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プロジェクトX 挑戦者たち 男たちの飽くなき闘い 海底3000メートルの大捜索/H2ロケットエンジンを探し出せ

プロジェクトX 挑戦者たち 男たちの飽くなき闘い 海底3000メートルの大捜索/H2ロケットエンジンを探し出せ


発行: 日本放送出版協会
シリーズ: プロジェクトX 挑戦者たち
価格:100pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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解説

 平成11(1999)年11月15日、国産H2ロケット8号機の打ち上げが行われた。しかし、この打ち上げは、メインエンジンの突然の停止、初めての指令破壊という、日本の宇宙開発史上、最悪の結末になった。
 なぜ、突然メインエンジンが止まったのか?…宇宙開発プロジェクト存亡の危機を乗り越えるためには、原因究明が不可欠だった。しかし、困難を極めた。
 エンジン本体は、太平洋上のどこに墜落したのか?…このエンジン回収の大捜索は、海洋科学技術センターで深海の学術調査を行っていた門馬大和研究員グループに託された。
 宇宙と海の共同プロジェクト。与えられた期間は2週間。しかし、最新の音波探査装置「かいれい」を使っても、見つかったのはエンジンの配管と外側の覆い部分のみ。そこで門馬は、20年前に自作した手作り探査装置「ディープ・トウ」を使って、2度目の調査に挑んだ。24時間体制で敢行された再調査。4日目、門馬たちは、ついにエンジン本体を発見した。
 これは、日本の宇宙開発の命運を託された「深海探査のプロ」たちの知られざる格闘のドラマである。

目次

一 HIIロケット八号機の打ち上げ失敗
二 宇宙と海の共同プロジェクト
三 海の経験と宇宙の計算の対立
四 クリスマスイブの贈り物

抄録

一 HIIロケット八号機の打ち上げ失敗


 もう失敗は許されない


 小笠原諸島北西三八〇キロメートル。静岡県から真南へ約六〇〇キロメートルの距離にある大海原で、一九九九(平成一一)年一一月、前代未聞の大捜索が始まった。探し出すのは、海底に消えたわずか三メートルの小さな物体だった。それは、打ち上げに失敗し、太平洋に沈んだHIIロケットのメインエンジン、LE‐7だった。エンジンを回収できなければ、宇宙開発にかけた夢が断ち切られる危機だった。困難な捜索を引き受けたのは、もう一つの未知の世界、深海に魅せられた男たちだった。
 水深三〇〇〇メートルの暗闇のなかで続けられた、執念のエンジン探し。これは、海と宇宙、二つの分野のプロたちが不可能に挑戦した、奇跡の捜索の物語である。


 一九九九年一一月一五日。種子島宇宙センターは運命の日を迎えていた。
 機体からエンジンまですべて日本の技術でつくり上げた、HIIロケット。その八号機の打ち上げが迫っていた。HIIロケットはそれまで試験機を含めて七回打ち上げられ、うち六回成功して、気象衛星『ひまわり5号』、通信技術試験衛星『きく6号』、地球観測衛星『みどり』などを、地球をめぐる軌道上に運んでいた。しかし前回、九八年二月に行われた七回目の打ち上げは、失敗した。地上から飛び立つための第一段、最終的に宇宙に飛び出すための第二段と二つのロケットがあるうち、第二段ロケットのエンジンが再点火しなかったのである。
 その失敗で、通信放送技術衛星『かけはし』が予定軌道へ投入できなくなり、整備・管制などロケット打ち上げの費用を合わせると、およそ三〇〇億円の税金が無に帰した。が、失われたのはお金だけではなかった。それまで六回すべての打ち上げを成功させ、「パーフェクト」と賞賛されていた日本初の純国産大型ロケットの評判にも、深い傷跡を残した。今度の八号機の打ち上げにも失敗すれば、六度の成功すべてが、「たまたまだった」で片づけられることにもなりかねない。日本にはHIIロケット後継の「HIIAシリーズ」で、アメリカやロシア、EUが先行している衛星打ち上げ事業に本格的に参入しようという野心があった。
 もう失敗するわけにはいかなかった。
 一一月一五日未明、午前三時。八号機のロケット主任、宇宙開発事業団・宇宙輸送システム本部の清水亨は、早々とブロックハウス(発射管制棟)に入った。
「八号機は前回の失敗を踏まえ、整備作業を初心に還って進め、信頼性を高めるんだということで万全の準備を行ってきました。そのためお金もかかり、時間もかかりましたが、おかげでその当日は本当に、僕の経験ではないぐらいトラブルが出ませんでした。まったくのオンスケジュールで、打ち上げまで一〇〇点満点の感じで持っていくことができました。やるべきことをやれば非常にきちんと行くもんだなと思ったのを覚えています」
 宇宙開発事業団の技術陣の一人、種子島宇宙センター発射管制課の青柳孝も、清水とほとんど同時にブロックハウスに入り、ロケットの各機器からのデータを受信するテレメータ室の、自分の持ち場に着いた。青柳はこの半年間、心休まることがなかった。
「八号機は、ロケットや衛星の不具合で打ち上げが再三延期になり、普通は三か月ぐらいで終わる発射場整備が半年ぐらい続いたので、その日まで精神的に非常に苦しい毎日だったという印象があります。でもそれも、もう今日が最後だ、今日こそこのロケットを上げてやるという気持ちでいました。発射台にあるロケットには、今日はちゃんと仕事しろよと声をかけましてね」
 未明から続けられた準備作業は順調に進み、午後四時二五分五〇秒、予定どおりその後の操作をコンピュータに委ねる自動発射手順に入り、一九〇秒からの自動カウントダウンを開始した。
「190、189、188、187……181、内部電源に切り替え180、179、178……」
 テレメータ室にカウントダウンの声が響き、打ち上げの時が迫っていることを意識させる。
「15、14、13、12、11、10……全システム準備完了、エンジンスタート……6、5、4、3、2、1、0、リフトオフ(離床)」
 打ち上げ六秒前、HIIロケット本体の下部中央に取り付けられたメインエンジン「LE‐7」に点火。LE‐7は、エンジン本体の高さ三メートル。小型ながら、ジェット機四台分の推進力を持つ高性能エンジンである。カウントダウン0で、LE‐7のノズルから、燃料の液体水素と液体酸素との反応ガスが猛烈な火柱となって噴射。同時にロケット下部両脇の固体燃料ロケットが火を噴いた。最大直径四メートル、全長五〇メートル、搭載した衛星や燃料を含め総重量二六三トンのHIIロケットの巨体が、ゆっくりと上昇を始めた。
「ロール開始」
「第一ワイア、グリーン(正常)。第二ワイア、グリーン」
「ピッチ開始」
「経路系正常、制御系正常、推進系正常」
 管制官が淡々とした声でやりとりするなか、HIIロケット八号機は空に向かって飛び立った。午後四時二九分だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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