『たまニャン』さんのレビュー


堕つればもろとも 著: 宮緒葵 画: 亜樹良のりかず


★★★★☆ 4
姫に忠実なワンコが、夜だけ野獣になって襲いかかるという話は面白くて、一気に読み終えることができましたが、後から気になる突っ込みどころが多くて、評価に悩む。そもそも、国が亡ぶ寸前まで追い詰められた桂国、疑似平安時代的な描写のせいもあるんだろうけど、危機感が全然無い。他国に攻められているなら、こんなにのんびりしてはいられないし、国全体に緊張感があると思うのだが。奴隷上がりのひとりの男に命運を託さざるを得ない危機的状況なら、褒美として嫁がせる姫には、もっと厳しく実情を教え、救国の英雄の機嫌を絶対に損ねないようにと言いくるめるような気がする。傭兵的なワンコ以外の武将がみんな役立たずって、国として終わってる。そんな国情なら、いくら男同士が嫌といっても、王族に生まれて相応の暮らしをさせてもらったからには、自分の感情を全てのみこむくらいの覚悟を、姫には持ってほしかった。戦に巻き込まれる庶民の苦しみを分っているのだろうか。ヤダヤダ言ってる子供にしか思えない。平和時ならそれも有りだろうけど、滅びの瀬戸際なのだから。そういう世界観の作り込みの甘さが気になってしまった。あと、前半から後半へと続く転換点は、さすがに反則じゃないかとも思う。とはいえ、全部好みの問題。何も考えずに楽しみたい人にはオススメ。 (2014-10-15)


フェア・ゲーム 著: ジョシュ・ラニヨン 画: 草間さかえ 翻訳: 冬斗亜紀


★★★★☆ 4
レビューの高評価が気になって購入。一晩で読み終えるくらい面白かった。基本的にはサスペンスが主体。ラブ要素は添え物で前半部分が進みのですが、後半でラブが増えてきました。惜しいのは、そのせいで後半のサスペンス部分に緊張感が無くなって、犯人がシリアルキラーと言われてもいまいち真実味が無くなってしまったこと。自殺か事件かで揺れている前半の方が、ずっと緊迫感があった気がします。ロマンスがメインなら、サスペンスはこれくらいで良いんだろうけど、前半があまりにもリアルな雰囲気で進んで、BLということを忘れていたくらいで。被害者の内面にここまで迫るなら、犯人にももっと強い動機や怖さの描写が欲しかった。最後の最後で、「何だ、おまえか」という呆気ない終わり方に感じました。男同士のラブは良かった! ちょっと物足りないくらいですが、このくらいの方がストーリーが崩れなくていいのかも。二人が別れることになった過去がわかりにくかったので、そこのところをもうちょっと掘り下げてほしかった。あとがきにも書かれていましたが、日本には無い群像劇的な話なので、主人公カップルの他にも、ちゃんと人々の生活が感じられるところが良かったです。日本のBLの多くは二人の世界で閉じちゃって、いろいろ疑問が出てくることも多いんですが。全体的に満足の1冊となりました。 (2014-10-09)


天に歌い 大地と踊る[下] 著: 歌堂マリア 画: Tomoe


★★★☆☆ 3
他のレビューにあるような、上巻より酷い事っていうのは、あんまり感じなかった。サイラはいろいろやられちゃってるけど、精神的には上巻の方がずっと辛い気がします。凌辱シーンは他作家にもよくあることだし。上巻はせっぱ詰まった危機感がヒシヒシと伝わってきて、物語として良かった。ただ下巻は、全体的に書きたい事が散漫になっている感じが強くて、この作家さん独特の引きこまれ感が少なかった。田舎者の主人公サイラは、都会の生活に慣れなくて右往左往。基本ストーリーが政治的陰謀であるのに、大人の事情には全く疎いサイラは、真実を見抜けず、騙されっぱなし。頼りになるはずのライゼルも鬱屈としていて、安心感どころか、不安要因だし。何よりこのライゼルに危機感が無いところが、イラっとします。親友と喋ってる暇があるなら、サイラを心配しろ!と思うわけです。次作を先に読んでいるせいで、ヘタレっぷりが目に余る。ホントに同じ作家なのかと疑いました。ファンタジー作品としても、下巻はつめが甘い。世界観を消化しきれず、説明文的になっているのがもったいない。今回は叱咤激励を込めて星3つ。二作目を先に読んで良かったかも。これだけだったら、次、買うかどうかというところです。次作が非常に良かったことを考えると、いろいろ反省したのかなとも思いました。そういう意味では、レビューの酷評も作家の糧になったということでしょう。 (2014-09-29)


