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和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>王子

解説
砂漠の世界から飛び立ちたいと願うアリー王子の前に現れた逞しい豪城。彼の冒険の話は夢のようで、二人でこっそり街へ出かけた、つかの間の自由に心が躍った。運命のように惹かれあった二人。アリーはきらびやかな生活を捨て豪城と生きる決意をする。だがその計画を国王に知られ、アリーは幽閉されて!? 二度と逢えなくても豪城が好き!! アラブでも大恋愛! 由比まきの書き下ろしスウィートラブ!!
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。
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抄録
「……ぁ……」
目の前に、彼の顔があった。
「きれいな色の目をしているな」
碧(みどり)だ、と指摘されたときにはもう、アリーは彼に抱き込まれていた。
「……え? ……ん、んぅ」
フワリと重なってきたやわらかいものが、アリーの唇を覆う。
押し包むようにされて、一瞬気が遠くなる。
唇ごと、チュウ、と吸い上げられて、アリーはキスされていることに気づいた。
……な、なに?
唇をペロリと舐(な)められて、ゾクッと背筋が震える。はじめてのキスにアリーはおののいた。
「……ん、んんっ」
彼の肩を押し、アリーはキスから逃れた。
「わ、私は……男だっ!」
思わずアリーは、ペルシアーナ語で叫んでいた。
こんな女の格好をしていたのはアリーの方だけれど、女と間違われてキスされてしまうだなんて、あまりに不覚だ。しかも……はじめてのキスだったのに。
彼はニヤッと笑った。
「男だってことはわかってたさ。それでもキスをしたかった」
「……え?」
グイッと引き寄せられてもう一度唇が重なってきたとき、アリーは抵抗することができなかった。
なぜだか、体から力が抜ける。
わからない、わからないけれど……彼のキスにアリーはうっとりしてしまった。
彼のキスは強引で……それでいてとてもあたたかかった。
もぐり込んできた舌先が、アリーの口の中を掻(か)き回す。濃厚なキスに、アリーの体はガクガクと震え始めた。
風が強くなってきて、ヒューヒューと耳のそばを通り過ぎていく。
けれどアリーはほんの少しも寒さを感じなかった。彼の逞(たくま)しい腕が、アリーの体をすっぽりと抱き込んでくれているせい。
砂漠は昼と夜の温度差が大きい。日が落ちるころから、どんどん気温が下がっていく。
……いつの間にか、アリーは彼にしっかりとしがみついていた。
「寒いのか?」
キスをしかけられながら問われても、どうやって答えたらいいのかアリーにはわからない。ただ彼のシャツを掴む指に力が入っただけだった。
ドクンドクンと鼓動が速い。
火傷(やけど)をしてしまいそうだ。唇から胸へと熱が広がる。体中が熱くなる。
体が宙に浮いているような、めちゃくちゃに回転させられているような……どこかに放り投げられてしまいそうな感じがするから、彼に掴まるしかない。
「……なんだ、キス、はじめてなのか?」
唇が触れ合ったまま笑われて、アリーは恥ずかしくて顔中真っ赤に染めた。
唇が解放されたあと、アリーは荒い息を吐きながら、彼の胸元に頬(ほほ)を押しつけた。
まだ鼓動がうるさいほど鳴っているから、顔なんて上げられない。
「名前はなんていうんだ?」
彼の問にアリーは、アリー・シャムス・ヌール・ペルシアーナ、と素性を隠すことも忘れて、正直に答えてしまった。
「アリー(気高い)、シャムス(太陽)、ヌール(光)か……。いい名だな」
髪を撫(な)でられて、いつの間にかヘジャブがずれてしまっていることに気づいた。
「ペルシアーナでこの髪は珍しいんだろう? 目の色だって。それでこんなふうに隠しているのか。こんなにきれいな色なのに、もったいないな」
覗き込まれて、息が止まりそうになる。……また、キスされるかと思った。
けれど彼は微笑んだだけで、アリーの髪を撫で続ける。
「私の母は、英国人だから」
そうか、とうなずいた彼は、アリーがこの国の王子だということには気づかなかったようだ、とアリーはほぅ、と息を吐く。もっとも、ペルシアーナの第一王位継承権を持つ長兄のことはよくニュースなどでも報道されるけれど、アリーの場合はそういうふうにマスコミに取り上げられることなどめったにないから、気づかなくて当然かもしれない。
「……あなたは?」
頭から落ちそうになっていたヘジャブを取りながら、アリーは彼に尋ねた。
「あなたの名前はなんというの?」
「俺か? 俺は、陣内(じんない)豪城(ごうき)、というんだが……」
すんなり答えてから、彼は苦笑した。
「わかりにくいだろう? 発音もしにくいんじゃないのか? ゴウ、でいいぞ」
確かに、アリーには彼の名前はよく聞き取ることができなかった。
「……ゴウ? ゴウって、英語のGO?」
それでいい、と豪が笑う。アリーは口の中で、何度も、ゴウ、と繰り返した。
冷えてきたな、と豪が言った。もうすっかり日は落ちて、空には闇(やみ)が広がり始めている。
豪が立ち上がって、アリーの腕を引っ張るようにして起き上がらせてくれた。
「……帰るの?」
「ここで野宿したいとは思わないな、俺は。ホテルに戻るよ。アリーだってそろそろ帰った方がいいんじゃないのか?」
*この続きは製品版でお楽しみください。
目の前に、彼の顔があった。
「きれいな色の目をしているな」
碧(みどり)だ、と指摘されたときにはもう、アリーは彼に抱き込まれていた。
「……え? ……ん、んぅ」
フワリと重なってきたやわらかいものが、アリーの唇を覆う。
押し包むようにされて、一瞬気が遠くなる。
唇ごと、チュウ、と吸い上げられて、アリーはキスされていることに気づいた。
……な、なに?
