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発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
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和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・イマージュ

魔法の瞬間
著: キャシー・ウィリアムズ 翻訳: 山根三沙発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレットみんなの評価 (未評価)
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著者プロフィール
キャシー・ウィリアムズ(Cathy Williams)
トリニダード・トバゴの出身で、トリニダード島とトバゴ島、二つの島で育つ。奨学金を得てイギリスに渡り、一九七五年エクスター大学に入学して語学と文学を学んだ。大学で夫のリチャードと出会い、結婚後はイングランドに暮らす。テムズ・バレーに住んでいたが、現在は中部地方在住。夫との間に三人の娘がいる。
トリニダード・トバゴの出身で、トリニダード島とトバゴ島、二つの島で育つ。奨学金を得てイギリスに渡り、一九七五年エクスター大学に入学して語学と文学を学んだ。大学で夫のリチャードと出会い、結婚後はイングランドに暮らす。テムズ・バレーに住んでいたが、現在は中部地方在住。夫との間に三人の娘がいる。
解説
■自分の中に抑えようのない衝動があることにリサは一人の男を知って、初めて気づいた。■今日は、リサにとって最高にわくわくする日になるはずだった。なぜなら、生まれて初めて海外旅行に出かけるのだから。冷たい雨の降るこのロンドンから、太陽あふれる南の国スペインへ。ところが、なぜか最悪の日になりつつあった……。雨は豪雨になり、あげくのはてに車にはねられてしまったのだ。怪我はたいしたことはなかったものの、せっかくの旅行に行けなくなった。アンガス・ハミルトンと名乗った車の持ち主は、ふつうなら、リサには知り合う機会もない上流階級の人間だった。怪我もよくなったころ、その彼からクルーズへの招待状が届けられた。もちろん断るつもりだった。上流の人々と過ごせるはずがない。それなのに、気がついたときには招待を受けていた。アンガスにかかると、慎重な私がどこかへいってしまう。衝動に身をまかせるなんて一番私らしくないことなのに……。
抄録
「証明ですって?」リサはきき返した。
二人の周囲にだけ影が落ちている。宵闇のせいか、アンガスの険しい顔立ちがやわらいで見えた。目はかすかにきらめき、唇は笑みをたたえたようにかすかにカーブを描いている。だが、それでも、その表情は謎めいていた。
「そうさ」アンガスはリサの手を放そうとはしなかった。彼の温かい指の感触に、リサの胸はざわめいた。彼は私にいったいなにを望んでいるのだろう? リサにはわからなかった。
「どういう意味かわからないわ」リサはささやくように言った。「私、本当に慣れていないのよ……つまり、こんな……」
「なにに慣れていないって?」アンガスは少し驚いたように言った。
いや、実は驚いてなどいないのだ。アンガスは手を引っこめようともしない。それが私を困惑させていることを知っていながら、私のようすを眺めて楽しんでいるのだ。まるで鼠をいたぶる猫のように……。
「もう中に入ったほうがいいんじゃないかしら?」
「どうして? 僕は君の招待主だよ。君はそういう相手とくつろいで会話ができないのかい?」
リサは神経質な笑い声をたてた。心臓は激しく高鳴り、体は熱くほてっている。リサは男性経験がなかった。これまで深い仲になった相手は一人もいない。うっとりするようなキスを交わしたこともなければ、燃えあがるような愛撫を経験したこともない。そう、今自分の中にあふれてきた熱い思いや、高波に翻弄されるかのような不思議な感情には、なんの備えもなかった。
「ただ……ちょっと寒くなってきただけよ」
「寒い? まだずいぶん暑いと思うけどね。それに……」アンガスは言葉を切り、リサの全身を眺めまわしてから、もう一度彼女の顔に視線を戻した。「君はちゃんと水着をつけているじゃないか」
アンガスがリサの体についてなにか言ったのは、これが初めてだった。彼女は必死で自分を落ち着かせようとした。
