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極上ホテルの甘美な法則

極上ホテルの甘美な法則

著: ふゆの仁子
発行: リブレ
レーベル: ビーボーイノベルズ シリーズ: 極上ホテルの甘美な法則



著者プロフィール

 ふゆの 仁子(ふゆの じんこ)
 星座:天秤座・誕生日:10月10日・血液型:A型。

解説

「ようこそ、プレジャーズホテル東京へ!」──豪奢なエントランスに佇む、黒い燕尾服の総支配人・瀧澤。素質を見出された友近は、20代の若さと未経験な業務にも関わらず、いきなりマネージャーに大抜擢される。共に働くうち、瀧澤への憧れが恋に変わるのを自覚した友近。戯れめいた瀧澤のキスにさえ、蕩かされそう……。貴方の愛にふさわしい男になるために、このオープンを成功させたい…! 大人の男たちの極上ドラマ、開幕!!
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

「瀧澤さ……」
「君が、欲しい」
 ぞくりとするほどの甘さを秘めた声が、思いがけない言葉を紡ぐ。瞬間、背筋が震え上がり、どくんと大きく胸が鳴った。
 指の先が痛くなる。口の中が突然に渇いて喉が渇いてきた。渇いているのは、喉だけじゃない。体じゅうが、飢えている。何に? 自分自身に問う。何に飢えているのか。何が欲しいのか。何を求めているのか。
 答えは自分の中にある。
 瀧澤の言葉に動揺し、狼狽えながら、その実誰より喜んでいる。
 だってそうだ。ついさっきまでは絶望の淵に立たされて、気分が悪くなるほどに落ち込んでいたのだ。そんな気持ちにさせられた男に、今また浮上させられている。
 荒れ狂う海に、落ちたと思っていた。大きな波に、小さな木の葉のように、呑み込まれるしかないと思っていた。そうしたら、ぎりぎりで差し伸べられた手に、まだ自分は縋っていた。
 瀧澤の顔が、まるでスローモーションのように近づいてくる。真っ直ぐに友近の瞳を見つめるのは、瀧澤の漆黒の瞳。吸い込まれていきそうな深い色に、友近は瞼を閉じていく。
 震える唇に、思っていたよりも熱い唇が重なってくる。一瞬軽く触れて、すぐに離れて、再び深く押しつけられてくる。
「……っ」
 記憶にあるキスは、今からもう十年以上前に遡る。彼女は常に、唇にたっぷりのルージュを塗っていた。化粧品の独特の味が友近は得意ではなかった。キスは「まずいもの」という記憶がインプットされていた。
 けれど久しぶりのキスは、その記憶を打ち消した上で、新しい記憶を作り出す。

*この続きは製品版でお楽しみください。