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和書>小説・ノンフィクション>恋愛小説>ロマンス小説

解説
■鬼才E・スピンドラーが圧倒的な筆力で描いた代表作! 平凡な少女に訪れる愛と波瀾に満ちた日々の幕開け――
■ミシシッピ州の貧しい家に生まれ、蔑みの目を向けられて育ったやせっぽちのベッキー・リンは兄の友人たちにレイプされ、絶望のどん底で故郷の町を出た。行くあてのない彼女は、雑誌の中でいつも輝いていた憧れの地ハリウッドへ向かった。そしてひとりのカメラマンとの出会いが、否応なく16歳の少女を愛憎劇の渦中へ巻きこんでいく……。運命にもてあそばれながらも夢と真実の愛を追いつづける少女を描いたドラマティック・ラブストーリー、待望の復刊。
■ミシシッピ州の貧しい家に生まれ、蔑みの目を向けられて育ったやせっぽちのベッキー・リンは兄の友人たちにレイプされ、絶望のどん底で故郷の町を出た。行くあてのない彼女は、雑誌の中でいつも輝いていた憧れの地ハリウッドへ向かった。そしてひとりのカメラマンとの出会いが、否応なく16歳の少女を愛憎劇の渦中へ巻きこんでいく……。運命にもてあそばれながらも夢と真実の愛を追いつづける少女を描いたドラマティック・ラブストーリー、待望の復刊。
抄録
ベッキー・リンは呼び鈴を鳴らし、待った。数分後、建物の中でドアがばたんと閉まる音が聞こえた。ベッキー・リンは眉をひそめ、腕時計を見た。心臓がどきどきしはじめた。なにか変だ。
ジャックが戸口に現れた。シャワーを浴びていたらしく、髪が濡れている。上半身裸で、首にタオルをかけ、ジーンズをスナップもとめずに腰に引っかけてはいている。足は裸足だ。
ジャックはにやりとして、網戸を押し開けた。「やあ、ベッキー・リン」
驚き、狼狽して、ベッキー・リンは口から悲鳴をもらした。そして戸口からあとずさった。「ご、ごめんなさい。あの、十一時って言ったと……思って」
「ああ、そう言った。さっきブリアナが遅れるって電話してきたんで、時間をつぶしてたんだ」ジャックはベッキー・リンに視線をすべらせた。「君は来ないって聞いたよ」ベッキー・リンは腕を組んだ。「気が変わったの」
「そのようだな」ジャックはまたにやりとした。「入って。シャツをはおってくるよ」ベッキー・リンは戸口で立ちどまった。どうしてここへ来たりしたの? いったいなにを考えていたの?
「ベッキー・リン?」ベッキー・リンはかぶりを振った。「いいの。私、ここで待ってます」
ジャックは肩をすくめた。「ご自由に。僕は中で支度をするから」
ジャックは背を向けて中に入ると、網戸を開けたまま行ってしまった。彼を見送りながら、ベッキー・リンは心臓が激しく打っているのを感じていた。この音は彼にも聞こえたに違いない。
ベッキー・リンは大きく息を吐いて、恐怖からくる悪寒を消そうと腕をこすった。ジャックは私を誘いこもうとはしなかった。臆病だと言ってなじりもしなければ、からかいもしなかった。そう、彼は私をこわがらせるようなことはなにもしなかったのだ。それでも、やっぱり……。
ベッキー・リンは唇を噛んで中をのぞいた。入ってすぐが小さな休憩室のようで、その奥がスタジオになっているらしい。右側はベッドルームだ。乱れたままのベッドが見える。左側はキッチンと食事をするスペースのようだ。小さな丸テーブルの真ん中に、蓋の開いたコーンフレークの箱があって、その隣にマグカップが見えた。テーブルのそばの床には、『ロサンゼルス・タイムズ』が積んである。
