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魔法のランプ

魔法のランプ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・テンプテーション
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

 ■このランプは本当に願いをかなえてくれるの? それなら、あの人の愛をください。
 ■「財布を拾ってくださったお礼に、どちらかをさしあげるわ――五百ドルの現金か、それとも三つの願いをかなえてくれる魔法のランプのどちらかを」ミセス・ハニカットがそう言ったとき、バージニアはもちろん現金を選ぶべきだった。アルバイトをしながら調理師学校に通う生活はとても苦しく、支払いができないために電話も止められているのだから。でも、なぜか心は古いランプのほうに傾いていく。ランプの魔力を信じきっている柔和な老婦人を傷つけたくないし、それに何より、彼女の息子ワイルダーの表情が気に入らない。コンピューター会社の社長の彼は、おとぎ話なんて信じていない。どうせきみも金を選ぶんだろう、という目で挑戦的に見つめてくる。彼の鼻をあかしたくて、バージニアはとっさに答えていた。「わたし、ランプをいただきます」ああ、なんてこと……。

抄録

 バージニアは、彼の指の感触よりもいまの言葉に意識を集中しようとした。「わたしに財布を拾わせようとお母さまが仕組んだってこと?」
 ワイルダーはにっこり笑った。「きみもあるいはと思っていたんだね?」
 バージニアはうなずいた。「ええ。でも、何をどうすればそんなことができるのか見当がつかないわ」
 「ぼくにも見当はつかないが、おふくろはあれでなかなか知恵がまわるんだ。何か方法を見つけだしたとしても不思議はない」ワイルダーはバージニアの目をのぞきこんだ。「前におふくろと会ったことはないのかい?」
 この質問には即答できる。「ないわ」
 車内がしんと静まりかえった。バージニアの耳に自分の心臓がどきどきと高鳴っている音が聞こえてきた。わたしは待っている……何を? 緊張は高まる一方だ。
 もうさよならを言って降りるべきだと考えたちょうどそのとき、ワイルダーの手が肩から離れてそっと頬を包みこんだ。「きみはほんとうにきれいだな」
 バージニアははっとしつつも言った。「気がつくまでに少しかかったわね?」
 ワイルダーは心をとろかさんばかりの笑顔になった。「そうだね。きみの美しさは微妙なんだ。知らぬ間に忍び寄ってきて男をとりこにする」
 薄闇の中だと、思ったことを言うのもさほど難しくはなかった。「わたしの美しさはもっと強烈だと思っていたけど。あなたの頭にがつんとくるぐらいにね」自分の声ながら、かわいた声だ。口の中もかわいている。
 ワイルダーは彼女の唇を指先でそっとなぞった。「きれいな唇だ」
 「ありがとう。亡くなった母が聞いたら喜ぶわ。この口はわたしが作ったんだとよく言っていたから」
 まるで無人島に二人だけでいるような気分だった。自分以外のただひとりの人間が横に座っている。バージニアの呼吸は浅く、脈は速くなっていた。
 「きみはほんとうに美しい」彼のかすれたささやきが体に熱くしみとおってくる。
 「ありがとう。あなたもハンサムだわ」せめてお世辞を返すぐらいのことはしなくては。ましてただのお世辞でなく、ほんとうのことなのだから。
 彼は口もとがほころびそうになるのをこらえているような顔で言った。「ありがとう」親指をバージニアの顎に押しあて、唇をわずかに開かせた。「キスしていいかい?」
 正直は最良の策。「いいわ」バージニアは消え入りそうな声で答えた。
 二人は互いに顔を寄せた。ゆっくりと唇が重なりあった。まるで電気が流れているような最高の感触だ。口からもれた小さな吐息を彼の唇が吸いとる。
 こんなキスは生まれて初めてだ。唇が触れあった瞬間から心は雲に乗って空高く漂いだしている。バージニアは思わず彼の肩につかまった。バランスを崩し、パラシュートなしで空から急降下していくような気がしたのだ。地面と自分のあいだに存在するのはワイルダーだけ。
 彼はバージニアを膝に抱きあげて口づけを深めた。舌を彼女の口の中で縦横に躍らせ、愛の行為をまねた無言の誘いかけにこたえさせようとする。彼女の顔を両手にはさんで傾け、いっそう深く舌をからみあわせて……。
 バージニアは抗うことなく、ワイルダーが求めるままに応じた。彼の肩をつかみ、首筋から背中にと手を這わせ、かたい筋肉の感触を確かめる。すばらしい感触だ。
 低いうめき声が聞こえ、それが自分でなくワイルダーの口から出たものだと気づくまでに一瞬の間があった。彼が体を引き、バージニアも不本意ながら身を離した。
 ワイルダーは深く息をつき、汗で湿った額をバージニアの額に押しあてた。「ごめん。こんなつもりはなかったんだ」ようやくしゃがれ声で言う。
 バージニアも声をうわずらせて笑いながら言った。「わたしもよ」
 ワイルダーは両手で彼女のウエストをはさんで軽軽と助手席に戻した。「ほんとうにごめん。ぼくはただ……」
 バージニアは顔にかかった髪を払いのけ、深呼吸して心にもないことを言った。「別に謝ることなんかないわ。気にしなくていいのよ」
 「悪かった」ぶっきらぼうな口調だ。本心から後悔しているらしい。
 「わたしこそ」体は熱いのに、心は急速にひえていく。恥ずかしさに気持がふさいでいた。
 彼は片頬だけでにっと笑った。「きみと知りあえたのはほんとうに風変わりな経験だったよ。実に新鮮だった」
 「ありがとう。あなたのほうもそこらへんにいる男性とはちょっと違うわ」バージニアは平静を装いながら、床に落ちていたバッグを手探りでとった。「お母さまからのプレゼントにも感謝しているわ。わたしがランプを選んだこと、あまり気に病まないでね。わたしが自分で選んだのだから、人を責めるつもりはないわ」
 ワイルダーの笑い声が車内に響き渡った。「黙っていたら、ぼくに一生罪悪感を背負わせられたのに。ひょっとしたら良心をなだめるために、きみに五百ドルの小切手を渡していたかもしれないよ」
 「あら、いまからでも遅くないわよ。それが悩める友人の助けになるのなら、喜んで受けとるわ」
 「悩める友人というのはどっちのことかな? ぼく、それともきみ?」
 「両方よ」
 「だが、ぼくはもうきみのおかげでずいぶん気が楽になったよ」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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