃えあがらせることになる。
公衆の面前でキスをすると、これだから不便だ。
一方のメーガンは父と電話で話しながら、必死に自分に言い聞かせていた。うっとりするほどハンサムな男性なら、これまで何人も目にしてきたじゃないの。エミリオ・リオスを見たからといって、わけのわからないことをまくしたてたりしないで。遠くから眺めて憧れているなんてことはとっくに卒業したんだから。いわれのないことで彼に非難されても、もう傷つかない。彼の姿に胸をときめかせはしない。彼は単に、かつて兄の同級生でちょっと知っていたというだけのただのハンサムなんだから。
問題は、その“ただのハンサム”のせいで、息をするのもままならなくなっていることだった。熱気のこもったターミナルビルの中で、なぜか腕に鳥肌が立ち、それをしずめようとあわてて撫でた。
認めなさいよ、メーガン。エミリオみたいな男がただのハンサムであるはずがないじゃないの。あんなすてきな唇をしているんですもの。でも、だからといって、公の場でよだれを垂らして恥をかく必要もないわ。
「知っている。聞こえていたよ」
周囲の騒音と、メーガン自身の激しい胸の鼓動の音にまぎれて、どこか聞き覚えのある声がエミリオを呼んでいる。
本人に聞こえているのかどうか、その外見からはわからなかった。エミリオはただ、解読不能な謎めいた表情でメーガンをじっと見おろしているだけだ。
「今、キスしたわよね」
エミリオは黒い眉の片方を上げた。「よかった。君が気づかなかったんじゃないかと、不安に思いはじめていたところだ」
「無視しようとしたのよ」あるいは、その事実から逃げようとしたのかしら?「ぶんぶん飛びまわるいやな害虫を無視するみたいに」
「つまり、僕が嫌いだということかい?」
相手に嫌われているかもしれないという可能性を考えたところで、彼の鋼のような自信には引っかき傷一つつかないのだろう。メーガンはそう思いながら、懸命に落ち着きを取り戻そう、それが無理でも、せめてぽかんと開いた口くらいは閉じようとしていた。
とにかくリラックスして。彼女は繰り返し自分に言い聞かせた。
上を向いたメーガンの顔を見おろしながら、エミリオの胸にこみあげてくるのは、好きとか嫌いとかいう生半可な感情ではなかった。彼女の顔立ちをひと言で表すなら“柔らかい”だとぼんやり思いつつ、激しく上下している彼女の胸元に一瞬目を落とし、また顔に視線を戻した。柔らかく、そして女らしい。
メーガンの瞳を見るたびにわくわくする。深い色合いのトパーズ。だが、今は瞳孔が開ききっていて、トパーズ色の部分はその周辺にわずかに見えるにすぎない。彼女の肌も、特筆すべきすばらしさだ。頬の赤みの下に広がるのは、なめらかな乳白色の肌で、染み一つない。この乳白色はずっとどこまでも続くのだろうか?
エミリオが見守る中、メーガンは目を閉じた。それと同時に、白い喉元の筋肉がこわばる。そして次の瞬間、彼女は小さく首を横に振り、挑むようにつんと顎を上げてからまぶたを開けた。それが“私にかまわないで”という表情であることはエミリオにもわかっていたが、その表情が皮肉にも、彼の中でずっと鳴りをひそめていた情熱をかきたてた。
すげなくされると、かえってかまいたくなるものだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
悲鳴をあげるのよ。蹴飛ばして、噛みついてやりなさい。頭の中の声が叫んでいる。
しかし、メーガンが実際にしたのは、エミリオに身をゆだねることだった。彼女のしなやかな体は、彼の引き締まった長身にぴったりと寄り添った。ため息とともに唇を開き、彼の舌を招き入れる。
圧倒的な欲求と情熱に全身を支配されるままに、エミリオの背中に腕をまわして、しがみついた。
周囲の喧騒も、自制心も、すべて遠ざかっていき、残ったのはエミリオの舌の味と温かな唇の感触だけだった。
メーガンは、なにも考えずにただひたすら彼の官能的な舌の動きに応じていた。
そのとき、キスは始まったのと同じくらい唐突に終わった。急にエミリオのぬくもりが遠ざかり、メーガンはぽつんと取り残された。たった今トラックに轢かれたのではないかと思えるくらいの衝撃に、ただただ震えていた。
メーガンは体の両わきに垂らした手を握り締めた。
「ミスター・リオス」くってかかるような口調で言った。「ちょうど今、あなたの話をしていたところなの」手にした携帯電話をエミリオの目の前に掲げた。力のこもった手の関節が白く浮き出ている。
ねえ、今、彼にキスされたわよね?