唇をペロリと舐(な)められて、ゾクッと背筋が震える。はじめてのキスにアリーはおののいた。
「……ん、んんっ」
彼の肩を押し、アリーはキスから逃れた。
「わ、私は……男だっ!」
思わずアリーは、ペルシアーナ語で叫んでいた。
こんな女の格好をしていたのはアリーの方だけれど、女と間違われてキスされてしまうだなんて、あまりに不覚だ。しかも……はじめてのキスだったのに。
彼はニヤッと笑った。
「男だってことはわかってたさ。それでもキスをしたかった」
「……え?」
グイッと引き寄せられてもう一度唇が重なってきたとき、アリーは抵抗することができなかった。
なぜだか、体から力が抜ける。
わからない、わからないけれど……彼のキスにアリーはうっとりしてしまった。
彼のキスは強引で……それでいてとてもあたたかかった。
もぐり込んできた舌先が、アリーの口の中を掻(か)き回す。濃厚なキスに、アリーの体はガクガクと震え始めた。
風が強くなってきて、ヒューヒューと耳のそばを通り過ぎていく。
けれどアリーはほんの少しも寒さを感じなかった。彼の逞(たくま)しい腕が、アリーの体をすっぽりと抱き込んでくれているせい。
砂漠は昼と夜の温度差が大きい。日が落ちるころから、どんどん気温が下がっていく。
……いつの間にか、アリーは彼にしっかりとしがみついていた。
「寒いのか?」
キスをしかけられながら問われても、どうやって答えたらいいのかアリーにはわからない。ただ彼のシャツを掴む指に力が入っただけだった。
ドクンドクンと鼓動が速い。
火傷(やけど)をしてしまいそうだ。唇から胸へと熱が広がる。体中が熱くなる。
体が宙に浮いているような、めちゃくちゃに回転させられているような……どこかに放り投げられてしまいそうな感じがするから、彼に掴まるしかない。
「……なんだ、キス、はじめてなのか?」
唇が触れ合ったまま笑われて、アリーは恥ずかしくて顔中真っ赤に染めた。
唇が解放されたあと、アリーは荒い息を吐きながら、彼の胸元に頬(ほほ)を押しつけた。
まだ鼓動がうるさいほど鳴っているから、顔なんて上げられない。
「名前はなんていうんだ?」
彼の問にアリーは、アリー・シャムス・ヌール・ペルシアーナ、と素性を隠すことも忘れて、正直に答えてしまった。
「アリー(気高い)、シャムス(太陽)、ヌール(光)か……。いい名だな」
髪を撫(な)でられて、いつの間にかヘジャブがずれてしまっていることに気づいた。
「ペルシアーナでこの髪は珍しいんだろう? 目の色だって。それでこんなふうに隠しているのか。こんなにきれいな色なのに、もったいないな」
覗き込まれて、息が止まりそうになる。……また、キスされるかと思った。
けれど彼は微笑んだだけで、アリーの髪を撫で続ける。
「私の母は、英国人だから」
そうか、とうなずいた彼は、アリーがこの国の王子だということには気づかなかったようだ、とアリーはほぅ、と息を吐く。もっとも、ペルシアーナの第一王位継承権を持つ長兄のことはよくニュースなどでも報道されるけれど、アリーの場合はそういうふうにマスコミに取り上げられることなどめったにないから、気づかなくて当然かもしれない。
「……あなたは?」
頭から落ちそうになっていたヘジャブを取りながら、アリーは彼に尋ねた。
「あなたの名前はなんというの?」
「俺か? 俺は、陣内(じんない)豪城(ごうき)、というんだが……」
すんなり答えてから、彼は苦笑した。
「わかりにくいだろう? 発音もしにくいんじゃないのか? ゴウ、でいいぞ」
確かに、アリーには彼の名前はよく聞き取ることができなかった。
「……ゴウ? ゴウって、英語のGO?」
それでいい、と豪が笑う。アリーは口の中で、何度も、ゴウ、と繰り返した。
冷えてきたな、と豪が言った。もうすっかり日は落ちて、空には闇(やみ)が広がり始めている。
豪が立ち上がって、アリーの腕を引っ張るようにして起き上がらせてくれた。
「……帰るの?」
「ここで野宿したいとは思わないな、俺は。ホテルに戻るよ。アリーだってそろそろ帰った方がいいんじゃないのか?」
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