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愛を重ねる日々に 前編

愛を重ねる日々に 前編


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタルS愛を重ねる日々に
価格:200pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 ヘレン・ビアンチン(Helen Bianchin)
 ニュージーランド生まれ。想像力が豊かで、読書を愛する子供だった。十代の初めのころに初めて物語を書く。学校を卒業して、法律事務所で秘書をしたのち、二十一歳のときに友人とともにワーキングホリデー制度を使ってオーストラリアにわたる。メルボルンで数カ月働き、北クイーンズランドのたばこ農園を手伝っていたときにイタリア人男性と知り合い結婚した。その後三人の子供に恵まれ、子供たちや友人にたばこ農園の話を聞かせているうちに小説を書くことを思いついたという。イタリア人男性をヒーローにした最初の小説は、一年をかけて完成され、その後イギリスのハーレクイン社から出版された。もっとも尊敬する作家はノーラ・ロバーツと語るが、プライベートな時間に“座り心地のいい椅子に丸くなって”する読書は、ミステリーからロマンスまで幅広い。これまでに訪れたいちばんロマンティックな場所はハワイのホノルルだという。

解説

 ハンナはスペイン人実業家の魅力的な夫ミゲルと一緒に、友人の家で開かれたディナーパーティに出かけた。そこでカミーユというフランスから来た妖艶な女性と知り合う。厄介を引き起こしそうな人ね――本能がハンナにそう告げた。ハンナとミゲルの結婚は、両家の事業のための便宜的なものだ。だから、彼との日々がどれほど情熱に満ちていても、ハンナは夫に愛を打ち明けて傷つくのを恐れている。気弱な心を隠し、社交界の華として振る舞うハンナだったが、それを嘲笑うかのようにカミーユはミゲルを奪うと宣言し……。前編。

抄録

 きれいに整備された庭と刈りこまれた芝生は、道路から奥まったところに威圧的に立つ豪邸の背景として申し分なかった。クリーム色の漆喰壁に細長いアーチ型の窓、素焼きタイルの屋根などからわかるようにスペイン風建築の屋敷だ。
 ハンナは急いで私道を抜け、屋根つき玄関ポーチの前に白いポルシェを止めた。
 運転席から降りるなり、鏡板張りの重い両開きドアが開いてソフィアが出迎えた。ハンナは家政婦にねぎらいの笑みを返し、玄関ホールに入った。
「ありがとう、ソフィア。車を車庫に入れるようアントニオに頼んでもらえるかしら」
 ソフィアは週五日この家の家事を担当し、夫のアントニオは庭や車の手入れをまかされている。
「ミゲルはもう二階で用意しているの?」ソフィアがはいと答えたのを聞いて、ハンナはゆるくカーブを描く階段を駆けあがっていった。
 まもなく、凝ったデザインの手すりが巡らされた半円形の回廊にたどり着いた。回廊に沿って五部屋あり、どの部屋にも上流階級の住まいにふさわしくバスルームと大きな居間がついている。
 ハンナは急ぎ足で屋敷の表側に面する夫婦の部屋に入り、片手で上着のボタンをはずしながら、靴を脱ぎ捨てた。
 そのまま、繊細な家具が置かれた奥の豪華な寝室へ入っていく。
 ミゲルはカフスリンクをとめているところだった。上等な注文仕立てのズボンに白いシャツを着た肩幅の広い体、のみで削ったような顔、きれいに撫でつけられた黒い髪。ハンナはうっとりと夫の姿に見ほれた。
 洗練された外見の下に闘士の心を隠し持つミゲル。それに、人を引きこまずにはおかない危険な雰囲気も持っている。
 そのときミゲルがこちらを向き、問いかけるように眉を上げた。
 ほとんど黒に近い瞳にじっと見つめられ、ハンナは急に速くなった脈をなんとか静めようとした。
 自分がどんなにわたしを動揺させるか、彼は気づいているのかしら? それはまぎれもなく性的なものだ。ハンナは苦笑まじりに認めた。巧みな愛撫でわたしをみだらな女に変えるミゲル。彼の腕のなかにいるとき、ほかのことを考える気力はまったくない。
 しっかりしなさい。ハンナは自分を叱りつけ、衣装だんすに向かった。
「二十分待ってくれる?」薄いレースで覆われた膝丈の黒いドレスに、細いヒールの靴、黒のストッキングをとりだす。どれも控えめながら、蜂蜜色の肌と金髪を引き立ててくれる。
「十五分ですませてくれ」
 シャワーを浴び、下着姿で化粧をすませたハンナは、二十分後にバスルームを出た。それからドレスをまとい、最低限の宝石をつける。
「できたわ」イブニングバッグをつかんで夫に輝く笑みを向けた。「行きましょう」
 二人は一緒に階段を下りていった。ハイヒールをはいていても、ハンナの頭はミゲルの肩あたりまでしか届かない。
「香水を替えた?」ミゲルはいぶかしげな表情をしている。
「女性の武器ですもの」ハンナはにこりともせずに言い、鎖骨に沿ってすべる彼の指先によってかきたてられた震えを抑えた。
「きみにはそんなもの必要ないよ」
 ハンナの口元が大きくカーブを描く。「わたしを誘惑しているの?」
 ミゲルは眉を上げ、白い歯をきらめかせて妻にからかうような視線を投げた。「成功したかな?」
 ええ、みごとにね。でも、それを言うつもりはない。「ディナーパーティに招待されているのよ。覚えているでしょう?」
 ミゲルのかすれた笑い声に、ハンナは前言をとり消したくなった。「やきもきさせるのは恋人たちのゲームじゃないか、かわいい人《ケリーダ》」
「あなた、わたしたちの結婚をそんなふうに思っているの? ゲームだって」ハンナはさりげなく尋ねた。
 二人は豪華な玄関ホールを抜け、建物内の車庫に向かった。
「そうじゃないことはわかっているだろう」
「わたしが?」考える前に言葉が出ていた。
「証明してほしいのかい?」ミゲルはものやわらかな声で言い返し、足を止めて、ハンナに向き直った。
「してくれそうね、あとで」
 彼女の声に含まれる形容しがたい何かがミゲルの心にひっかかった。彼はいぶかしげに目を細め、妻が何げない表情の裏に隠しているものを突き止めようとした。
 洗練された都会的な外見とは裏腹に、ハンナには無防備な側面があった。なんの下心もなく、心の底から人に共感してしまうのだ。ミゲルの知っている女性のなかでは珍しい特質だった。ちらりと浮かべた表情やちょっとした声の調子で彼女の心の動きが読めることを、ハンナ自身は気づいているのだろうか?
 理由は何にしろ、今夜のハンナはぴりぴりしている。そしてミゲルはそんな妻の心を軽くしてやりたかった。
 ミゲルは片手を彼女のうなじに添えて上を向かせ、優しいキスでその唇をふさいだ。ハンナはかすかにため息をもらし、キスを返した。
 いつまでそうしていただろう。数秒? それとも数分? ハンナには時間の感覚がなかった。ミゲルが体を離したとき、彼女が味わったのは落胆だけだった。
 ミゲルの瞳は陰りを帯び、何を考えているか計り知れない。ハンナは自分の呼吸や高鳴る胸の鼓動を痛いほど意識した。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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