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竪琴を奏でる騎士 戦士に愛を

竪琴を奏でる騎士 戦士に愛を


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル戦士に愛を
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マーガレット・ムーア(Margaret Moore)
 俳優エロール・フリンに憧れ、『スター・トレック』のミスター・スポックに恋をした少女は、やがて謎めいた魅力的な悪漢をヒーローに仕立てたロマンス小説を書くことに夢中になった。カナダのオンタリオ州スカボローに夫と二人の子供、二匹の猫と暮らしている。読書と裁縫が趣味。

解説

 ■修道院から夢見た自由な生活はそこにあるはずだった……。

 ■十三年間修道院で暮らしてきたエリザベスは、おじの出現に胸を躍らせた。おじは縁組を整えていた姪が別の男のもとへ逃げ出したため、もうひとりの姪である彼女に白羽の矢を立てたのだ。エリザベスにとっては願ってもないチャンスだった。修道院でのつらく冷たい日々から抜け出せるのなら、相手がどんな人であっても、結婚を成功させなければ。しかし、おじとともに城に到着した彼女を待っていたのは、誰からも恐れられる騎士、レイモンだった。首にはおどろおどろしい傷痕、しぼり出すようなつぶれた声、そして蔑むような冷酷な瞳……。ああ、また誰かに脅える日々を送ることになるのかしら?

抄録

 カークヒーズ卿はゆうべと同じ黒の長いチュニックを着て、横に愛犬を従え、扉の近くから彼女を見ている。
 犬は笑うことができるのだろうか。
 わたしの夫は笑顔になれないようだ。「この犬を恐れることはない」彼は言った。
 エリザベスは重たい上掛けをあごのところまで引っぱりあげて、ぬくもりを楽しんだ。「怖がらないようにするわ。でも、以前にかみつかれたことがあるの」
 どうせそのうちに傷跡を知られてしまうのだ。エリザベスはあきらめ、思いきってシュミーズの首のところの紐をほどいて左肩を出し、修道院長が飼っていたわがままで獰猛な犬にかまれてできた、引きつった赤い傷跡を見せた。
 カークヒーズ卿は目を細めながらベッドに近づいてきた。「犬にかまれたのか?」
 エリザベスはうなずいた。
 カークヒーズ卿はかがんで、エリザベスのむきだしの肌をしげしげと見た。夫に見られるのが恥ずかしいのはもちろんだが、別の傷跡も見られるかもしれないと気になって、エリザベスは急いでシュミーズをもとに戻した。
「別の傷はなんなんだ?」
 それもいずれ見つかるだろうと思っていたが、エリザベスは夫の揺るぎない視線と視線を合わせることができなかった。「修道院のものを盗んだので、お仕置きを受けたの」
「きみが盗みをしたのか?」
 エリザベスは肩をすくめた。「わたしたちはいつもおなかをすかせていたの。小さな子が泣いたので……」
「食べ物を盗んだのか?」カークヒーズ卿はエリザベスの隣に腰を下ろした。
 エリザベスは目を上げたが、カークヒーズ卿が彼女の行為を認めるか、それとも、不正行為だと嫌悪感をあらわにするか、わからなかった。神に仕える人間から盗むというのは重大な罪だが、エリザベスは一瞬たりとも後悔したことはなかった。「できるときに、できるだけもらいたいですもの」
「ほかの者たちのためか?」
 わたしはひと口も食べなかったわ、と言いたいのはやまやまだったが、こちらの心を見透かすような視線を浴びせるカークヒーズ卿に嘘をついたところで、明かされてしまうのはわかっていた。「わたしも食べたわ」
 カークヒーズ卿はエリザベスの手を取り、彼女の細い腕をてのひらで触りながら調べた。たこのできたその手はごつごつしていた。「少しだけなんだな」
「必要なだけ」そう答えると、彼が腕を放してしまうのではないかと心配になり、エリザベスは小さな声で言った。
 カークヒーズ卿はエリザベスの目を見た。「キャドマスを部屋の外で寝かせることにしよう」
 エリザベスはほっとして、思わずため息をもらした。「ありがとう。この犬がいつまでも部屋の外で眠らなくていいように、わたしもなるべく慣れるよう努力するわ」
 カークヒーズ卿が軽くほほえむと、エリザベスの手足がかっと熱くなった。
 そのとき、中庭からにぎやかな音が聞こえ、カークヒーズ卿の注意が中庭に向いた。彼はエリザベスの手を放し、外を見ようと窓に近づいた。
 エリザベスはひとり取り残されたような気分になり、そろそろミサの時間だろうと思って上掛けをはがしたが、空気が冷たくて、体を震わせた。
「そこにいなさい」カークヒーズ卿がエリザベスのほうを向いて、犬に命令するときと同じように命令した。
「どうかしたの?」エリザベスは警戒しながらきいた。
「ベッドにいるんだ」
「もうかなりの時間になってるはずよ」エリザベスはむきだしの足を床に下ろして、その冷たさに息をのみ、両腕を体に巻きつけてから言った。「しなければならないことがあるわ。いつまでもここにいたら、召使いに怠け者と思われてしまう。なにごとも初めが肝心よ」
「だれもきみを邪魔しないよ」
「えっ?」
「きょうは好きなだけベッドにいなさい。起きたくなったら、ルアルを呼べばいい」
 これほど驚いたことはなかった。やわらかく暖かなベッドに戻っていいということもそうだが、彼がベッドにいろと命令したことも。「でも、ミサが──」
「もう終わった」
「ほんとうに?」
 カークヒーズ卿はうなずいた。
「わたしが召使いたちにだらしのない女だと思われたら気になるでしょう?」
 カークヒーズ卿は首を横に振った。
 むろん召使いがどう思おうと、彼には関係ないのだ。
 レディ・キャサリンが言っていたように、わたしも召使いのことなど気にしないほうがいい。それでは、せっかく彼も言ってくれたことだし、暖かいベッドでのんびりしていよう。
 エリザベスはベッドにはって上り、羽毛のマットレスにゆったりと横たわり、夫ににこやかな笑みを向けた。「ありがとう。こんなぜいたくがしたいと、何度も夢に見たのよ」
「眠るのか?」
「眠る? まさか。眠ったら、せっかくふかふかのベッドでのんびりしているのに、それもわからなくなるわ」
 カークヒーズ卿の口の端が上がり、またほほえみが浮かんだ。「好きなようにしなさい」
 エリザベスはうれしそうにため息をついた。「最初は美しいドレスをいただき、今度はのんびりできるなんて! 心からお礼を言います。それから、わたしと結婚してくださってありがとう」
 カークヒーズ卿はなにも答えずに、寝室を出ていった。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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