天に歌い 大地と踊る[上] 著: 歌堂マリア 画: Tomoe


★★★★★ 5
レビューの酷評に購入をためらっていました。上巻を読み終わった感想は、あまりにも不当に低い評価だと。腹立たしいくらいです。BLというにはラブ要素が少ないし、ストーリー的に重過ぎる。どうしてこれをデビュー作にしてしまったのか。でも物語としては文章力も確かだし、しっかり作られている。星1つとか個人的にありえない。吸引力が凄まじい作家さんなので、悲劇が起こると自分もダメージを受けて、気分が落ち込みます。お気楽BLファンタジー好きには絶対向かない話。ラブラブ大好きとかにもオススメしません。牧歌的で平和な生活をしていたサイラが、生き地獄に叩き落とされる。主人公は作者に贔屓される事が多いけど、この作家さん、非情に徹している。だからリアリティが出る。残酷な中世的世界で、無邪気だったサイラが、人間の欲望と醜さに打ちのめされ、もがき苦しみ、それでも生きることを諦めずに頑張る物語。天国と地獄、光と闇の対比はすばらしく、絵画的、音楽的だとすら思いました。中だるみがあって星4つと思うのですが、昔からのファンに見捨てられてる感じなので、次作を書いてくださった作者に敬意を表して、星5つ。この世界を創ってくれてありがとう。 (2014-09-21)


狼の遠き目覚め 著: J・L・ラングレー 翻訳: 冬斗亜紀 画: 麻々原絵里依


★★★★★ 5
最初に謝ります。ごめんなさい。作家さんの実力は1作品で評価しちゃダメだなと思いました。前作を酷評してしまいましたが、こっちはもの凄く良かった。ポロポロ泣きました。レミの健気さ、可哀想さに。前作ではあんなにヤな奴だったのに。全体的に文章もスムーズで、翻訳された方が変わったかと確認したくらい読みやすかった。全体的にシリアスなんだけど、主人公カップルが相思相愛な感じで、Hシーンも色っぽかったです。SMといってもハードじゃないし、信頼関係が感じられて良かった。こっちは文句なくオススメです。レミの弟スターリング少年も可愛いし、次作は彼のカップリングでしょうか。お相手はあの人? 非常に気になります。ただ、本編に関係あるような、無いようなですが、レミの下着「ジョックストラップ」って何だろうとググったら。写真画像見て、ぶっ飛びました。マジか! エロすぎ! 妄想がさらに広がりました。知らない人は検索をオススメします。 (2014-09-19)


狼を狩る法則 著: J・L・ラングレー 翻訳: 冬斗亜紀 画: 麻々原絵里依


★★★☆☆ 3
人外モノのBLをとにかく読みたくなって購入。海外の作家さんなんて初めてで、どういうものかと興味を持ちました。読み始めて早々、強烈な既読感。獣医さんが傷ついた人狼を助けて、実はその獣医さんも人狼で、お互い運命の番でって、どっかで読んだ気が?サスペンス要素はあるものの、盛り上がりはなく、ひたすら主人公二人がだらだら、ラブラブと発情しまくりなお話。家族との不和も丸くおさまり、二人の関係も変化が無く、正直途中で飽きました。期待していただけにガッカリ。ただ、別カップルの話はちょっと気になる。なので星ひとつ追加です。 (2014-09-18)


猛る獅竜と永遠の契りを[下] 著: 歌堂マリア


★★★★★ 5
手と目を休めたかったのですが、先が気になって読んでしまいました。後編のイラストも美しくて、期待大だったからかもしれないけど。でも、とにかく予想を裏切る展開でした。びっくりしながら、物語に巻き込まれて、読み終えた後はしばらく呆然自失。現実に戻るのに苦労しました。ひとつの出会いが、国を揺るがす大事件へ。過去の因縁が蘇り、頼れるグウィンザは消え、エリュイは打ちのめされる。恋心を引き裂かれながら、全てを受け入れ、真実を見つけたエリュイは綺麗でした。愛しているから秘密にしたグウィンザと、愛しているから全てを知って欲しいと願うもう一人の男と。個人的にはザグレスが可哀想でした。彼が幸せになれなかったから、エリュイが生まれた。そういう事なんだろうな。 (2014-09-11)


猛る獅竜と永遠の契りを[上] 著: 歌堂マリア


★★★★★ 5
イラストがとても綺麗だったので購入してみました。BLやラノベでこういう絵って見かけないので、ちょっと珍しい。初めて買う作家さんでしたが、イラストの雰囲気にぴったりの文章で、文章量もボリュームたっぷりです。BLだと思って買ったんですが、海外の翻訳ファンタジーみたいな重厚さで、最初はちょっととまどいました。あっさりとしたBLファンタジーを読みたい時には不向きかも。独特の世界観と重層的なエピソードで、謎が謎をよんで、どんどん引きこまれました。時間を忘れて読んだのは久しぶりです。BLらしいシーンもあるんですが、いらないかも。それくらい先の展開が気になる。でも男らしい攻めに愛される主人公は綺麗で、ドキドキします。攻めのグウィンザは大人で、頼れる男なんですが、そばにいるエリュイのせいで、だんだんおかしくなってます。つづきが気になります。でも長いので、スマホをめくる手と目が疲れました。できれば電子書籍ではなく本で読みたかったです。 (2014-09-10)