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砂漠の君主

砂漠の君主


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・パーマー(Diana Palmer)
 シリーズロマンスの世界で今もっとも売れている作家の一人。総発行部数は4200万部を超え、ニューヨークタイムズを含む各紙のベストセラーリストにもたびたび登場。かつて新聞記者として締め切りに追われる多忙な毎日を経験したことから、今も精力的に執筆を続けている。ジョージア州在住。大の親日家で、日本の言葉と文化を学んでいる。家族は夫と息子の三人。

解説

 親友が中東小国のシークの秘書に採用されたため、グレッチェンは旅に同行して束の間の観光を楽しむつもりでいた。だが途中で緊急連絡が入り、親友は帰国を余儀なくされてしまう。「ねえ、私のふりをして、代わりにシークのもとで働いてくれない?」無茶なことを頼んで親友は慌ただしく帰途につき、一人異国に残されたグレッチェンは途方に暮れた。そんな彼女の前に、高級スーツに身を包んだハンサムな紳士が現れる。まさか彼こそが親友の雇い主で黒い噂をもつシーク、フィリップだとは夢にも思わず……。エキゾチックな長編傑作。

抄録

 立ち上がろうとすると、彼は相変わらず礼儀正しく椅子を引いてくれた。そうした古風なマナーが身についているらしい。ロビーに至る低い階段を上るときも、肘に手をかけていてくれた。
「ぼくはこれで失礼する」フィリップはグレッチェンを見ずに言った。「今夜は仕事上の約束があって、どうしても行かなくてはならないんだ」
「ええ、わたしのことはご心配なく。今日一日、とても楽しかったわ。ありがとうございました。ホテルの近くでまたお会いすることがあるかも……」
 彼は急に足を止め、グレッチェンを脇へ引っ張っていって厳しい目で見下ろした。「もうぼくと一緒にいるのには飽きてしまったのかい?」
 グレッチェンの顔はありありと驚きを示している。「わ……わたしは、あなたが飽きてしまったのではないかと……」彼女は言いよどんだ。
 フィリップは肩の力を抜き、声をひそめて言った。「そうだったら、きみにとっては幸いだったのに」
「何を気になさってるの? 話して」グレッチェンは大胆にたずねた。
「それは言えない」フィリップは腕時計に視線を落とした。「明日はボヨに頼んでカーペットのショールームへ行こう。早くは出られないんだ。朝食の約束があるのでね。十時にロビーで会わないか?」
「いいわ。十時ね」グレッチェンはうれしさを抑え切れず夢中で答えた。「待ってるわ」
 彼はやさしくほほ笑んだ。「きみ、何かあるといつもそんなにわくわくするの?」
「ええ」グレッチェンはおずおずと言った。「普段面白いことがないから。兄もわたしも貧乏して育ったので、多くを期待しないようになったの。たぶん、わたしたちは普通の人より物事のありがたみを感じていると思うわ。それほど厳しい生活をしてきたのよ」
 フィリップの黒い目には、真剣な表情が浮かんでいる。「ぼくもひどい貧困の中で育った。だから、なんとかして国のみんなを貧困から救わなくてはいけないと思っている。その鍵になるのは教育なんだよ、グレッチェン。いい学校と優秀な先生がいなくてはいけない。学校には、最新科学技術を導入する必要がある。特にコンピューターを」
 グレッチェンはにっこりした。「そうすれば、世界市場で戦えるというわけ?」
 彼はうなずいた。「そのとおり。生きている間、二度と餓死する子供を見たくない」
 グレッチェンは息をのんだ。苦境にあえぐ若いフィリップの姿が目に浮かぶ。
「思いやりがあるんだね」彼は静かに言った。「カーウィーの人間は幸せだ。こんなやさしい心の持ち主を惹きつけたんだから」
「そこが問題なのよ。先方はマギーが来ると思っているんですもの。大人で、旅慣れていて、企画やまとめ役の上手な人が」
「企画やまとめ役は勉強すればできる。シークはきみに教える間……すごく楽しい思いをするだろう」
「シークはハーレムを持っているの?」グレッチェンが不安げにたずねると、フィリップは大声で笑いだした。
「いや、持っていない。彼は現代的な支配者だからね」
「ああ、よかった!」
「ということは、彼のベッドを暖める気はないんだな?」
 フィリップにからかわれ、グレッチェンは顔を赤らめた。「やめて。わたしは接客用の秘書をするのよ。スキャンダルをまきに来たんじゃないわ」
 フィリップはうなずいた。「わかってる」彼がホテルの接客係を見ると、相手も見返して何やらジェスチャーをした。二人の間で、無言の会話が交わされたように見える。「一人でホテルを出てはいけないよ」彼は念を押した。
「ええ、夜はね」
「昼間もだ。エレベーターまで送っていこう。ボヨがホテルのリムジンに乗って待っているんだ」フィリップはグレッチェンの柔らかな手を取って口づけし、指の関節の辺りに軽く唇をすべらせた。「それじゃ、明日」
「ええ」グレッチェンは全身に快い震えを覚え、彼の視線を受け止めながら息をはずませた。「明日」
 彼は温かい笑顔を見せ、背を向けて歩み去った。いつもながら、その姿には気品が漂っている。グレッチェンは彼を見送り、長々とため息をついた。わずかな時間で、わたしの人生はがらりと変わった。フィリップは、わたしがテキサスを知っている以上に女性をよく知っている。そういう男性と休暇を過ごして、後悔する結果にならなければいいけれど……。でも、たとえ何があろうと、彼と一緒にいる楽しさは否定できない。
 グレッチェンはエレベーターで部屋に戻り、服を脱いだ。まだ時間は早いが、とにかく寝ることにしよう。今すぐ眠れば、いつまでも起きているより早く明日が来る。明日が待ち遠しい。マギーのことが頭に浮かぶ。かわいそうなマギー。少なくとも、帰路の半分までは行ったに違いない。
 明かりを消し、グレッチェンは頬の下に手を当てて目を閉じた。その手には、フィリップの引き締まった唇の感触が残っている。彼は、とてもやさしくキスしてくれた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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