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美酒の甘き香り 戦士に愛を

美酒の甘き香り 戦士に愛を


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル戦士に愛を
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マーガレット・ムーア(Margaret Moore)
 俳優エロール・フリンに憧れ、『スター・トレック』のミスター・スポックに恋をした少女は、やがて謎めいた魅力的な悪漢をヒーローに仕立てたロマンス小説を書くことに夢中になった。カナダのオンタリオ州スカボローに夫と二人の子供、二匹の猫と暮らしている。読書と裁縫が趣味。

解説

 ■美酒の甘き香りに酔いし狂熱の一夜。

 ■偉大な父と個性的な兄たちのもとで育ったトリスタンは真面目に武芸の腕を磨きながら、片田舎のウェールズなどではなく国王のいるイングランドの宮廷での立身出世を狙っていた。そのためにはノルマン人の有力貴族の娘と結婚するのが手っ取り早い。折しも父の城クレイグ・フォアーには、格好の客人が来ている。サー・エドワード・ドゥーローの娘レディ・ロザムンドなら美人だし、縁戚関係も完璧だ。ところが彼らを招いての祝宴のあと、トリスタンは城壁の陰で待ち伏せしていた女にいきなりキスをされた。その女は……メア! 最高級の酒を造る奔放な美女は、人違いでトリスタンに身を投げかけたのだ。一度燃え上がった欲望の炎は消せず、二人は情熱のまま愛し合うが……。

抄録

 そのとき、急に二本の腕が伸びてきたかと思うと、トリスタンの毛織りのチュニックをつかんで、さらに暗いところに彼を引きずり込んだ。トリスタンが叫ぶ前に、襲った人物が豊満な体を押しつけ、情熱的なキスをしてきた。
 それは男ならだれでも夢に見るキスだった。すばらしいキス。ぴたりと合わさっていながら、やわらかさを感じさせるキス。熱い欲望に突き動かされた女の唇の動きに、トリスタンは息ができなくなった。女の口は蜂蜜のように甘く、香辛料のようにぴりりとからい。まるで蜂蜜酒のようだ。女の髪の先端がトリスタンの頬をくすぐった。
 こんな口づけをされれば、男は酔っぱらったようになってしまう。
 トリスタンの体のなかで熱いものがふくらんできた。彼は形のいい女の体にまわした両腕に力を込めながら、相手がだれなのか、頭をめぐらした。
 レディ・ロザムンドか? 彼女は恥ずかしがり屋だから、こんなはしたないまねはしない。それに、彼女ならワインの味がするだろう。
 召使いの女のひとりか? たしかにそうかもしれない。こんな大胆なふるまいに及ぶ者もいるだろう。
 気になるのか?
 蜂蜜酒の刺激の強いにおいが夜の空気とまじり合い、それがトリスタンの体の隅々にまで溶け込んでしまったようだ。彼は思いもよらぬ熱いひとときに身をまかせて楽しんだ。
 そのとき、キスが始まったときと同じように、相手の女が唐突にトリスタンを押しのけた。「イーヴォではないじゃない!」女が怒ったように叫んだ。その声を聞いたとたんに、トリスタンは女の正体がわかった。
 トリスタンは悪態をついた。蜂蜜酒のにおいを放つ体と、蜂蜜の味のする唇の持ち主がだれなのか、わからないとはどうかしていた。
「なんだ、メアではないか!」トリスタンはメアのほっそりした肩をつかんで、声を荒らげた。「こんなところでなにをしているんだ?」
 メアは女で、しかもまだ若くて未婚だが、エールと蜂蜜酒の醸造で生計を立て、ひとりで立派に生きている。あたりは真っ暗で彼女の姿は見えないが、彼女が祝宴に来ていたことを、トリスタンは知っていた。高貴な生まれの女たちが着るような、緑色と金色の縁飾りがついた真紅の絹の上等なドレスに身を包んだ彼女を、見のがすはずはない。彼女によく似合うそのドレスは、均整のとれた体型を強調し、わざわざ男たちの注目を集めるように工夫されているようだった。彼女は頭のまわりに真紅のリボンを巻いていた。リボンは両端が背中まで長く伸び、彼女がダンスをするとき、それが騎士の長旗のようになびいた。
 そう、トリスタンは祝宴のときにメアをいたるところで見かけた。彼女はあるときはダンスをし、あるときはほほえみ、またあるときは声を出して陽気に笑い、栗色の豊かな髪を波打たせながら、お祭り気分を盛りあげるように、男という男と片っ端からふざけ合っていたような気がする。ぼくをのぞいて。なぜなら、メアとぼくは幼いころからよく知っているからだ。
「もうわかっているかもしれないけれど、わたしはイーヴォを待ってるの」メアはいつものように恥じらう様子もなく、大胆に言ってのけた。
「衛兵隊長の?」トリスタンは父親がつい最近その地位につけた筋骨たくましい黒髪の男を思いだしながらきいた。
「あなたに説明する必要はないけど」メアはあざけるように言うと、トリスタンの体を押しのけ、脇を通り抜けた。
 足音が近づいてくるのが聞こえたので、トリスタンはメアの体を乱暴に隅のほうに押しやり、自分の体で隠した。
「いったいなんのまね──?」メアは口をとがらせた。
「静かにするんだ! いっしょにいるところをだれにも見られたくない」トリスタンは声をひそめてメアをさえぎって言った。
 メアがそっと笑った。嘲笑するようなその声はかなり低かったので、トリスタンにしか聞こえないはずだった。「ああ、こんなことしてはいけなかったんだわ。アンガラッドの思うつぼよ。これが知れたら、アンガラッドは自分の予言が的中しそうだと、自慢するわ」
 衛兵がくるりと向きを変えて自分の持ち場に戻っていったのを意識の片隅でとらえながら、トリスタンはメアの言ったアンガラッドの予言を思いだしていた。アンガラッドはみなに透視や予知能力があると思われている。まったくばかばかしいとしか言いようがないが、その彼女がトリスタンとメアの結婚を予言したのだ。
 トリスタンはメアと体を寄せ合ったことによって生まれたぞくぞくするような感覚を無視し、彼女との口づけを必死に忘れようとした。「きみもアンガラッドの予言がまちがっていることはわかっているだろう? ぼくたちは結婚しないんだ」
「いったいどうしたの、サー・トリスタン?」メアはからかうような口調できいた。「息を切らしたようなしゃべり方をして」
「別にどうもしないよ」その言葉を証明するかのように、トリスタンはメアにさらに近づいた。「アーサーはどこにいるんだ?」メアが十年前に未婚のまま産んだ息子の名前を言った。「父親といっしょにいるはずはない。ディランは今夜はここに来ていないのだから」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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