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コワクナイ 中

コワクナイ 中


発行: キリック
シリーズ: コワクナイ(梅津裕一)
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆4
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著者プロフィール

 梅津 裕一(うめつ ゆういち)
 『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。

解説

 とある地方都市で突如発生した変異型日本脳炎ウイルス。それは人を高熱で冒すだけでなく、人の感情から「恐怖」を削除する恐ろしい病原体だった。その街の中学校に通う田島和人はウイルスに感染した最初の一人。もともと人一倍臆病な性格のせいでイジメの標的にされていたが、高熱で生死の境をさまよったあとは人が変わったように冷徹で残虐になり、クラスメイトたちを震撼させる。恐怖から解放された和人は、人を殺すことも、警察に捕まることも、自分が死ぬことさえ怖くなかった。何も怖くないということは、何でもできるということなのだ。一方、市内では蚊を媒介に変異型日本脳炎が瞬く間に蔓延。恐怖をなくした人間もゾンビのごとく増殖していく。それがもたらしたのは、人々が自らの欲望のままに、犯し、奪い、殺す……まさに地獄のような世界だった。そんな中、和人は中学の友人の桑原悟と御堂マキの協力を得て、自分をコントロールする術を身につける。そして、街からの脱出を試みようとするのだが……。

 怖くないのが一番、怖い! 鬼才・梅津裕一が恐怖を失った人間の狂気を描く、書き下ろしバイオレンス・ホラー……緊迫の中巻!!

抄録

 駐車場のまわりでは、何人もの男女がダンスを踊っている。
 あたり一面に、ビニール袋や食品の包装紙らしきものが散乱していた。ビールの缶はともかく、砕けた酒瓶などもあり、うっかりすると足を怪我してしまいそうだ。
 一種独特の人間の汗くさい体臭と、かがり火のあたりからなにかか焦げるような匂いが漂ってくる。食欲をそそる匂いだというのに、同時に生理的に不快な感じがするのはなぜだろうか。
 かがり火をじっと見ているうちに、マキの顔色が変わった。
「ちょっ……マジ? あれ……人、焼いてる……」
 人を焼いている。
 マキの言葉の意味がわからなかった。
 いや、言語の意味としては理解できているのだが、うまく内容が頭の中に伝わらない。
 確かに何体もの人体らしいものが、杭のようなものに刺されて、炎に炙られていた。その姿が黒い人影となって見えた。
「まさか……」
 ついに食人まで、彼らは始めたということなのだろうか?
 冗談ではなかった。嫌悪感に吐き気がした。別段、恐ろしいとは思わないが、決して愉快な気分にはなれない。
「あれって、もしかして人、食べるんですかね?」
 桑原はむしろ愉しげに、傍らにいた男に尋ねていた。
 年の頃は四十代半ばくらいだろうか。頭の禿げ上がった、いわゆるメタボリック体型の中年男だった。どこかの町会長でもやっていそうな、人のよさそうな男だ。
 今は上半身裸になり、一升瓶から酒を飲んでいる。上機嫌な様子だった。
 これまで若い者が比較的、多かったせいか、発症者は若者というイメージがあったが、考えてみればあのホームレスもかなりの歳だったのだ。感染者に、年齢、性別は関係ないらしい。
「はははは、人を食べる? 馬鹿いっちゃいけないよ」
 中年男は笑った。
「あれは、自警団の連中の死体だよ。だってさ、放置してたら悪い病気が湧くって、『先生』が言うから……」
「先生?」
 桑原の問いに、中年男がうなずいた。
「そう。お医者さん。なんでも、例の田島病院で内科の医者やってたって話だけど……」
 だとすれば、あるいは和人の知っている人間かもしれない。伯父は、ときおり自分の気に入った医師を家に招くことがあった。
「とにかく、不衛生はいけないんだそうな。また悪い病気が出てくるかもしれないってさあ」
 中年男が豪快な笑い声をたてた。
「もう、こんな状況で健康に気をつけたってしょうがないと思わないか? 俺なんて禁酒して、ダイエットしてもう少し長生きしようと思ったのに……まさか、こんなことになるなんてなあ」
 ふと中年男が暗い目をした。
「家族のために頑張ってきたのにさ……みんな、俺が目覚ましたら怪物みたいな目でみるんだぜ? うちでさ、ペスって犬、飼ってたんだよ。これがむかつく犬で、息子や女房には尻尾を振るくせに、俺のことは見向きもしねえ。あれだな、犬ってのは……もとは狼でさ、家のなかの力関係を群れでの序列と同じようにみなす習性があるんだってよ。ってことはさ、俺は家の中で『最弱』として見られていた……そういうことだろ?」
 そういうことになる。
「昔から、あのペスのことむかついていたんだよ。本当に何度、殺してやろうかと思ったかわからない。でも熱から醒めたらさ、今までなんで我慢していたのか自分でもわかんなくなっちゃったんだよな。だから、ペスがきゃんきゃんうるさいから、フライパン持って頭に何度も何度も何度も叩きつけてやったんだよ。そしたら家族がみんな、化け物を見るみたいな目で俺のこと見やがってよう……そのまま家出て、ここに流れ着いたってわけだ」
 つまり、この中年男はペスを殺せば家族から恐れられることに恐怖を抱いていた。理性ではそのリスクを計算していたが、恐怖を脳から削除されて怒りの感情のほうが強くなり、ペスを殺してしまったということだろう。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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