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凶戦士 愛

凶戦士 愛


発行: オンライン出版
シリーズ: 凶戦士 愛
価格:530pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 高千穂 遙(たかちほ はるか)
 1951年11月7日、名古屋生。本名・竹川公訓(たけかわきみよし)。法政大学社会学部社会学科卒。大学在学中にアニメーションの企画・制作集団「スタジオぬえ」を設立。1977年、「クラッシャージョウ 連帯惑星ピザンの危機」で作家デビュー。1980年「ダーティペアの大冒険」で星雲賞(日本短篇部門)受賞。1986年「ダーティペアの大逆転」で星雲賞(日本長編部門)受賞。
 日本SF作家クラブに所属。

解説

 ウルプタン国ではすべてが混乱していた。政府軍と解放軍の間で激しい戦闘が繰り広げられている。解放軍には“ダジャ”と呼ばれる完璧に鍛え上げられたゲリラ集団がいた。何者にも動じない、ただ人を殺すためだけに生きる殺人機械たち。
 神永将人は、ベトナム戦での戦友である御子柴の息子、“愛”を見つけるため、ウルプタン政府軍に加わっていた。
 凶戦士 愛。愛はダジャに加わっていた。愛が血を呼び、血は愛を呼ぶ。
 戦慄と官能のスーパー・アクション。

目次

第一章 戦線離脱
第二章 人質奪還
第三章 凶獣復活
第四章 刺客襲来
第五章 虎口潜入

抄録

 身をかがめ、神永は丸太の端を持ちあげた。
 折れた丸太を一本動かすと、瓦礫の中にぽっかりと穴があき、意外にたやすく倒れている男の全身が、あらわになった。男は俯せになっており、首に格子柄のマフラーを巻いている。
 やはり、ダジャだ。
 若い。年齢は十八、九といったところか。四十三歳の神永にしてみれば、自分の息子ほどの少年兵士である。
 しかし、この子供が実は危険極まりない殺人機械なのだ。
 凶々(まがまが)しい、血に飢えた悪魔の獣。
 神永は穴の底に降りて、ダジャの首筋に指を置いた。
 かすかな搏動が伝わってきた。
 生きている。
 神永の表情が硬くなった。
 マフラーを掴み、ぐいと引きあげて、叩きつけるようにダジャを仰向けにした。
 血と泥とでまだらになった少年の顔が、あらわれた。
 目を堅く閉じている。短い前髪が、額にべっとりと張りついている。
 神永の全身に戦慄が走った。
 体毛が逆立ち、血が凍った。
 神永は凝固した。息を呑み、思考を乱した。
 端整な顔立ちの少年だった。ウルプタン人には珍しく、鼻筋が通っており、唇が薄い。泥で汚れているためにはっきりとはしないが、褐色の肌も、それほど色濃くはないようだ。陽焼けした日本人と大差ない。
 遠くで爆発音が響いた。
 その音で、神永は我に返った。
 ここは戦場だ。自失している状況ではない。
 片膝をつき、少年の右腕を荒々しく把った。
 黒シャツの袖を肩口まで引き裂いた。
 二の腕が剥きだしになった。
 腕をひねり、付け根に目をやる。
 あった。
 たしかにあった。
 山城桔梗紋(やましろききょうもん)。
 三センチ四方ほどの小さな刺青である。稚拙な筋彫で、形も多少いびつだが、まぎれもない山城桔梗紋である。
 「あ・い・……」
 神永の口から低い声が漏れた。
 「生きていたんだな」
 あとは言葉にならない。
 そのダジャの名を、神永は知っていた。
 御子柴愛(みこしばあい)。ウルプタン名は、ゥアイ・サティ。
 十八歳だ。父親は御子柴進。日本人である。母親はルモワ・御子柴・サティ。ウルプタン人である。
 愛の名は、神永が命(つ)けた。
 神永は、愛のからだを探った。傷を調べ、武器を取りあげた。
 傷は予想以上に浅かった。背中に砲弾の破片がいくつか食いこみ、前頭部に裂傷がある。打撲によってできた傷だ。打身の痕は脇腹と右太ももにもあるが、いずれもたいしたことはない。脊髄も無事だ。意識がないのは頭を打ったためだろう。しかし、骨折はしていない。一時的な失神である。
 崩れた監視塔は、愛を圧しつぶさなかった。それは、まさしく奇跡であった。トラスに組まれた丸太の隙間を、愛のからだは抜けた。そのあとで、折れた丸太か鉄パイプが愛を跳ね飛ばした。が、それは致命的な一撃にはならなかった。
 神永は、愛のズボンを脱がせ、マフラーを外した。このズボンとマフラーで、愛はダジャだと知れる。ディエン・タムの兵士にダジャだと知られたら、愛は即座に処刑される。神永としては、それを許すわけにはいかない。
 マフラーと脱がしたズボンを瓦礫の奥に投げ捨て、神永は愛のからだを引き起こした。
 五六式を左手で持ち、右腕を腋下(えきか)に差し入れて、愛を抱き支える。背が高い。百八十センチを超えている。
 瓦礫の穴から出た。

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