ベッキー・リンはもう一度スタジオの方へ視線を戻した。あちこち動きまわっている音と、のんきそうな口笛が聞こえた。機材がどんどん用意されていく。照明スタンド、三脚、なんだかよくわからないものがのっているカート。
視界をジャックが横切った。シャツを着てローファーをはいていたので、ベッキー・リンはほっとした。そのとき彼が急にこちらを向いたので、さっと身を隠した。心臓が口からとび出しそうだ。ベッキー・リンは腕組みをして、自分をとらえて放さない好奇心と闘った。思いきって中へ入りたいという気持と闘った。
この前向こう見ずなまねをしたときは、恐ろしい犠牲を払うことになったのだ。
ベッキー・リンは大きく息を吸うと、また中をのぞいた。ジャックの姿は見えないが、物音が聞こえている。数分たった。ベッキー・リンはどっちつかずのばかみたいな気分で、戸口に突っ立っていた。胸が引き裂かれそうだ。
ひくひくしているみぞおちのあたりに手を当てた。男がみんな、私を傷つけようとするわけではない。男という男が、リッキーやトミーのようなけだものというわけではない。
ついにベッキー・リンは深く息を吸って、中へ足を踏み入れた。ドアは大きく開けたままにしておいた。もしジャックが迫ってきたら、思いきり悲鳴をあげよう。もしドアを閉めようとしたら、急いで逃げ出そう。
休憩室を通り抜け、スタジオの入口に近づいたとき、自分が忍び足で歩いていることに気づいた。ジャックが顔を上げた。目が合うと、彼はほほえんだ。ブルーの目の端にしわが寄る。「我慢できないだろうと思ってたよ」
ベッキー・リンは自分を守るように、すばやく腕組みをした。「そう? どうして?」
ジャックはスタジオの中を歩きまわっている。「こいつが君を引き寄せるからさ。君は写真に興味があるんだろ」
ベッキー・リンは顎を突き出した。「そんなこと、どうしてわかるの?」
ジャックはカメラの裏蓋を開けると、フィルムを入れてまた閉めた。
フィルムを巻きながら、ベッキー・リンにほほえみかける。「ここに来たじゃないか。理性に逆らってね」
ジャックが来させたのだ。その事実を認めるように、ベッキー・リンの唇の端が無意識に上がった。それを見て、彼はにっこりした。
「それに」ジャックはカメラを置いた。「君以外の人はみんな、ブリアナの写真を見て、すばらしいと言っていただろうね。ほんとにそう思っただろうから。でも、君には見る目がある。どこで勉強したんだい?」「勉強なんてしたことないわ」「君のお父さんはカメラマンかなにか?」そのなにかっていうのが正解ね。ベッキー・リンは首を振った。「スタジオに入るのは、今日が初めてよ。そもそも……」顎を少し持ちあげる。「写真を撮ったことも一度もないわ。そんな機会がなかったから」
*この続きは製品版でお楽しみください。
ジャックが戸口に現れた。シャワーを浴びていたらしく、髪が濡れている。上半身裸で、首にタオルをかけ、ジーンズをスナップもとめずに腰に引っかけてはいている。足は裸足だ。
ジャックはにやりとして、網戸を押し開けた。「やあ、ベッキー・リン」
驚き、狼狽して、ベッキー・リンは口から悲鳴をもらした。そして戸口からあとずさった。「ご、ごめんなさい。あの、十一時って言ったと……思って」
「ああ、そう言った。さっきブリアナが遅れるって電話してきたんで、時間をつぶしてたんだ」ジャックはベッキー・リンに視線をすべらせた。「君は来ないって聞いたよ」ベッキー・リンは腕を組んだ。「気が変わったの」
「そのようだな」ジャックはまたにやりとした。「入って。シャツをはおってくるよ」ベッキー・リンは戸口で立ちどまった。どうしてここへ来たりしたの? いったいなにを考えていたの?
