マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション文芸日本文学名作小説

檸檬・城のある町にて

檸檬・城のある町にて


発行: オンライン出版
価格:430pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 梶井 基次郎(かじい もとじろう)
 明治34年、大阪に生まれる。東京帝大英文科中退。東大在学中の大正14年、同人誌『青空』を創刊、「檸檬」を発表。以後、同人誌を中心に「城のある町にて」「桜の樹の下には」などの詩的作品を発表し続けた。昭和7年、肺結核のため、31歳の若さで逝去。

解説

 暗い現実に傷つき、病魔と闘いながら真剣に誠実に生きた、芸術即生命、生命即芸術の作品は、繊細鋭敏な感受性とたくましい文体によって、退廃を描いて清澄、衰弱を描いて健康な近代知識人の諸特徴を見事に表明する。「檸檬」「城のある町にて」「雪後」「Kの昇天」「冬の日」「桜の樹の下には」「冬の蠅」「ある崖上の感情」「闇の絵巻」「交尾」「のんきな患者」「瀬山の話」「海」「温泉」の必読作品を収載。

目次

檸 檬
城のある町にて
雪 後
Kの昇天
冬の日
桜の樹の下には
冬の蠅
ある崖上の感情
闇の絵巻
交 尾
のんきな患者
瀬山の話

温 泉

抄録

 「あ、そうだそうだ」その時私は袂(たもと)の中の檸檬(レモン)を憶い出した。本の色彩をゴチャゴチャに積みあげて、一度この檸檬で試してみたら。「そうだ」
 私にまた先ほどの軽やかな昂奮(こうふん)が帰って来た。私は手当たり次第に積みあげ、また慌(あわただ)しく潰(つぶ)し、また慌しく築きあげた。新しく引き抜いてつけ加えたり、取り去ったりした。奇怪な幻想的な城が、そのたびに赤くなったり青くなったりした。
 やっとそれはできあがった。そして軽く跳(おど)りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る檸檬を据えつけた。そしてそれは上できだった。
 見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の諧調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンとさえかえっていた。私はほこりっぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。私はしばらくそれをながめていた。――
 不意に第二のアイディアが起こった。その奇妙なたくらみはむしろ私をぎょっとさせた。
 ――それをそのままにしておいて私は、なにくわぬ顔をして外へ出る。――
 私は変にくすぐったい気持がした。「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」そして私はすたすた出て行った。
 変にくすぐったい気持が街の上の私をほほえませた。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾をしかけてきた奇妙な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。