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うら若き性少年の悩み

うら若き性少年の悩み

著: ふゆの仁子
発行: リブレ
レーベル: ビーボーイノベルズ



著者プロフィール

 ふゆの 仁子(ふゆの じんこ)
 星座:天秤座・誕生日:10月10日・血液型:A型。

解説

 吉澤恭介と板見谷隆は、高校の軟式テニス部でダブルスを組むパートナー。彼女といるより板見谷と一緒の方が楽しくて、ドキドキする……そんな吉澤の気持ちを知ってか知らずか、皆でアダルトビデオ大会をした夜、なんと板見谷がキスしてきて……! 剣持&室塚編も収録! ふゆの仁子の学園ステップアップ・ラブ、登場!
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

「どうした?」
「コンタクトがずれた……」
 ハードコンタクトを使用しているため、ずれるとかなり痛い。
 指でそっと左目の瞼に触れると、コンタクトが妙な場所にずれているのがわかる。軽く押して直そうと試みるが、涙だけが溢れてきて、簡単に元の場所に戻りそうにない。
「大丈夫か? 俺、見てやるよ。うちの母さんもコンタクト使っているから、ずれたときの直し方、知ってんだ」
 板見谷のありがたい言葉に従い、吉澤は片方の目を閉じたまま天井を向く。
「ほら、目を開けて。……あったあった、ちょっと触るよ」
 板見谷はテレビからの明かりで、吉澤の目の中でずれたレンズを見つける。太い指が吉澤の左目の端に置かれ、右手は顔の前にある。
「吉澤。この指先、見てて。いいか、動かすぞ」
 板見谷の指示に従い、吉澤はゆっくりと目を動かすが、異物を感じて両目を閉じる。
「イテッ」
「どう? 戻った?」
 板見谷の声を聞いて静かに目を開けると、目の前にある顔がはっきりと見える。
「うーん」
「直っただろう?」
 そう言って嬉しそうに笑う。
 笑うと板見谷の目尻には笑い皺ができる。吉澤はそれに初めて気づいた。
 自分を見つめる優しいまなざしが心地好くて、話を聞くのもそこそこに、彼の顔をじっと見つめていたくなる。
「さっきのやり方、自分でも簡単にできるから、覚えておくと便利だよ。もう一度説明するよ。こうして自分の顔の前に指を立てて……吉澤?」
「……あ」
 目の前に立てられた節のある太い指に、吉澤は思わず手を伸ばしていた。板見谷の目は、その吉澤の指先で止まっている。
 滞ってしまった空気に虚しいフォローだとは思いつつも、吉澤は少し古いSF映画のポスターのように、人差し指を立てて板見谷の指先に当てる。
「え……え、と……ETのマネ……なんて。ゴメン、馬鹿なことして」
 あまりの恥ずかしさに、吉澤は曖昧な笑みを浮かべたまま手を下ろし、体ごと横を向く。
 板見谷は無言で吉澤を見ている。
 テレビの画面からは、さっきからずっと女の喘ぎが聞こえている。気を許した隙に耳に飛び込んできた絶頂に近い嬌声に、忘れかけていた感覚が吉澤の体の中で再び芽生える。
 さらに前触れもなく、肩に板見谷の大きくて温かい掌が置かれる。そんな、普段学校でも何げなくしている行為にさえ、正直な体は敏感に反応してしまう。
「触ンなよっ!」
 堪えられずに板見谷の手を払うようにして振り返ると、彼は目を見開き、驚いた顔を見せた。
「ご……め……」
 吉澤が謝る前に、板見谷は両肩を掴んだ。
「板見谷?」
 彼は、真剣な鋭い瞳で、吉澤の目を見つめている。瞳の奥には、視線を逸らさせない強さが秘められている。
 その視線に覚えがあった。かつて中学二年の夏の試合で、初めて板見谷を見たときと、同じもの。自分と近しい存在だと彼を認め、共感した瞳。
「吉澤……」
 どこか余裕を欠いた、切迫して少し掠れた声で板見谷に名前を呼ばれ、吉澤の体が奥からじわじわと熱くなってくる。
「板…見……谷」
 そして。
 唇に、温かくて柔らかい感触が訪れた。
 板見谷の唇が触れた途端、電流が走ったように体全体が震える。
 初めてキスしたときよりも、ずっと緊張している自分に気づく。もちろん相手は女の子だった。
 唇が離れていくのと同じスピードで静かに瞼を開くと、板見谷の顔があった。彼は体を前に進め、しっかりと吉澤の顎を押さえ、今度はさらに深く唇を重ねてくる。
 閉じられたままの吉澤の唇を割るように、生暖かくざらついたものが唇をつついてくる。体中から力が抜けそうな甘さに身を委ね、ほんの少し唇の間に隙間を開けると、するりと板見谷の舌が侵入してくる。
 口腔内を蠢いたそれは、吉澤の舌を見つけると、強引に絡みつく。
「ん……」
 徐々に激しくなる口づけが苦しくて、吉澤の喉から声が漏れた。立ったまま、上から伸しかかられるような不安定な体勢に耐えられず、吉澤は支えを求めて板見谷の肩口を掴む。
 板見谷は存分に吉澤の唇を味わってから、そのまま頬を通り、唇を耳朶へと移動させる。柔らかいそこに軽く歯を立て、息を吹きかけるようにして吉澤の名を呼ぶ。
「恭介……」
 これまで板見谷に名前で呼ばれたことのない吉澤は、体を僅かに震わせる。
 板見谷は耳に口を寄せたまま吉澤の反応を確認していたが、抵抗してこないのを知ると、絨毯へ吉澤の体を押し倒した。コトンと、吉澤のひどく混乱している頭が絨毯の上に落ちて、仰向けに寝転がった状態の体の上に板見谷は跨がった。
 天井は格子模様になっているのか。
 吉澤がぼんやりとそんなことを呑気に考えていると、板見谷の顔がゆっくり下りてきて、視界を覆った。
 再びのキス。脳天から痺れそうな巧みなキスに、吉澤の理性はどろどろに溶かされて、原形をとどめていられなくなった。

*この続きは製品版でお楽しみください。