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和書>小説・ノンフィクションボーイズラブ小説短編集

月丘くらら傑作選2

月丘くらら傑作選2


発行: ぶんか社
レーベル: ぶんか社BLノベル シリーズ: 月丘くらら傑作選
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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解説

 美術部の美山弓は華奢で可愛い男子を大好物とする童貞キラー。子猫のように従順な美少年を好むSの弓が好みとは真反対のデカくて威圧的で視界に入るだけで鬱陶しい野球部員・菊池のことが気になるようになり……。過激な性春ラブストーリー。……『眩み雨』。
 その他、弓と菊池のその後を描いた『眩み雨second』や『「さよなら」も云えない』『灯台岬』を収録した傑作選第2弾。
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

目次

「さよなら」も云えない
眩み雨
眩み雨 second
灯台岬

抄録

 グラウンドの隅で一心不乱にバットを振り続ける、靄の中に立つその背中を見つめる。
「なんだ」
 手を止めて、菊池が振り返った。
「いつからここにいるの」
「お前に関係ねえだろ」
「そうだね」
「何しに来た」
「別に」
「俺を笑いにきたんなら、帰れ。今日はお前と言い合いする気分じゃねえ」
「……別に、そんなんじゃないよ」
 そんなんじゃない、と弓が言い終わる前に、菊池はまた素振りを始めていた。
 雨は上から圧力をかけ、濡れたユニフォームは肌に張り付いて動きづらそうだった。それを吹き飛ばすように、菊池は荒々しくバットを振る。
 振って、振り続けることで、彼は胸に溜まった感情を発散させているんだろうか。出来ているんだろうか。
 弓の目には、出来ていないように見えた。
 振れば振るほど、苛々は募っているのではないか。
「おい」
 再び、菊池がバットを下ろした。
 切れ長の瞳が弓を捉える。
「お前も、俺のことを馬鹿だと思うか。レギュラー取れなかったくらいで荒れて喧嘩して、停学くらって」
「さあ。馬鹿だとは思う」
「だよな……」
「でも、僕が菊池だったとしても、喧嘩して停学になってたと思う」
 弓の言葉に、菊池は僅かに目を見開いた。
 下ろしたバットの柄の先端に頭をつけ、ハハハ、と力ない笑い声をあげた。
「普段馬鹿にされてるお前に慰められるなんてな……。そんなに俺が惨めに見えたか? 惨めだよ、自分が情けない。引退する前に退部だってさ。俺の三年間はなんだったんだ、他のこと全部ほっぽって野球しかやってこなかったのに。こんな終わり方ありかよ」
「…………」
 本当に馬鹿だね、と一言言えば済む話だが、弓はそれを口にしなかった。
 毎日毎日野球だけやって、他のことは見えなくて、怒ってばかりいる鈍感男。
 それでも一生懸命野球をやってたことは知っているから、馬鹿の一言で片付けるのはやめた。
 弓は更に歩を進め、菊池の間近に立った。
「同情か?」
 傘を差し出した弓に向かって、菊池が顔をあげて言った。
「そうだよ」
「傘なんて、今更差したって意味ねえ。いらねえよ」
「そう。じゃあ僕もいらない」
 美術室で鉛筆を床に落としたのと同じように、まるで差していることに飽きたと、手の力を急に抜き、弓は傘を投げ捨てた。
「バカ、お前!」
 慌てた菊池が傘を拾い上げ、弓の頭上に掲げた。しかし引っ繰り返って内側も濡れてしまった傘からは、弓に向かって雫が降り注ぎ、弓自身もほんの少し傘を手放しただけでびしょ濡れになってしまっていた。
「あーあ、濡れちまって……。なにやってんだ、バカだな」
 いきなりの弓の行動に眉を寄せ、少しだけ優しい声で濡れたワイシャツの肩の上に、菊池が手を置く。
「風邪引いちまうぞ。早く帰れ。帰ってすぐ風呂入って温まれ」
 それには答えず、弓は肩に乗った手に自分の手を重ねた。
 菊池に身を寄せ、胸に顔を埋める。
 顔は見ずとも、菊池が動揺したのがわかった。
「お、おい」
 背中に腕を回して、髪の毛をこすり付けるように、頭を動かした。熱い息を胸に吐く。
 菊池の心臓は、早鐘を打っている。
「寒い」
「ほ、ほ、ほら、言わんこっちゃねえ。帰れよ。俺にくっついてたって、服濡れてんだから暖かくなんかなんねえぞ」
「そうかな」
 瞬間、菊池の腰が引けた。が。弓が抱きついているので、身体は離れなかった。
「ど、どこ触ってんだよ!」
「勃ってるね」
 弓は囁いて、股間に触れた手をゆっくり動かした。
「やめろって……」
「どんどん堅くなってる」
 上から指の腹で数度擦っただけで、布地の上からはっきり形が判るくらいに、菊池は主張していた。
「すごい……」
 その感触に自然に喉が鳴る。ベルトを緩め、ズボンの中から菊池自身を取り出そうとした。
 すると、言うだけで抵抗を示さなかった菊池が弓の腕を掴んで、行動を阻止した。
 恐い顔で弓に迫る。
「どういうつもりだ」
「どうって、これからすることを言ってからやった方がいいの?」
「そ、そういうことじゃねえよ! お前……俺に同情してんのか。慰めるために」
「同情? 同情だけでセックスなんて、僕はそんな慈善の精神は生憎持ち合わせていないよ。自分がしたいからするだけ」
 菊池のセリフをぶった切り、弓は突き放すように言い放った。
「したいから……」
 理解できないという顔をして、菊池はしばしフリーズした。
「……でも、お前……。聞いた話じゃ、可愛い幼いタイプの童貞食いが好きとかなんとか」
「うん、趣味だよ」
「さっきだって、そんな感じのやつに手紙貰って嬉しそうにしてたじゃねえか」
「見てたの」
「あ、ああ……。顔洗いに行ったら、ちょうど見えたんだよ……」
 菊池は意味不明な言い訳をごにょごにょとした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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