二年の月日が流れても、彼はほとんど変わっていなかった。ほんの少しやせて、さらに引き締まったように見える。魅力的な顔の彫りが際立ってよりシャープな印象になってはいるものの、基本的には以前と変わらないエミリオ・リオスだ。
でも、私は変わった。もう昔のメーガンじゃないのよ。彼女は必死に自分に言い聞かせた。
ねえ、今、彼にキスされたでしょう?
エミリオは、息遣いがいくらかでも正常に近いところまで戻るのをじっと待っていた。メーガンは彼の左肩の後方に目を向けながら、魅惑的な低い声で再び携帯電話の相手と話しだした。その声はややヒステリックにも聞こえた。オープンネックのブラウスからのぞく喉元では、血管が激しく脈打っているのが見える。
全身を駆けめぐる飢えにも似た欲求を抑えこみながら、エミリオはメーガンの唇を見るまいと目をそらした。見てしまったら、すでに痛いほどに反応している体をさらに燃えあがらせることになる。
公衆の面前でキスをすると、これだから不便だ。
一方のメーガンは父と電話で話しながら、必死に自分に言い聞かせていた。うっとりするほどハンサムな男性なら、これまで何人も目にしてきたじゃないの。エミリオ・リオスを見たからといって、わけのわからないことをまくしたてたりしないで。遠くから眺めて憧れているなんてことはとっくに卒業したんだから。いわれのないことで彼に非難されても、もう傷つかない。彼の姿に胸をときめかせはしない。彼は単に、かつて兄の同級生でちょっと知っていたというだけのただのハンサムなんだから。
問題は、その“ただのハンサム”のせいで、息をするのもままならなくなっていることだった。熱気のこもったターミナルビルの中で、なぜか腕に鳥肌が立ち、それをしずめようとあわてて撫でた。
認めなさいよ、メーガン。エミリオみたいな男がただのハンサムであるはずがないじゃないの。あんなすてきな唇をしているんですもの。でも、だからといって、公の場でよだれを垂らして恥をかく必要もないわ。
「知っている。聞こえていたよ」
周囲の騒音と、メーガン自身の激しい胸の鼓動の音にまぎれて、どこか聞き覚えのある声がエミリオを呼んでいる。
本人に聞こえているのかどうか、その外見からはわからなかった。エミリオはただ、解読不能な謎めいた表情でメーガンをじっと見おろしているだけだ。
「今、キスしたわよね」
エミリオは黒い眉の片方を上げた。「よかった。君が気づかなかったんじゃないかと、不安に思いはじめていたところだ」
「無視しようとしたのよ」あるいは、その事実から逃げようとしたのかしら?「ぶんぶん飛びまわるいやな害虫を無視するみたいに」
「つまり、僕が嫌いだということかい?」
相手に嫌われているかもしれないという可能性を考えたところで、彼の鋼のような自信には引っかき傷一つつかないのだろう。メーガンはそう思いながら、懸命に落ち着きを取り戻そう、それが無理でも、せめてぽかんと開いた口くらいは閉じようとしていた。
とにかくリラックスして。彼女は繰り返し自分に言い聞かせた。
上を向いたメーガンの顔を見おろしながら、エミリオの胸にこみあげてくるのは、好きとか嫌いとかいう生半可な感情ではなかった。彼女の顔立ちをひと言で表すなら“柔らかい”だとぼんやり思いつつ、激しく上下している彼女の胸元に一瞬目を落とし、また顔に視線を戻した。柔らかく、そして女らしい。
メーガンの瞳を見るたびにわくわくする。深い色合いのトパーズ。だが、今は瞳孔が開ききっていて、トパーズ色の部分はその周辺にわずかに見えるにすぎない。彼女の肌も、特筆すべきすばらしさだ。頬の赤みの下に広がるのは、なめらかな乳白色の肌で、染み一つない。この乳白色はずっとどこまでも続くのだろうか?
エミリオが見守る中、メーガンは目を閉じた。それと同時に、白い喉元の筋肉がこわばる。そして次の瞬間、彼女は小さく首を横に振り、挑むようにつんと顎を上げてからまぶたを開けた。それが“私にかまわないで”という表情であることはエミリオにもわかっていたが、その表情が皮肉にも、彼の中でずっと鳴りをひそめていた情熱をかきたてた。
すげなくされると、かえってかまいたくなるものだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
紙書籍初版: 2012/1/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>初恋
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛の復活/運命の再会
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