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著者プロフィール

 ふゆの 仁子(ふゆの じんこ)
 星座:天秤座・誕生日:10月10日・血液型:A型。

解説

 退屈な日々を過ごしていた高2の春休みのある日、大西多聞は姉の千鶴子が通っている大学のアーチェリーの射場で的を射る一人の青年・木戸茂朝の姿に一目惚れしてしまう。多聞は彼にもう一度会いたいがために同じ大学へ進学してアーチェリー部に入部する。だが、その彼の意中の人は実は千鶴子だった――。
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

 行き慣れた城戸の家までの距離が、いつもより長く感じられた。
 電車に乗っている人すべてが、これから自分が何をしに行くか知っている気がして、妙な後ろめたさを感じる。同様に、城戸の部屋の呼び鈴を鳴らすのにもかなりの勇気を必要とした。
 絶対今の自分は、物ほしげな、変な顔をしているに違いない。
 だが、顔を隠すわけにもいかない。
 多聞は俯いて扉が開くのを待つ。
「いらっしゃい」
 でも、城戸は変わらぬ様子で多聞を部屋に招き入れる。
「コーヒーいれるから、座って」
 多聞の緊張をよそに、テレビを見て他愛もない話をして時間が過ぎていく。ものすごい気合いを入れてきたが、もしかしたら、今日は『しない』のかもしれないと思って、多聞は安心して緊張を解いていく。
 夕飯も近くのコンビニで買って、城戸の部屋に常備されている酒を飲んだ。
 ほっとして満腹になったら、酔いが回ってきた。「もう食べられない」
 ごろんと、食べたあとのごみもそのままに、多聞は床に寝転がる。
「飲みすぎだよ」
 城戸は含み笑いをしながら、机の上を片づける。寝転がったまま下から彼の様子を眺めているだけで、多聞はすごく幸せな気分になった。
 城戸が戻ってきたのを確認して彼の方に身体を移動させる。
「先輩、大好き」
 酔ったときの癖で、多聞は自分から城戸にキスをせがむ。『キスをする』という行為はどうしても慣れないが、『唇を重ね合わせる』感触は好きだ。
 すべての行為の始まりのキスに、思いのすべてを唇で伝えられたら。そう思って、多聞はキスをねだる。

*この続きは製品版でお楽しみください。