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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

愛の忘れもの

愛の忘れもの


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィティカー(Gail Whitiker)
 英国ウェールズ生まれ。幼いころ、両親と共にカナダに移り住んだ。リージェンシー・ロマンスとの出会いをきっかけに才能を開花させ、作家デビューを飾る。当時の歴史や社会、優雅な言葉遣いに魅力を感じるという。余暇には旅行やスキューバダイビング、ゴルフを楽しむ。バンクーバー島在住。

解説

 何不自由なく育ちながら家族も財産もなくし、教師として働かざるを得ないヘレンは、新入生の後見人と対面したとたんに色を失った。以前、家庭教師をしていた貴族の家で、好色な雇主に抱きつかれたときに偶然、扉を開けた紳士だ。おかげでその隙に逃げ出せたけれど、顔を合わせる勇気はない。どうか私のことなど忘れていますように……。ヘレンはさっと目を伏せてうつむいた。だが紳士は彼女に気づき、非難するような目を向けてきた。まるでヘレンが汚らわしい情婦だとでもいうように。
 ■美貌ゆえに誤解され運命に翻弄されてきたヘレン。言われなき中傷に耐える彼女と傲慢な紳士の歯がゆい恋の物語です。3月の関連作『レディに御用心』はアン・アシュリーの作品です!

抄録

 ヘレンは受け取ったばかりの手紙をうれしく思うべきか困惑するべきか、わからなかった。手紙はオリヴァー・ブランドンからで、それも今日の午後、もしお暇があれば馬車のドライブにおつき合いいただけないか、と書かれていた。
 ヘレンは思案顔で、羊皮紙の手紙を下唇にとんとんと打ちつけた。きょうはたまたま週に一度の半休日で時間はあるが、その時間をミスター・ブランドンと過ごすことになるとは思ってもいなかった。わたしの過去の出来事について話し合いたいというなら、もっと早々に申し出があったはずだ。ジリアンがガーディング女学園に来て半月以上たとうとしている。こんなに日がたってから、わたしに会いに来る目的はなんだろう?
 机に手紙を置いてヘレンは眉をひそめた。もしやジリアンのことだろうか? 彼女が学校にうまくなじんでいるか、勉強で力を発揮しているか、心配なのだろうか? ジリアンが後見人にちょくちょく手紙を書き送っているのは知っている。彼女が学校に対する不平不満をもらし、彼が自分で確かめに来ることなった、という可能性は?
 それはないだろう。ミスター・ブランドンが被後見人のようすを知りたいのなら、直接ミセス・ガーディングに手紙を書くはずだ。そういう問い合わせが来た場合に備え、校長のところへは常に生徒ひとりひとりの状況がしっかり報告されている。
 では、ほかに何があるかしら? ジリアンがわたしを個人的に嫌っていて、それをミスター・ブランドンに言いつけたとか? そうは思えない。わたしはジリアンとのあいだに友情が芽生えたことをうれしく思っているし、ジリアンが新しい環境に順応するのにそれがひと役買ったと信じている。ほかの教師たちも、ジリアンは突然積極的に授業に参加するようになった、年下の子が困っているとさっと助けてあげるようになった、と言っている。
 わたしの過去を問いただすためでも、ジリアンからの苦情に対応するためでもないとしたら、ミスター・ブランドンはいったいなんのためにわたしに会いに来るの?
 ヘレンは三時二十七分に自室のドアを閉め、きびきびした足取りで階段へ向かった。はき古した革のブーツの靴底が板張りの床に当たって柔らかな音をたてたが、胸の大きな鼓動にかき消されてほとんど耳に入らなかった。何も心配することはないわと自分に言い聞かせてはみたものの、ミスター・ブランドンが今日会いに来るのは、やはり自分の過去について話をするためだとしか思えなかった。筋の通る説明はそれしかない。
 だがそう気づくと同時に、オリヴァー・ブランドンには事の真相を知る資格があることにも気づいた。事実を話しさえすれば――ばつの悪い思いはするかもしれないけれど――万事うまくいくという自信はある。なんといってもオリヴァー・ブランドンは紳士だ。紳士として理解を示してくれるだろう。
 階下へ下りていくと、彼はすでに玄関ホールで待っていた。今日はひときわ颯爽としたいでたちで、厚地の外套の下に黒っぽい短い上着と明るい色の膝丈ズボン《ブリーチズ》を合わせている。いつにも増して大柄に見え、風に少し乱された髪が無頼な雰囲気をかもし出していて、それが実に魅力的に映った。
 心を動かされたのを悟られたくなくて、ヘレンは自分の手袋に気を取られているふりをした。「こんにちは、ミスター・ブランドン。お待たせしましたかしら」
 彼女の声にオリヴァーが振り向き、形だけのお辞儀をした。「いいえ、時間どおりです」
 堅苦しい口調にヘレンは一瞬とまどったが、気にしてはだめよと自分に言い聞かせた。彼の口ぶりがそっけないのは当然のことだ。彼が抱いているわたしの印象を考えれば、よそよそしい態度しかとれないのだろう。
 中庭で完璧な対をなす二頭の青毛をつないだ二輪馬車がふたりを待っていた。
「まあ、なんて立派な馬。見た目だけではなく、走りもいいんでしょうね?」
「まさにそのとおり。乗馬はお得意ですか、ミス・ド・カヴァデイル?」
「ええ、以前は」ヘレンは助手席に腰を下ろしながら言った。「でも、もうずいぶんと手綱を取っていませんので、いまはどの程度乗りこなせるか」
「一度身についたら忘れないものですよ」ミスター・ブランドンがとなりに乗り込んだ。
「ですが、練習しなければ上達もしません。こんなすばらしいお天気の日には、どなたかの手綱さばきを楽しませていただくだけで満足ですわ」
 まさに申し分ない九月半ばの一日だった。空気はさわやかで、かすかにぴりっと冷たく、手袋と薄手の外套は必要だが、震えるほど寒くはない。もっときれいなドレスを持っていたらと思ったが、若い女教師の身ではとても手が届かない。でも、地味な平織りのドレスに重ねた丈の短いダークグリーンの上着は決して見苦しくないし、つばの突き出たボンネットもまあまあだ。身につけている中でいちばん新品なのが、柔らかくてなめらかなキッド革の手袋だ。友人のデジレーからクリスマスプレゼントとして贈られたもので、とても大切にしている。
 ミスター・ブランドンが手綱をしぼると、二頭の馬は元気よく速足《トロット》で出発した。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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