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恋するバンビーノ【イラスト入り】

恋するバンビーノ【イラスト入り】


発行: リブレ
レーベル: ビーボーイノベルズ
価格:850pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

 高校生の剛虎は、実は『童貞★』という秘密を抱えていた。しかしそう見えない風貌により、かなりな経験者と周りには誤解されている。そんな彼が恋した相手は、年上でバリスタの馨。自分には若さと情熱と無垢な肉体があるのみと溢れんばかりの想いを伝え、恋人になったはいいが、どうキスすればいいのか分からない!! 独占欲だけが空回り、馨を押し倒すことが出来ない剛虎は!? そんな時、馨の元彼が現れて……。コミカル童貞ラブロマンス!
 (※本作品はイラスト入りです。電子書籍化して配信するにあたり一部単行本と異なる仕様がございます)

抄録

 「……して」 小声すぎて、聞こえない。剛虎は一歩近づいて、小糸に耳を向ける仕種をした。「え? なんですか?」「キスしてって言った。俺を恋人だと思うなら」「……!」 すぐには意味がわからなかった。この場面で出てくる言葉ではないと思っていたからだろう。理解が進むと、全身に鳥肌が立った。今までの軽い触れ合いのなかで、小糸がキスを求めていることには気づいていた。慣れないキスをしなければならないことに怖気づき、気がつかないふりをしてきたが、まさかこんなにはっきり言われるとは思わなかった。正面からの強打を食らい、剛虎はぐわんぐわんと頭を揺らす動揺を無表情の下に押し隠した。鳥肌は治まったものの、いやな汗が噴きでてくる。剛虎の計画としては、次の定休日に小糸のマンションにお邪魔して、そのときにキスもセックスも一気に決めるつもりだった。見かけ倒しの剛虎に、小糸があれ? と思っても、童貞隠蔽に編みだした台詞を駆使しつつ若さで押しきり、どうにかこうにか肉体関係を結ぶ作戦である。熟考の末、それが一番いい方法だという結論がでた。とにかく怒涛の勢いで攻めて、小糸に冷静さと考える時間を与えないほうがいい。姑息な作戦計画は剛虎のなかで密かに進行していたが、こうなると計画変更である。ここは覚悟を決めるときだ。いつまでも逃げてはいられないし、キスの方法だって、ちゃんと調べてきた。剛虎は極度の緊張で強張った両腕を伸ばし、小糸の肩を掴んだ。力が強すぎて、小糸がわずかに顔をしかめたことには気づかなかった。上半身をゆっくりと寄せていく。ことさら濃く感じられる、いつものいい匂いが鼻腔に満ちたときに、剛虎の下半身がドクンと脈打った。「……っ」 性的な反応にうろたえて身体が仰け反り、数センチまで迫っていた唇が遠ざかる。剛虎の目に、今にも泣きだしそうな小糸の表情が映った。しまったと思い、再チャレンジに向かったが、小糸はいつまでも剛虎の腕に掴まれてはいなかった。剛虎を突き放して拘束から逃れ、一定の距離を置いて対峙する。「できないんだろう。無理しなくていいよ。俺のことが好きでも、触るのはいやなんだろう? 俺が……俺が、男だから」「ち、違う!」 ひどい誤解に、剛虎は真っ青になった。「違わないよ。心ではできると思っても、身体が拒否してるんだ。さっきのことだけじゃない。俺が触れると、きみはいつもビクッてする。そんなにいやなら、はっきり言ってくれ。好きだと思ったけど無理だったとか、勘違いだったとか」「違います、小糸さん。無理でもないし、勘違いでもないんだ。ただ俺が……」 童貞なだけなのだ。恋愛経験が一度もなくて、素敵な恋人を失いたくないがために、一人でまごまごしているだけ。「ただきみが?」「俺が、ど……ど……、どう……っ」 小糸を誤解させ、傷つけてまで隠すことではない。打ち明けてしまいたいのに、なかなか言葉にならない。心の準備は、来週の定休日に照準を合わせていた。だが、告白してみせる。ここで。剛虎が深呼吸をして気を取りなおしている間に、小糸の態度はさらに硬化していた。「どう? どうしても男相手だと、その気にならない? どう頑張っても、キスできない? どうして小糸さんは女じゃないんだろう? このなかに当たりはある? それとも全部?」 小糸の自虐的な予想は、剛虎を驚かせた。剛虎が触れない理由をあれこれ思い浮かべて、彼は自分を追いつめていたのかもしれない。剛虎はそんなこと、なにひとつ考えていないばかりか、小糸の性器はどんな色と形をしているのだろうかと夢想し、自慰に耽っていたというのに。「全部外れです。そんなに長い台詞は入りません。あの、すみません、小糸さんを……」「謝るなよ! 俺が惨めになるだろ。短いなら、さっさと言って」「……あ、う」 そう言われると、さらに言いづらくなってしまう。こんな状況においては破格といえるほど小糸は待ってくれたが、剛虎は彫像のように固まったまま一言も発することができなかった。そして、皮肉なことに、その破格の時間は小糸を失望させ、二人の関係を考えなおさせるのには充分だったらしい。「もういい。そんなに言いたくないなら言わないでもいいけど、……少し距離を置いたほうがいいと思う、俺たち」「ま、待ってください! 俺の話を聞いてください」「さっきから聞こうとしてるのに、話さないのはきみのほうだろう」 小糸の口調はすでに冷静なものに戻っている。冷静に傷つき、怒っているのだ。「こみ入った事情がありまして……、じ、時間がかかるんです。距離を置くかどうかは、それを聞いてからにしてください」「やっぱり、なにかあるんじゃないか。俺に問題があるなら、はっきり言えばいい」「いや、小糸さんが問題なんじゃなくて、むしろ小糸さん次第っていうか」「だから、俺次第ってなんだよ」「それは……、あの……」 剛虎は懸命に弁解しようとしたが、肝心な理由が話せないかぎり、小糸の理解は得られそうになかった。両手を腰に当て、小糸は大きなため息をついた。「なにがそんなに言いづらいのかわからないけど、それが俺に言いたくないような事柄だってことはわかった。やっぱり、一度距離を置いたほうがよさそうだ。俺とのことを、きみが考えなおす時間をあげる。きみが……きみが別れたいって言うなら」「別れません! 考えなおす必要もないです。小糸さん、俺はあなたが……」 剛虎は小糸に手を伸ばしたが、小糸は怯えたようにあとずさった。「もういいってば! なにも言えないくせに、中途半端に優しくするな。どうでもいい話はこれ以上、聞きたくない。今日は帰ってくれ」 厳しい小糸の声に、剛虎はそれ以上追い縋ることができなかった。今の状況では、どれだけ言い訳をしても無駄な気がした。少し落ち着いて、打ち明ける用意ができてから、話し合ったほうがいいだろう。全身で剛虎を拒絶している小糸を見るのは、つらかった。だが、自分の意気地のなさが彼の誤解を招き、傷つけてしまったのだ。剛虎は悄然と頭を垂れて、休憩室のドアに向かった。

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