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怪奇現象

怪奇現象

著: 新倉イワオ
発行: 河出書房新社
価格:473円(税込)
10ポイント還元
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 新倉 イワオ(にいくら いわお)
 1924年生まれ。民放局の番組制作プロデューサー、ディレクターを経て、60年、放送作家に転向。68年以来、自らの心霊体験を契機に心霊界に興味を抱き、広く国内・外の取材にあたる。現在(財)日本心霊科学協会理事、新倉イワオ談話室・ENの会を主宰。著書には、小社の『心霊怪奇・あなたの知らない世界』などがある。

解説

 すすり泣く仏壇、死の訪れをかぎとる女性。常識を超えた異様な現象と戦慄の体験は、誰のしわざか……心霊番組『あなたの知らない世界』での、数多くの取材体験や視聴者からの体験談を集めた衝撃の書、第二弾!

目次

I ◆取り憑かれたら逃れられない──
 成仏できぬ怨念が戦慄の「霊障」を引き起こす


 墓石の祟(たた)り
 怨霊留置所
 迷子になった遺骨
 忘れ去られた供養
 すすり泣く仏壇
 形見のフォーマルスーツ
 喋る日本人形
 電話ボックスの怪


II ◆決して信じてもらえぬ事実──
 私は霊に引きずられ「異次元世界」に迷い込んだ


 戦場の幻
 死者に呼び出された女
 霧に包まれた少女
 燃えさかる野火
 お礼に来た死者
 遅すぎた帰郷


III ◆いつまでも耳から離れない──
 今夜も、あの世からの不吉な「予告」に襲われる


 火事を予告する主婦
 死の訪れをかぎとる女
 無縁仏
 憑依霊の演奏会
 裁(さば)かれた霊能力
 夢のお告げ
 姑(しゅうとめ)の生霊を呼んだ嫁

抄録

 その夜、午前一時を少し回って、家族が寝静まったころ、二階の自室から延明君が転がるように階段を降りてきた。その騒々しい音で家族全員が目をさまし、青ざめて興奮している延明君を取り囲んだ。
 「延明、延明どうしたの?! 何かあったの?」
 という母親の声に、しばらくは口もきけなかった延明君だったが、ようやく事のなりゆきを説明しはじめた。
 「僕は完全に熟睡してたと思うんだけど、脚を氷みたいに冷たいものが引っぱるんで目がさめた。僕の足をぐいぐい引っぱるんだ。足が布団《ふとん》から出てたせいで冷えたのかと思ったけれど、なんともいえない嫌な寒気がして、そのうちに胸が苦しくなった」
 高野さんが言葉をはさんだ。
 「今は五月だぞ。気のせいだッ」
 「違う、気のせいじゃないッ。やっとの思いで布団に足を入れたんだ。すると今度は、壁に向かって寝ている僕の背中の方に誰かがいる気配がするんで、思いきって反対側をふり返ってみたら……」
 延明君は恐怖の表情で声をつまらせ、話が先にすすまない。
 「で、どうしたのよ? 何かあったの? 何か見えたの?」
 姉がせかせる。
 「いたんだよ!! 見たんだよ!! 女の人が……、洋服まで覚えている、若い女の人が、ベッドの横に座って、ジーッと僕を見ていたんだ」
 やれ夢だ、幻覚だと家族の意見は喧喧諤諤《けんけんがくがく》。しかし、延明君は絶対に夢や幻覚ではないといいはった。
 毎月毎月、十八日に決まって起こる父親の悪酔い、そして長男延明君の見た女性の影……。いったい何が起こっているのか、ただならぬものを感じた高野さんは、霊能者M氏の力を借りて、霊視してもらうことにしたのだった。
 そして数日後、霊能者M氏は高野家を訪れた。
 高野家の玄関を入るなり、M氏は小声で囁いた。
 「これは大変なお宅ですよ」
 一家の夕食をとる居間を一巡してから、延明君が女性の幽霊を見たという部屋に案内する。物理現象として、姿を現した場所の方が、より霊との交信がしやすくなるためである。
 家族全員が二階の長男の部屋に集合して、いよいよ霊視がはじまった。霊能者の口を通して、次々と霊界からの伝言が伝えられる。
 その内容は、次のようなものであった。
 ●私は女性、二十一歳で他界した。
 ●私の眠っている墓地は整地され、今はマンションが建っている。
 ●私の墓石は新しく建立されたが、以前からあった墓石はどうしたのか? それは、この家の者が調べてほしい。この家に関係がある。
 高野家の人たちには寝耳に水であった。
 とはいえ、新築した家である。材木も、整地のために使った土も、どこから運んだものかもわからない。霊能者が告げたとおりだとすれば、これは徹底的に調べてみなくてはならないと、さっそく建築業者に調査を依頼した。
 また、その女性がどこの誰かはわからないが、まず無縁仏として、家族一同で供養することにした。
 それにしても、墓石がこの新築の家に関係があるとするならば、いったいどこに使われているのか? 家屋の土台かもしれぬ。砕《くだ》いて壁の中に混ぜられているのかもしれない。ひどく面倒な事になったものである。もう少し時間をかけて探ぐるしかないという結論が出された。
 ひととおりの供養も終わって、M氏が高野家を辞去することになった、その時である。彼は大変なことに気がついた。玄関前に敷かれた砂利が、靴の底に小石を踏みつけた時のように感じられたのだ。
 しゃがみ込んで、その敷石を一つ拾ってみると、
 「高野さん、この石は墓石じゃありませんか?」
 一瞬、一家は息を飲んだ。恐る恐る足下にある小石のいくつかを掌《てのひら》に載せてみると、文字らしいものが刻まれた少し大きめのものも発見された。

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