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和書>小説・ノンフィクションライトノベル恋愛

薔薇の冠 銀の庭

薔薇の冠 銀の庭


発行: 集英社
レーベル: コバルト文庫
価格:450pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 久美 沙織(くみ さおり)
 1959年4月30日、盛岡市生まれ。O型。上智大学文学部哲学科卒業。
 79年「水曜日の夢はとても綺麗な悪夢だった」でデビュー。集英社文庫コバルト・シリーズに、「宿なしミウ」「抱いてアンフィニ」「丘の上のミッキー」シリーズなどがある。
 また、「MOTHER」「ソーントーン・サイクル」シリーズなどSF・ファンタジーの分野でも傑作を発表。実力派作家として活躍するかたわら、小説家志望者たちの育成にも力を注いでいる。

解説

 アメリカ留学前、僕は玲子と校庭の欅(けやき)の木の下で別れをかわした。「待っていてくれ」と言葉を残して。一年後…僕はまた校庭に立った。帰ることを誰にも知らせないままに。弓道部にいるはずの玲子の姿はどこにもなく、代わりに野枝実がとんできた。彼女は薔薇を育てている“野バラ姫”で、僕に憧れているのだという。
 そんな野枝実を、玲子は誰よりも恐れていた――。

目次


II
III

抄録

 僕は玲子の手から、口紅型のライターを取る。
 「きみはいつもどおり毅然(きぜん)としてたそうだね、僕がいなくたって」
 「じゃあ寂しい寂しいってめそめそしていればよかったの? 勉強なんか手につかないって、だらしなく落ちてればよかったのね?」
 「そうじゃないよ、そんなの玲子らしくない。でも、どうしてあの子に関してだけ、そううろたえるのかわからないんだ」
 「だってあの子はするのよ、そういうこと。そしてみんな同情するの」
 「……みんなったってね、人なんか」
 「弓道部の男の人たちともすぐ仲良くなったわ。あなたが帰ってくるまでに、一本でも当てられるようになりたいんだ、って公言してはばかんなかったわ。それをわたしに、毎週にこにこ見てろっておっしゃるの?」
 「……じき、高速だけど、帰るか? 入っちまったら簡単には戻れないぞ」
 「帰してあげないわ」
 玲子は顔をそむけたまま言った。
 「あなたは運転してくれるのよ、ロマンチックな空にかけ登るみたいに」
 「玲子、けんかはよそう」
 「けんか? けんかじゃないわ。あなたは相手にしてくれないもの。わたしのことヒステリーだって思ってもいいわ。でも笑わないで。笑われたら……」
 「笑われたら?」
 「葦伸さん」
 急に肩にしがみつかれて、危うくハンドルをとられるところだった。玲子の長い爪が、骨をぎりぎりきしませる。
 「そしたらもう、だめになる。あの子の思うツボよ」
 「野枝実はそんな計画性のある子じゃないよ」
 「本能だわ。あの子の本能がたくらむのよ、そうして、わたし、もうワナにはまってる」
 「やめてくれよ、たのむから」
 玲子が爪を放す。一気に通う血が肩をあつくする。
 「冷静に考えてごらん。人が何をどう計画しようと、関係ないだろ。例え、きみが言うとおりあの子が悪だくみしてるとしたって、のらなきゃいいじゃないか」
 「…………」
 標識が見えた。ウインカーを出して、高速へのルートに入る。
 「ばか」
 「…………」
 「きみがそんなにばかだってこと、知っているたったひとりの人間なんだろ、僕は。まいるよ。この件に関してきみはおかしい。自分じゃわからないか?」
 「わからない……ううん、わかってる。でも、失望しないで……おねがい」
 「してないって」
 加速。
 「そういうきみを見てると胸が痛い。痛いってのは、怒ってるんじゃなくて、いとおしいんだぜ、わかるか?」

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