マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションSF・ファンタジー小説日本SF小説

美獣(下)

美獣(下)


発行: 集英社
シリーズ: 美獣
価格:530pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 高千穂 遙(たかちほ はるか)
 1951年11月7日、名古屋生。本名・竹川公訓(たけかわきみよし)。法政大学社会学部社会学科卒。大学在学中にアニメーションの企画・制作集団「スタジオぬえ」を設立。1977年、「クラッシャージョウ 連帯惑星ピザンの危機」で作家デビュー。1980年「ダーティペアの大冒険」で星雲賞(日本短篇部門)受賞。1986年「ダーティペアの大逆転」で星雲賞(日本長編部門)受賞。
 日本SF作家クラブに所属。

解説

 “人間の土地の王になれ”予言者はいった。神々の王・オーディンに選ばれた美獣・ハリィデールは神槍グングニールを片手に征服への道を驀進する。
 戦いの途中知り合った黒小人・ギンナルとたおやかな中にもりりしさを秘めた美少女・ミザーラを従え、ミッドガルド南部を制圧する。北には、最大の敵、不死王スカイハイトがいる……。過去を捜して終わりない旅を続ける戦士・美獣に最後の戦いの時がきた……。長編ヒロイック・ファンタジー。

目次

第四章 荒野の電光狼(承前)
第五章 摩天楼地獄

抄録

 ハリィデールの左右で、石と金属の触れ合う甲高い音がした。
 グルスノルンの歩兵である。砦の外壁にかけた梯子を伝って、ここまでのぼってきたのだ。手に剣を持ち、歩兵特有の粗末な甲冑(かっちゅう)を身につけている。
 ハリィデールはきびすを返し、胸壁を背後に置いた。ミザーラは身を引き、ハリィデールからそろそろと離れた。
 ハリィデールが、一歩前に出た。取り囲む歩兵は、逆に一歩退いた。歩兵は六人。この程度の人数では威圧感で美獣に劣る。
 さらに一歩、ハリィデールは進んだ。両の手に得物(えもの)はない。素手だ。グングニールの槍は電光狼ドロモスに投じたあと、胸壁に突き刺さったままになっている。じりじりと移動するミザーラは、どうやら槍に近づこうとしているらしい。しかし、兵士たちは、それに気がつかない。人質にされていたグルスノルンの王女が、味方がやってきたのを幸いに、美獣のもとから逃れようとしていると思ったのだ。
 六人は剣を構え、踏みこもうとするが恐怖でからだが動かなかった。
 ミザーラの手が、グングニールの槍に届いた。胸壁から引き抜き、身をひるがえす。
 槍を前に突き出し、その勢いでひとりの兵士の背中に体あたりした。
 がっ、と呻き声をあげ、腹を串刺しにされた兵士は血を吐いて白眼を剥(む)いた。
 ミザーラは、即座に槍を抜いた。兵士はどうと倒れた。残る五人は唖然としている。まさか、かれらを率いる王の娘が敵に回ろうとは。
 槍が唸りをあげて弧を描いた。切っ先が次の兵士の首をそいだ。頸動脈が裂け、血が霧になって噴き出す。別の兵士が我に返り、剣を振りかざした。槍が再び弧を描き、石突きが、剣を握る手を打った。
 ポロリと剣が落ちる。
 その剣を空中でハリィデールが掴んだ。
 ハッとする間もない。
 二つの首が宙に舞った。残るは二人。悲鳴も高く、逃げだそうとする。
 ミザーラが槍を繰り出した。
 延髄を突かれ、ひとりが悶絶する。あとひとりはハリィデールが右肩から左の腰まで、一直線に両断した。
 「な、なぜだ……」
 ミザーラに首を貫かれた男が小さくつぶやき、息絶えた。
 槍を戻し、腋(わき)にたばさんで、ミザーラはハリィデールを見た。
 「見事といってよかろう」
 ハリィデールが言った。
 「槍の心得はすこし」
 はにかむように、ミザーラは応じた。戦乱の世である。王族の身内ともなれば、武芸のひとつもたしなんでいるのが当然だ。槍は婦女子に適した武器といえた。
 「それは、お前に預けておこう」
 ふっと、いかにもさりげなくハリィデールが言った。
 「え?」
 驚いて、ミザーラが目をみひらく。
 「お前に預けておくと言ったのだ」ハリィデールは剣を振り、血を払った。
 「俺は、これを使う。電光狼とヒルドがいる限り、それはただの槍にすぎん」
 「でも、あたしは……」
 「死ぬつもりの者に武器はいらんか?」
 ハリィデールは薄く笑った。ミザーラはうつむき、かすかに唇を噛んだ。
 「持っていろ。死ぬにしても相手を選びたいだろう。好んで雑兵に殺(や)られることはあるまい」
 言いざま、ハリィデールは上体を後ろにひねった。胸壁の上に、また新たな兵が顔をだしていた。野獣の勘が、その気配を捉(とら)えたのだ。
 ハリィデールの剣が一閃(いっせん)した。
 首と胴がわかれ、数人の兵士が声もたてずに大地へと落下していった。
 ハリィデールは胸壁にかけられた梯子を、すべて押し倒した。
 そして、ミザーラに振り返る。
 「行くぞ!」ハリィデールは言った。
 「まだ、ついてくる気はあるか?」
 「もちろんよ!」
 ミザーラは昂然と胸を張った。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。