「さっきヨットで、キャロラインと仲よく話していたね」アンガスはけだるげな口調で言った。
リサは彼の指が手首の内側をそっと撫でるのを感じ、そのひどく親密なしぐさにまごついていた。
「彼女、なにを話していたんだい?」
「覚えてないわ」リサは視線を落とした。さっきから、不自然なまでにじっと体を動かさずにいる。ほんのわずかでも間違った動きを見せたら最後、とんでもないことが起こりそうな気がしたからだ。「それより、もうホテルに戻ったほうがいいと思うわ。だから、そろそろ手を放してもらったほうがいいんじゃないかしら」
「僕はその両方ともしないほうがいいと思うんだがね。となると、僕らは行き止まりってわけだ。僕は行き止まりが好きじゃないんだが」
沈黙が圧迫するように二人を包んだ。それに耐えきれず、リサはしぶしぶ口を開いた。「どうしても知りたいのなら言うけれど、キャロラインはあなたのことを心配していたのよ。あなたを守らなければならない、と言っていたわ」
「へえ? なにから守るっていうんだい?」
「私からよ」リサはかすれ声で言った。アンガスの方を見ようとはしなかった。こんなことを言わなければならないはめになって、不愉快だった。
アンガスはリサの手を放し、考えこんだような顔で彼女を見つめた。「ちょっとキャロラインと話をしたほうがよさそうだな。身内としてね」
「だめよ! やめて!」リサはみじめな気持でアンガスを見つめ返した。「面倒を起こしたくないの。それに、キャロラインはあなたのためを思って言ったのよ。私だって彼女の立場に立ったら、同じことをするかもしれないわ」
「君がそんなことをするとは思えないな」アンガスはあっさりと言った。「キャロラインの困ったところは、どうしようもなく男好きのところでね。年中、男から男へと蝶のようにとびまわっているんだ。おまけに、ほかの女性もみんな自分と同じように考え、同じように行動するものと思いこんでいる。婚約解消で受けた心の痛手を癒すためという口実でこのクルーズに加わったんだが、その婚約解消もこの二年間でもう三度目になる」
「それ以上言わないで……」
「キャロラインの立場に立ったら自分も同じことをしたかもしれないと言ったが、君はぜんぜん彼女に似てないよ。そうだろう?」
「そうね」リサは口ごもった。「彼女はとても美人ですもの」
「外見のことを言っているんじゃない」アンガスはいらだたしげに言った。「君は男から男へととびまわったりしないだろう?」
「ええ」
「恋人はいたのかい?」
リサはじっと見つめるアンガスの視線を感じた。「あなたには関係のないことでしょう?」自分がまだバージンだと思うと恥ずかしくてたまらず、顔がほてってくる。
「恋人はいたのかい?」
リサは一瞬ためらった。このまま黙っていたら、恋人はいなかったと認めるようなものだ。そこで弁解するように言った。「私、そういう関係をまじめに考えるほうなの。だから、これまではだれも……もちろん、ボーイフレンドくらいは何人もいたわよ!」
「当然だ」
リサはさっと立ちあがって歩きだした。侮辱され、恥をかかされたような気がしていた。あふれそうになる涙を必死でこらえると、目がちくちくした。「“アレ”を経験するよりも、大人になることのほうが大切だわ!」言い返しながらくるりと振り向いたリサは、アンガスがすぐうしろについてきていることに気がついて、びっくりした。
「もちろん、そうだ」
「それから、いちいち同意するのはやめて! あなたが保護者ぶっていることくらい、ちゃんとわかっているわ。私はばかじゃないのよ!」
*この続きは製品版でお楽しみください。
二人の周囲にだけ影が落ちている。宵闇のせいか、アンガスの険しい顔立ちがやわらいで見えた。目はかすかにきらめき、唇は笑みをたたえたようにかすかにカーブを描いている。だが、それでも、その表情は謎めいていた。
「そうさ」アンガスはリサの手を放そうとはしなかった。彼の温かい指の感触に、リサの胸はざわめいた。彼は私にいったいなにを望んでいるのだろう? リサにはわからなかった。
「どういう意味かわからないわ」リサはささやくように言った。「私、本当に慣れていないのよ……つまり、こんな……」
「なにに慣れていないって?」アンガスは少し驚いたように言った。
いや、実は驚いてなどいないのだ。アンガスは手を引っこめようともしない。それが私を困惑させていることを知っていながら、私のようすを眺めて楽しんでいるのだ。まるで鼠をいたぶる猫のように……。
「もう中に入ったほうがいいんじゃないかしら?」
