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失った愛の数より

失った愛の数より


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

 パリの美術専門の保険会社で鑑定士をしているグレースは、思いがけない仕事の依頼に興奮ぎみだった。依頼人はハリス・タヌス。亡き父親が残した絵のコレクションの鑑定をしてほしいという。グレースはハリスが住む地中海のアルハジャ島へ赴いた。だがハリスの父親は悪徳実業家として恐れられていた人物で、莫大な富を相続したばかりの彼を信用していいのか、グレースは迷った。ところが実際の彼はハンサムで優しい、魅力的な男性で、時折見え隠れする冷たい雰囲気が、グレースをよけいに惹きつけた。だめよ、男の本心など当てにしては。まして複雑そうな大富豪なんて! 今なお心に痛手を残す結婚の記憶が、彼女の想いを抑えつけていた……。

抄録

「グレース」
 ハリスに呼びかけられ、グレースは彼の手を取った。ハリスの指が、優しくしっかりとグレースの手を握り、彼は大丈夫かどうか確認するかのように、じっと彼女を見た。昨日、グレースが手を引き離したのを思い出しているのかもしれない。
 グレースは息を吸いこんで、問いかけるような彼の視線を受け止めた。そしてうなずいた。

 ハリスは意気揚々と、地下から陽光あふれる新鮮な外気の中へ、グレースを連れ出した。グレースのために何かに打ち勝った気がしていた。彼女が隠し持つ弱さを察知し、彼女を守りたい、彼女に喜びを与えたいと願った。
 一日じゅうグレースのことを考えていた。彼女を傷つけた男のことを考え、彼女の唇はどんなに柔らかいだろうと思いを巡らした。
 長いあいだ、女性と深い関係になることはおろか、守りたいと思ったこともない。そこまで強い気持ちを持ったのは、妹のジャミラに対してだけだった。
 その結果、どうなった?
 ハリスはその思いを頑なに退けた。苦い過去がよみがえり、感情的になるのは、きっとこの島のせいだろう。そして、この女性のせいだ。
 それもいずれは消えると、ハリスは考えた。いずれはアルハジャ島を離れ、いつもの生活に戻る。
 だが、グレースへの思いは一時的なものとは思えなかった。すでにそれ以上の意味を持ち始めていて、それを警戒するか、いらだつか、おもしろがっていいものかどうか決めかねていた。おそらくハリスは、三つ全部を感じていた。
 玄関ホールで、グレースは足を止め、手をハリスの手から引き抜いた。「着替えてくるわ」
「プールで待ってるよ」
 十五分後、グレースはぎこちない様子でプールに現れた。ハリスはプールサイドに座って脚を水の中に入れ、最後の陽光を楽しんでいた。すぐにグレースの姿に気づいた。
 彼女の水着はぶざまな代物だった。地味な黒で、胸元はつまり、腿を覆うようにスカートがついている。祖母の時代の水着のようだ、とハリスは思った。ただし、とてもセクシーな祖母だった。彼の口元がほころんだ。グレースはどうしても自分の魅力を隠したいらしいが、おかしな水着でさえその魅力を消すことはできない。長くほっそりとした脚が優雅に伸び、豊かな体のラインが魅力的だった。
 グレースはハリスの視線を感じて体をこわばらせたが、あえて背筋を伸ばした。ハリスは手を差し出したが、グレースはそれを無視し、プールへ下りる階段のほうへ向かった。足先を水に入れ、それからおずおずと一段下りて足首まで入った。
「どうした?」ハリスはからかった。
「ごめんなさい、慣れていないの」
「泳げるって言ったじゃないか」
 グレースはもどかしげにかぶりを振って、彼とのあいだを指し示した。「こういうのに」
 もちろん、ハリスにはわかっていた。グレースは感じている。二人が水着姿で触れ合えば、どんなに熱くなるかを。ハリスは、グレースが恐れていることを察した。それを見て取り、いきなり腰までの深さのプールに入ってグレースのほうへ歩きだした。グレースは目を見開いて、近づいてくる彼を見ていた。ハリスは一メートルほど手前で立ち止まり、小さな水しぶきをグレースにかけた。
「何をするの?」グレースは驚いた。
「ふざけてるんだ。いけないか?」
 グレースは口元をこわばらせて顔をそむけた。
 ハリスはまたグレースに水をかけた。グレースの目がきらめくのを見て、ハリスはほっとした。
「どうしてもふざけたいのね?」
 ハリスは心から彼女とふざけ合いたかった。待っていると、グレースは水に指先を入れた。ハリスが美しい手に見とれているうちに、突然グレースはその手を上げて、手のひらを水面に強く打ちつけた。大きな波しぶきが立ち、ハリスは頭からずぶぬれになった。まったく予想していなかった展開に、彼は思わず笑い声をあげた。
 顔を手でぬぐい、にやりとしたハリスを見て、グレースはためらいがちにほほ笑んだ。
「やったな」ハリスは言った。その声は低くかすれていた。
 みっともない水着を着ていても、グレースは信じられないほど魅力的だった。ハリスはとにかく彼女が欲しくて、一歩前に出た。グレースはじっとしている。彼はまた一歩踏み出し、身をかがめてキスをした。
 唇がかすかに触れ合っただけだった。それでも、グレースは身を震わせながら唇を開いた。ハリスは手を彼女の首筋にあてがい、なめらかな肌の感触を味わった。それは数秒ほどだったが、永遠とも一瞬とも感じられた。そして唐突に終わった。
 グレースがあえぐような声を出し、ショックと怒りをこめた目で彼をにらみつけた。
「グレース……」
 ハリスはそれ以上何も言えなかった。グレースはプールから上がり、ぬれたタイルで滑って膝を片方ぶつけたが、すぐに立ち上がって屋敷に駆け戻った。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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