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嘘つきな恋人
著: ジャクリーン・バード 翻訳: 苅谷京子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:525円(税込)
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著者プロフィール
ジャクリーン・バード(Jacqueline Baird)
趣味は油絵を描くことだったが、家族からにおいに苦情を言われ、文章を書くことにした。そしてすぐにロマンス小説の執筆に夢中になった。旅行が好きで、アルバイトをしながらヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを回った。英国に戻ったときに結婚。二人の息子に恵まれ、現在も生まれ故郷のイングランド北東部に夫とともに暮らしている。「二人のバレンタイン」と「恋は強引に」がお気に入りの作品だという。ロマンティックタイムズ誌の賞の受賞歴があり、ベストセラーリストにもたびたび登場する。
趣味は油絵を描くことだったが、家族からにおいに苦情を言われ、文章を書くことにした。そしてすぐにロマンス小説の執筆に夢中になった。旅行が好きで、アルバイトをしながらヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを回った。英国に戻ったときに結婚。二人の息子に恵まれ、現在も生まれ故郷のイングランド北東部に夫とともに暮らしている。「二人のバレンタイン」と「恋は強引に」がお気に入りの作品だという。ロマンティックタイムズ誌の賞の受賞歴があり、ベストセラーリストにもたびたび登場する。
解説
★ひと夏の恋は終わっていなかった。彼女にとっては……そして彼にとっても。★大勢の客でにぎわうロンドンのナイトクラブでエロイーズは思いがけずマーカス・クーヴァリスと再会した。ギリシアの島で休暇を過ごしていた十九歳の彼女が、ひと目で恋に落ち……その後二度と会うことのなかったマーカス。初めてのデートを楽しんだ日の翌朝、彼は病気の父を見舞うため島を離れ、それきり戻ってこなかった。エロイーズは待った。彼からの連絡を待ち続けた――彼女の人生に影を落とす、ある事件が起きるまでは。あれから五年。マーカスも彼女を捜し続けていた。けれども、彼の胸を熱く燃え上がらせているのは恋ではなく、復讐の炎。彼をだましたエロイーズへの復讐心だった。そうとも知らず、エロイーズは彼とダンスをし、翌日のディナーの誘いにも応じた。ひそかな不安は胸にしまい込んで。
抄録
マーカスを初めて目にしたのは、飲み物のトレーをテラスに運んだときだった。プールサイドで彼はクロエのそばに立ち、テオ・トゥーンビスは彼女の言葉に笑っていた。エロイーズはトレーを落としそうになった。十九歳の娘にとって、マーカスの男性美はそれほど衝撃的だった。シャツの開いた襟元からのぞく筋肉質の胸板、白いショートパンツからは午後の日ざしに金色に輝く長い脚が伸びている。まるでギリシアの神のような彼を見つめて、エロイーズは呆然と立ち尽くしていた。
「早くして、ぐずな妹ね。私たち、喉がからからなのよ」母の声に、十人ほどがプールサイドからエロイーズを振り返った。マーカスも含めて。
エロイーズは真っ赤になった。一瞬マーカスと目が合い、彼女はうなだれて前に進み出た。すると、魔法のようにマーカスが横に現れた。
「僕が運ぶよ。君みたいに美しい女の子は給仕するのではなく、されるものだ」それが始まりだった。
彼はテオの甥だと自己紹介し、泳ぎに誘った。その言葉に勇気づけられて、エロイーズはビキニの上に着ていた長いコットンのワンピースを脱いだ。トランクスの水着姿のマーカスはどんな女性も魅了するに違いなく、エロイーズも例外ではなかった。マーカスは彼女と話し、からかったりふざけたりして、パーティが終わるころには、彼女が十九歳の学生で婚約していないこと、姉のクロエと生まれて初めて外国で休暇を過ごしていることを聞き出していた。
エロイーズは彼に嘘をつきたくなかったが、母に親子だということをだれにも知られないよう強く言われていた。母と過ごせるなら、そんなことは微々たる代償だ。母がそれなりに愛してくれているのはわかっていた。祖父母の葬儀のあと、クロエはそれを証明した。両親が家を含む全財産をエロイーズに遺したことを気にもしなかった。エロイーズは心苦しさから、家を売った代金だけでも受け取るよう母を説得しようとした。それでも母は、利息を折半できるから共同名義で預金しようとまで言った。エロイーズはその言葉がうれしくて同意した。けれど母の死後までその口座には手をつけなかった。