「どうして? 僕は君の招待主だよ。君はそういう相手とくつろいで会話ができないのかい?」
リサは神経質な笑い声をたてた。心臓は激しく高鳴り、体は熱くほてっている。リサは男性経験がなかった。これまで深い仲になった相手は一人もいない。うっとりするようなキスを交わしたこともなければ、燃えあがるような愛撫を経験したこともない。そう、今自分の中にあふれてきた熱い思いや、高波に翻弄されるかのような不思議な感情には、なんの備えもなかった。
「ただ……ちょっと寒くなってきただけよ」
「寒い? まだずいぶん暑いと思うけどね。それに……」アンガスは言葉を切り、リサの全身を眺めまわしてから、もう一度彼女の顔に視線を戻した。「君はちゃんと水着をつけているじゃないか」
アンガスがリサの体についてなにか言ったのは、これが初めてだった。彼女は必死で自分を落ち着かせようとした。
「さっきヨットで、キャロラインと仲よく話していたね」アンガスはけだるげな口調で言った。
リサは彼の指が手首の内側をそっと撫でるのを感じ、そのひどく親密なしぐさにまごついていた。
「彼女、なにを話していたんだい?」
「覚えてないわ」リサは視線を落とした。さっきから、不自然なまでにじっと体を動かさずにいる。ほんのわずかでも間違った動きを見せたら最後、とんでもないことが起こりそうな気がしたからだ。「それより、もうホテルに戻ったほうがいいと思うわ。だから、そろそろ手を放してもらったほうがいいんじゃないかしら」
「僕はその両方ともしないほうがいいと思うんだがね。となると、僕らは行き止まりってわけだ。僕は行き止まりが好きじゃないんだが」
沈黙が圧迫するように二人を包んだ。それに耐えきれず、リサはしぶしぶ口を開いた。「どうしても知りたいのなら言うけれど、キャロラインはあなたのことを心配していたのよ。あなたを守らなければならない、と言っていたわ」
「へえ? なにから守るっていうんだい?」
「私からよ」リサはかすれ声で言った。アンガスの方を見ようとはしなかった。こんなことを言わなければならないはめになって、不愉快だった。
アンガスはリサの手を放し、考えこんだような顔で彼女を見つめた。「ちょっとキャロラインと話をしたほうがよさそうだな。身内としてね」
「だめよ! やめて!」リサはみじめな気持でアンガスを見つめ返した。「面倒を起こしたくないの。それに、キャロラインはあなたのためを思って言ったのよ。私だって彼女の立場に立ったら、同じことをするかもしれないわ」
「君がそんなことをするとは思えないな」アンガスはあっさりと言った。「キャロラインの困ったところは、どうしようもなく男好きのところでね。年中、男から男へと蝶のようにとびまわっているんだ。おまけに、ほかの女性もみんな自分と同じように考え、同じように行動するものと思いこんでいる。婚約解消で受けた心の痛手を癒すためという口実でこのクルーズに加わったんだが、その婚約解消もこの二年間でもう三度目になる」
「それ以上言わないで……」
「キャロラインの立場に立ったら自分も同じことをしたかもしれないと言ったが、君はぜんぜん彼女に似てないよ。そうだろう?」
「そうね」リサは口ごもった。「彼女はとても美人ですもの」
「外見のことを言っているんじゃない」アンガスはいらだたしげに言った。「君は男から男へととびまわったりしないだろう?」
「ええ」
「恋人はいたのかい?」
リサはじっと見つめるアンガスの視線を感じた。「あなたには関係のないことでしょう?」自分がまだバージンだと思うと恥ずかしくてたまらず、顔がほてってくる。
「恋人はいたのかい?」
リサは一瞬ためらった。このまま黙っていたら、恋人はいなかったと認めるようなものだ。そこで弁解するように言った。「私、そういう関係をまじめに考えるほうなの。だから、これまではだれも……もちろん、ボーイフレンドくらいは何人もいたわよ!」
「当然だ」
リサはさっと立ちあがって歩きだした。侮辱され、恥をかかされたような気がしていた。あふれそうになる涙を必死でこらえると、目がちくちくした。「“アレ”を経験するよりも、大人になることのほうが大切だわ!」言い返しながらくるりと振り向いたリサは、アンガスがすぐうしろについてきていることに気がついて、びっくりした。
「もちろん、そうだ」
「それから、いちいち同意するのはやめて! あなたが保護者ぶっていることくらい、ちゃんとわかっているわ。私はばかじゃないのよ!」
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