「ベッキー・リン?」ベッキー・リンはかぶりを振った。「いいの。私、ここで待ってます」
ジャックは肩をすくめた。「ご自由に。僕は中で支度をするから」
ジャックは背を向けて中に入ると、網戸を開けたまま行ってしまった。彼を見送りながら、ベッキー・リンは心臓が激しく打っているのを感じていた。この音は彼にも聞こえたに違いない。
ベッキー・リンは大きく息を吐いて、恐怖からくる悪寒を消そうと腕をこすった。ジャックは私を誘いこもうとはしなかった。臆病だと言ってなじりもしなければ、からかいもしなかった。そう、彼は私をこわがらせるようなことはなにもしなかったのだ。それでも、やっぱり……。
ベッキー・リンは唇を噛んで中をのぞいた。入ってすぐが小さな休憩室のようで、その奥がスタジオになっているらしい。右側はベッドルームだ。乱れたままのベッドが見える。左側はキッチンと食事をするスペースのようだ。小さな丸テーブルの真ん中に、蓋の開いたコーンフレークの箱があって、その隣にマグカップが見えた。テーブルのそばの床には、『ロサンゼルス・タイムズ』が積んである。
ベッキー・リンはもう一度スタジオの方へ視線を戻した。あちこち動きまわっている音と、のんきそうな口笛が聞こえた。機材がどんどん用意されていく。照明スタンド、三脚、なんだかよくわからないものがのっているカート。
視界をジャックが横切った。シャツを着てローファーをはいていたので、ベッキー・リンはほっとした。そのとき彼が急にこちらを向いたので、さっと身を隠した。心臓が口からとび出しそうだ。ベッキー・リンは腕組みをして、自分をとらえて放さない好奇心と闘った。思いきって中へ入りたいという気持と闘った。
この前向こう見ずなまねをしたときは、恐ろしい犠牲を払うことになったのだ。
ベッキー・リンは大きく息を吸うと、また中をのぞいた。ジャックの姿は見えないが、物音が聞こえている。数分たった。ベッキー・リンはどっちつかずのばかみたいな気分で、戸口に突っ立っていた。胸が引き裂かれそうだ。
ひくひくしているみぞおちのあたりに手を当てた。男がみんな、私を傷つけようとするわけではない。男という男が、リッキーやトミーのようなけだものというわけではない。
ついにベッキー・リンは深く息を吸って、中へ足を踏み入れた。ドアは大きく開けたままにしておいた。もしジャックが迫ってきたら、思いきり悲鳴をあげよう。もしドアを閉めようとしたら、急いで逃げ出そう。
休憩室を通り抜け、スタジオの入口に近づいたとき、自分が忍び足で歩いていることに気づいた。ジャックが顔を上げた。目が合うと、彼はほほえんだ。ブルーの目の端にしわが寄る。「我慢できないだろうと思ってたよ」
ベッキー・リンは自分を守るように、すばやく腕組みをした。「そう? どうして?」
ジャックはスタジオの中を歩きまわっている。「こいつが君を引き寄せるからさ。君は写真に興味があるんだろ」
ベッキー・リンは顎を突き出した。「そんなこと、どうしてわかるの?」
ジャックはカメラの裏蓋を開けると、フィルムを入れてまた閉めた。
フィルムを巻きながら、ベッキー・リンにほほえみかける。「ここに来たじゃないか。理性に逆らってね」
ジャックが来させたのだ。その事実を認めるように、ベッキー・リンの唇の端が無意識に上がった。それを見て、彼はにっこりした。
「それに」ジャックはカメラを置いた。「君以外の人はみんな、ブリアナの写真を見て、すばらしいと言っていただろうね。ほんとにそう思っただろうから。でも、君には見る目がある。どこで勉強したんだい?」「勉強なんてしたことないわ」「君のお父さんはカメラマンかなにか?」そのなにかっていうのが正解ね。ベッキー・リンは首を振った。「スタジオに入るのは、今日が初めてよ。そもそも……」顎を少し持ちあげる。「写真を撮ったことも一度もないわ。そんな機会がなかったから」
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