夜も更けてついに帰る時間になると、マーカスはエロイーズをそっと抱き寄せてキスした。その瞬間、彼女は自分が恋に落ちたことを悟った。
翌朝十時、マーカスはオープンカーで現れて、エロイーズを島の反対側の海辺に連れていった。
「さあ、おいで」崖からわずか二、三メートル手前で車をとめて降りると、マーカスは助手席のドアを開けた。もう一方の手にバスケットと毛布をさげている。「ピクニックをしよう」
「ここで?」エロイーズは岩盤の露出した三メートル四方ほどの地面を見まわした。
「僕を信頼して」マーカスがにっこりし、エロイーズもほほ笑んだ。
垂直に近い崖に深い踏み段が刻まれ、手すりとして古びたロープが張り渡されている。エロイーズにとってこれほど恐ろしい散歩は初めてだった。やっと平らな砂地に降り立ったとき、脚はがくがく震えていた。マーカスはバスケットと毛布を白い砂の上に置いて彼女を腕に抱き寄せた。
「大丈夫かい?」
乱れた息を懸命に整えて周囲を見たあと、エロイーズはほほ笑んでいる彼を見上げた。「すばらしいところね」人影のない馬蹄形の砂浜の向こうに青い海がきらめいている。
ひと泳ぎしたあと、二人はハムやチキンサラダや焼きたてのパンを食べ、シャンパンを飲んだ。
「至れり尽くせりね」エロイーズは吐息をついて毛布に仰向けになった。最高に幸せな気分だった。
マーカスは片肘をついて体を支え、黒い目を楽しそうに輝かせた。視線が合うと、そこに別の光が宿り、突然、夏の澄んだ空気が緊張に揺らめいた。
「僕が君にしてあげたいのはこんなことじゃない」マーカスはかすれた声でささやき、人さし指で彼女の唇の輪郭をなぞった。「この唇に」指を激しく脈打つ喉に滑らせる。「このきれいな首に」指は胸の谷間に下りた。「このセクシーな胸に」
触れられた肌が焼けるように熱く、全身の神経が目覚めるのを感じた。エロイーズが彼の首に両手をまわしてしなやかな黒髪に指をからませると、マーカスが覆いかぶさってきた。彼がそっと唇を重ねたとき、電撃のような興奮に貫かれて、エロイーズはおののいた。さっき人さし指が触れたところを彼の唇がたどるにつれ、興奮はますます高まっていった。
マーカスが胸の谷間に顔をうずめる。いつの間にかビキニのトップはなくなっていた。彼はギリシア語で何かささやくと、胸の頂を口に含んだ。
とたんにエロイーズの体は燃え上がった。彼女は抑えようもない反応にのけぞり、マーカスに体を押しつけた。
こんな経験は初めてなのに、すべてが自然なことのように思える――マーカスのキスも、熱い愛撫も。エロイーズの胸は、これまで存在することも知らなかった甘美な感覚をさらに求めてうずいた。
マーカスの指がビキニのボトムに無造作に滑り込んだとき、エロイーズは突然自分の奔放な情熱の行き着く先が怖くなって彼の胸を押しのけた。「だめ」
マーカスは頭をぐいと引いた。「まさか、じらしているわけじゃないだろうな。男をその気にさせてからかう女はごめんだよ」
「違うわ、そうじゃないのよ」マーカスにそんなふうに思われては耐えられない。「ただ……こういうことは一度も……だから……」エロイーズは恥ずかしさで赤くなった。二十九歳の世慣れた男性にどう説明すればいいだろう。彼女は心のうちを明かしすぎる目をまつげに隠して、つばをごくりとのみ下した。「私、初めてなの」
「初めて?」マーカスは驚きの声をあげた。「そんなふうには見えなかった」欲望にかげった目を丸くしたあと、疑わしげに細め、彼女の正直な表情や真っ赤になった頬を見るうち、彼は魅力的な唇を徐々にほころばせた。「そうか」
それ以後、マーカスは世慣れたセクシーな男性から優しく思いやりのある友達に一変し、エロイーズを貴婦人のように扱った。といっても触れることはやめられなかったが、滑らかな肌に軽く手を置くだけだった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「早くして、ぐずな妹ね。私たち、喉がからからなのよ」母の声に、十人ほどがプールサイドからエロイーズを振り返った。マーカスも含めて。
エロイーズは真っ赤になった。一瞬マーカスと目が合い、彼女はうなだれて前に進み出た。すると、魔法のようにマーカスが横に現れた。
「僕が運ぶよ。君みたいに美しい女の子は給仕するのではなく、されるものだ」それが始まりだった。
彼はテオの甥だと自己紹介し、泳ぎに誘った。その言葉に勇気づけられて、エロイーズはビキニの上に着ていた長いコットンのワンピースを脱いだ。トランクスの水着姿のマーカスはどんな女性も魅了するに違いなく、エロイーズも例外ではなかった。マーカスは彼女と話し、からかったりふざけたりして、パーティが終わるころには、彼女が十九歳の学生で婚約していないこと、姉のクロエと生まれて初めて外国で休暇を過ごしていることを聞き出していた。
