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青狼王のくちづけ

青狼王のくちづけ


発行: オンライン出版
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 久美 沙織(くみ さおり)
 1959年4月30日、盛岡市生まれ。O型。上智大学文学部哲学科卒業。
 79年「水曜日の夢はとても綺麗な悪夢だった」でデビュー。集英社文庫コバルト・シリーズに、「宿なしミウ」「抱いてアンフィニ」「丘の上のミッキー」シリーズなどがある。
 また、「MOTHER」「ソーントーン・サイクル」シリーズなどSF・ファンタジーの分野でも傑作を発表。実力派作家として活躍するかたわら、小説家志望者たちの育成にも力を注いでいる。

解説

 秘めたる魔法の力をもつ石は、もつれた運命の糸をゆっくりと巻き取りはじめた。封じられた瞳の奥に邪悪な人格を持ってしまった見習い魔女ジリオン。青狼の毛皮をまとう王子ユルスュール。怪奇と幻想に彩られた二人の旅路ははてしなく続く。
 伝説の湖、黄泉の国、奇怪な外観をもつドナのはたご。たくましき女奴隷、恋人を待ち続ける水売り娘、老人の身体に閉じ込められた魔王――そして訪れる壮麗なクライマックス。すべての糸がひとつになった時、時間と空間を超えて巨大な円環がひとつになる。
 著者渾身の書き下ろしファンタジー、ここに完結!

目次

ソーントーンの石を巡るものがたり
プロローグ
1 ウー・ヌ・ドゥー
2 婚礼
3 赤い虫
4 水売りの娘
5 黄昏のソーマ
6 到達
7 円環
エピローグ
あとがき

抄録

 (みんながみんな、あたしがこいつに辱められても、しかたがないって思っているんだ)
 悔し涙がこみあげそうになった。ジリオンは両手の爪を掌に食い込ませて堪えた。たとえこの場で憤死(ふんし)してもかまわない。絶対に弱味を見せたりしない。
 ジリオンがおのれと苦闘しているのを目にすると、どうやらひとの顔色を読むことにだけはすこぶる長(た)けた婚約者が、調子を取り戻したらしい。
 「待て待て。ちょっと待ってくれよ」あやすような猫撫で声で囁いた。「悪かった。いきなり乱暴なことをした。だが、わかってるだろう? ……俺はマ・ヴェル・ゾヘニアに選ばれ、さらわれてきた種馬だ。部下ともともだちとも離されて、この宮廷にたったひとり。舐(な)められちまったら一生うだつがあがらない。だから、最初に、わざと男らしいところを見せておかなきゃならないと思ったんだ」
 「男らしい?」ジリオンは問い返し、うつろに笑わずにいられなかった。「まさか本気で言ってるんじゃないでしょうね。あんなことのどこが男らしいっていうのよ」
 「俺たちは結婚する。あんたは俺の子供を生む。そのためには……」彼はちょっとことばを切り、肩をすくめ、すまなそうに手をひらひらさせた。「俺はあんたを乗りこなさなきゃならないだろ? 気難しい雌馬(めすうま)を手懐(てなず)けるみたいにさ」
 馬?
 ジリオンは固唾(かたず)を呑んだ。怒りが次第に音程をあげる金属的な唸りになって耳を聾(ろう)し、衝撃が眼球の底で火花を散らしながら渦巻く炎となってめまいと吐き気をもたらした。
 純白の、黄金の、優しい馬のグヴェンドリン。あなたは馬でなどない時から馬扱いされてきたんだったのね?
 「……馬は乗り手を選ぶのだし、女は恋人をたくさんの男の中から見つけるわ……」気がつくとジリオンはそっと呟いていた。低く、優しく、薬と称して毒を飲ませる魔女そのものの甘い言ってきかせるような囁き声で。「それがわからないおまえなら、生きていてもしかたないわね?」
 花園に囲まれたソーマの国、魔法力に満ち溢れたこの土地にあって、いま力は彼女の内に留(とど)め置くのが難しいほどに滾(たぎ)りたっていた。石など必要ないのだった。石はきっかけにすぎず、通路にすぎない。氷の最初のひとひらが塵(ちり)を核にしてできるものであろうとも、凍ろうと企てた水はかならずいつかは凍るもの。
 ジリオンでありグヴェンドリンでもある白い魔女は、この時、母である女王をも畏(おそ)れぬほど偉大であり絶対であり完璧(かんぺき)だった。なすべき使命がある以上、力は彼女に味方しないわけがなかった。さしも愚鈍な婚約者さえ、酔いどれ顔をぽかんとさせて、あっけにとられて絶句している。
 「さあ」少女の外見を持つ魔女は、嘲笑うように高らかに宣言した。「殺してあげる。そうしたいなら、剣を抜きなさい!」

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