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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・スペシャル・エディション

白夜のプリンセス バイキングの花嫁たち I

白夜のプリンセス バイキングの花嫁たち I


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディションバイキングの花嫁たち
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 クリスティン・リマー(Christine Rimmer)
 ウォールデンブックスやUSAトゥデイ紙のベストセラーリストにたびたび登場する人気作家。アメリカ・ロマンス作家協会のRITA賞に作品がノミネートされ、ロマンティック・タイムズ誌でも賞を獲得した実力の持ち主。作家になるまで、女優、店員、ビルの管理人など実にさまざまな職業を経験している。すべては、作家という天職に巡り合うための人生経験だったと振り返る。オクラホマ州に家族とともに住む。

解説

 エリがある日帰宅すると、バイキングが待ち伏せしていた。その全身黒ずくめのたくましい大男は、王の戦士ハウクと名乗り、国に戻れという父王の命令を伝えに来たと言う。エリは父の顔さえ覚えていない。両親の離婚にともない、幼いころ北欧の王国からアメリカに移住したからだ。わたしたちをほうり出した父が、今さらなんの用なの? 王国には戻らないわ。エリがきっぱりと断って家から逃げ出そうと身をひるがえしたとき……。「お許しを、殿下」突如大男に押さえつけられ、目の前が真っ暗になった。

抄録

 このハウクへのとんでもない気持ちは、学生時代の恋のようなものだ。ぱっと燃えあがったと思いきや、すぐに冷める。禁断へのいざない。じきに忘れるだろう。
 彼の言うとおりかもしれない。必要なものをスーツケースに詰めて、やっとグランドリアへ向かう準備ができたと彼に告げるべきだ。
 けれども心の奥のどこかで、エリはかたくなに拒んでいた。必要に迫られるまで出発するつもりはなく、明日まで出発する必要はない。そこで、とうとう焼かずじまいだったチキンを冷凍庫に突っこむと、夕食に出かけるとハウクに言った。
 彼は異を唱えなかった。なにも言わなかった。もう何時間もそうしているように、彫刻みたいな口を閉じ、表情を封じこめたままだった。
 エリはハウクを連れて、オールドサクラメントで料理とサービスが評判のレストランへ向かった。給仕長がワインリストを持ってきたが、丁重に断る。
 確かにワインでも少し飲めば、すっかりぼろぼろになった神経が休まっただろう。だが、気を緩めるわけにはいかなかった。今晩、ベッドに入るときには、自制心を総動員する必要がある。ハウクが仕掛けてくるのが怖いのではない。彼はどんな衝動をも抑えることができる。
 エリが心配しているのは、ハウクではない。彼女自身だった。互いに後悔するようなことをせずに、今夜ひと晩を乗りきるつもりなら、みずからの手に負えない貪欲な心と、欲望にうずく体を相手に闘わなければならない。
 ハウクはウエイターと手短に、しかし礼儀正しく会話を交わした。だが、エリには話しかけなかった。テーブルについているあいだ、一度たりとも。はたから見たら、無理やり一緒に食事をさせられているか、あるいはちょっとしたけんかの真っ最中で、目下お互いにだんまりを決めこんでいるのだと思うだろう。どちらも、まさしくそのとおりと言える。
 食事は早々に終わった。まだ八時十五分だった。エリはアパートメントに戻りたくなかった。いますぐには。帰宅は遅いに越したことはない。せめて十二時までは玄関のドアを開けたくなかった。へとへとに疲れてしまいたかった。
 ところが、さっきから体じゅうの神経が騒いでいる。二度とふたたび眠れないかと思うほどだ。おまけに、食事のときに水を二杯飲んだのも失敗だった。
 やむなくエリは化粧室に寄った。
 ハウクは外の廊下に立っていた。婦人用化粧室のドアの前で待ち伏せして、せいぜい恥をかけばいい。エリはトイレをすませ、手を洗いながら、洗面台の上の大きな鏡に映る浮かない顔に何度か目をやった。
 タオルドライヤーで手を乾かしていると、中央の個室の上に、小さな窓があるのに気づいた。一枚のすりガラスで、上部が蝶番式になった、ざっと五十センチ四方の窓だった。掛け金をはずして押せば、開くようになっている。
 外はおそらく路地だ。それほど苦労しなくても、よじのぼって、窓をくぐり抜けて……。
 どうするの? 逃げるの? 身を隠して、母やヒルダや姉妹を死ぬほど心配させるつもり? 警察へ行く? 父に誘拐されかけている、守ってほしいと訴える?
 すべてが明らかになれば、警察は信じてくれるかもしれない。そうすれば守ってもらえるだろう。絶好のチャンスだ。マスコミの目が集まって、自分や家族の写真がありとあらゆるゴシップ雑誌に載ったら、父はなにをたくらんでいるにせよ、あきらめざるをえなくなる。
 わたしを取り逃がせば、ハウクの面目は丸つぶれだ。そしてわたしはここ、サクラメントにとどまる。グランドリアを目にすることはない――それに父の顔も。ハウクにも二度と会わないだろう。
 ドライヤーは自動的に切れていた。化粧室は物音ひとつしなかった。
 そのとき、背後で入口のドアがひらいた。エリは振りかえった。ハウクだ。エリを見て、中央の個室の上にある窓に目を向け、彼女に視線を戻す。
「わかったわよ」エリはつぶやいた。「確かにその気になった。でも、ちゃんとここにいるでしょう」
「失礼ですけど」小柄できれいな赤毛の女性が、ハウクの横の開けっぱなしの入口に立っていた。「ドアの表示が読めないのかしら。婦人用。どう見てもあなたは違うわ」
 ハウクが外に出ると、入れ替わりに赤毛の女性が入ってきた。彼を廊下に残したまま、ドアが閉じられた。赤毛の女性は手で顔をあおいでみせた。
「いまの、あなたの連れ? まあ、なんて、なんて……」
 エリは答えず、ただほほえんだ。そしてバッグを肩にかけ、外に出て見張り番と合流した。
 駐車場に行くと、係が車をまわしてくれた。チップを握らせてから、運転席に座る。ハウクは助手席に体を押しこんだ。
 エリは車を走らせた。オールドサクラメントを出て、市街を抜け、街の灯りをあとにして。
 一度ならず、ハウクの重苦しい視線が突き刺さるのを感じた。どこへ向かっているのか、いぶかっているのだ。しかし彼は尋ねなかった。
 むしろ好都合だった。自分でもわからないのだから。エリはハンドルを握り、前方の道路を見つめたまま、ひたすら走りつづけた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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