エロイーズは彼に嘘をつきたくなかったが、母に親子だということをだれにも知られないよう強く言われていた。母と過ごせるなら、そんなことは微々たる代償だ。母がそれなりに愛してくれているのはわかっていた。祖父母の葬儀のあと、クロエはそれを証明した。両親が家を含む全財産をエロイーズに遺したことを気にもしなかった。エロイーズは心苦しさから、家を売った代金だけでも受け取るよう母を説得しようとした。それでも母は、利息を折半できるから共同名義で預金しようとまで言った。エロイーズはその言葉がうれしくて同意した。けれど母の死後までその口座には手をつけなかった。
夜も更けてついに帰る時間になると、マーカスはエロイーズをそっと抱き寄せてキスした。その瞬間、彼女は自分が恋に落ちたことを悟った。
翌朝十時、マーカスはオープンカーで現れて、エロイーズを島の反対側の海辺に連れていった。
「さあ、おいで」崖からわずか二、三メートル手前で車をとめて降りると、マーカスは助手席のドアを開けた。もう一方の手にバスケットと毛布をさげている。「ピクニックをしよう」
「ここで?」エロイーズは岩盤の露出した三メートル四方ほどの地面を見まわした。
「僕を信頼して」マーカスがにっこりし、エロイーズもほほ笑んだ。
垂直に近い崖に深い踏み段が刻まれ、手すりとして古びたロープが張り渡されている。エロイーズにとってこれほど恐ろしい散歩は初めてだった。やっと平らな砂地に降り立ったとき、脚はがくがく震えていた。マーカスはバスケットと毛布を白い砂の上に置いて彼女を腕に抱き寄せた。
「大丈夫かい?」
乱れた息を懸命に整えて周囲を見たあと、エロイーズはほほ笑んでいる彼を見上げた。「すばらしいところね」人影のない馬蹄形の砂浜の向こうに青い海がきらめいている。
ひと泳ぎしたあと、二人はハムやチキンサラダや焼きたてのパンを食べ、シャンパンを飲んだ。
「至れり尽くせりね」エロイーズは吐息をついて毛布に仰向けになった。最高に幸せな気分だった。
マーカスは片肘をついて体を支え、黒い目を楽しそうに輝かせた。視線が合うと、そこに別の光が宿り、突然、夏の澄んだ空気が緊張に揺らめいた。
「僕が君にしてあげたいのはこんなことじゃない」マーカスはかすれた声でささやき、人さし指で彼女の唇の輪郭をなぞった。「この唇に」指を激しく脈打つ喉に滑らせる。「このきれいな首に」指は胸の谷間に下りた。「このセクシーな胸に」
触れられた肌が焼けるように熱く、全身の神経が目覚めるのを感じた。エロイーズが彼の首に両手をまわしてしなやかな黒髪に指をからませると、マーカスが覆いかぶさってきた。彼がそっと唇を重ねたとき、電撃のような興奮に貫かれて、エロイーズはおののいた。さっき人さし指が触れたところを彼の唇がたどるにつれ、興奮はますます高まっていった。
マーカスが胸の谷間に顔をうずめる。いつの間にかビキニのトップはなくなっていた。彼はギリシア語で何かささやくと、胸の頂を口に含んだ。
とたんにエロイーズの体は燃え上がった。彼女は抑えようもない反応にのけぞり、マーカスに体を押しつけた。
こんな経験は初めてなのに、すべてが自然なことのように思える――マーカスのキスも、熱い愛撫も。エロイーズの胸は、これまで存在することも知らなかった甘美な感覚をさらに求めてうずいた。
マーカスの指がビキニのボトムに無造作に滑り込んだとき、エロイーズは突然自分の奔放な情熱の行き着く先が怖くなって彼の胸を押しのけた。「だめ」
マーカスは頭をぐいと引いた。「まさか、じらしているわけじゃないだろうな。男をその気にさせてからかう女はごめんだよ」
「違うわ、そうじゃないのよ」マーカスにそんなふうに思われては耐えられない。「ただ……こういうことは一度も……だから……」エロイーズは恥ずかしさで赤くなった。二十九歳の世慣れた男性にどう説明すればいいだろう。彼女は心のうちを明かしすぎる目をまつげに隠して、つばをごくりとのみ下した。「私、初めてなの」
「初めて?」マーカスは驚きの声をあげた。「そんなふうには見えなかった」欲望にかげった目を丸くしたあと、疑わしげに細め、彼女の正直な表情や真っ赤になった頬を見るうち、彼は魅力的な唇を徐々にほころばせた。「そうか」
それ以後、マーカスは世慣れたセクシーな男性から優しく思いやりのある友達に一変し、エロイーズを貴婦人のように扱った。といっても触れることはやめられなかったが、滑らかな肌に軽く手を置くだけだった。
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