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結婚は復讐のために

結婚は復讐のために


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・エクストラ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 イザベラは家族の経済的困窮を救うためカシリス公妃となったが、十二年後、カシリス公は莫大な借金を残して亡くなった。その返済義務から一時免れようと、彼女は囚人との結婚を思い立つ。すでに多額の借金を抱える男性と夫婦となり、返済を請け負ってもらったあと、すぐに離婚すればいい。だが牢番が連れてきた男性を見て、イザベラはその場に凍りついた。マーカス! かつて私が心から愛していた男性……。マーカスはイザベラの思いがけない申し出に激高した。結婚式の当日、花嫁だったイザベラは式をすっぽかしたのだ。だが怒りを抑え、彼はにこやかに結婚に同意した――今でも忘れられない女性への復讐のために。

 ★大人気の作家ニコラ・コーニックが描く、時を経た男女の大人のラブストーリーです。

抄録

「どうしたんだ?」マーカスが言った。
「ありがとう」イザベラは答えた。彼を見ることができなかった。
「どういたしまして」マーカスの笑顔は、心慰められるものではなかった。「お礼に何かくれると言わなかったか?」
 イザベラは彼と目を合わせた。心臓が早鐘を打ち、急に喉がからからになる。遠い昔にマーカスと過ごしたいくつもの夜が頭の中で重なり合った。濡れた肌に触れる彼の柔らかな唇。乾いた潮の香りにまじるオールドローズのにおい。あの夏の燃え盛るような暑熱……だがあれからたくさんの冬が過ぎ去り、激情の炎はすっかり消えてしまった。
「ワイン数本と、まともな食べ物を買う金と、生活をましにするものを何かくれるんじゃないのか?」彼女が答えないのを見てマーカスが促した。
「ええ、もちろん」まるで違う方向へ思いを馳せていたイザベラは赤くなった。そして躊躇した。財布がほとんど空なのは事実だが、それで二の足を踏んだわけではない。ワインや食事で釣ろうとした私を彼はさっき嘲ったのではなかったかしら。だが、そんな下卑た申し出をここでくり返す気にはなれなかった。「ええ、報酬を渡すつもりでいたけれど、その提案にあなたは気乗りしない様子だったから」
 今度はマーカスの笑顔にまじりけのないおかしそうな表情が浮かんだ。「僕のプライドはそれほど高くない。本当だ。それに、これは取引だと意見が一致したはずだが? 交わしたのは契約だ」
「そうよ」
 イザベラは答えた。硬貨を手探りして、彼の手に数枚押しつける。マーカスはそれをベストのポケットに突っ込んだ。
「指輪もお返しするわ」彼女は急いでそう言うと、はめていた金の印章付き指輪を引き抜こうとした。
 彼は首を横に振ってイザベラの手を取り、指輪に触れた。「持っていてくれ。また会う日まで」
 イザベラは胸騒ぎを覚えた。「そんなことがあるかしら?」
「間違いなく」
「でも、それは二人が無事に独身に戻ってからのことでしょう」
 マーカスがさらににんまりした。「もちろん」
 二人はしばらく見つめ合った。イザベラの胸は妙にどぎまぎしていた。
「失礼したほうがよさそうね」
 明らかに不安げな彼女を見て、マーカスの声が嘲りを帯びる。「そのほうがよさそうだ。だが、結婚式では花嫁にキスをするのが決まりだろう」
 イザベラはびくっとした。二歩あとずさると彼女のスカートが最前列の木の信徒席に触れた。迫ってくる彼をかわそうと、イザベラは片手を突きだした。「あなたが念を押してくださったように、これは取引なのよ。キスは契約の中に入っていなかったわ」
 マーカスがふたたびほほえんだ。彼女の言葉に反抗するような、ものうげな笑みだ。復讐なのか、悪いいたずらなのか、単に楽しんでいるのかわからなかったが、イザベラの冷静さを打ち砕くには充分だった。逃げだしたいが、体が動かなかった。
 二人の後ろで看守がそわそわしはじめた。囚人を一刻も早く監房に戻したいのだ。だがマーカスは彼を無視し、一歩前に出てイザベラの腕をつかむと、彼女の胸を自分のざらざらした手触りの上着に押しつけて顔を寄せた。そしてイザベラの腕をつかんだ指に力を込め、次の瞬間、唇を重ねた。
 唇は軽く触れ合ったにすぎなかった。それでも、イザベラを過去へ引き戻すには充分だった。キスの思い出は、ほかのめくるめくような情熱の残像と一緒に過去の中へしまい込んできた。自分から、そして他人から隠しつづけてきたあの感情がいま過去から抜けだし、飛びだしてきそうだ。すべてが塵や灰となって消え失せたわけではなかった。かつて二人のあいだにあった優しさは遠い昔に消えたかもしれないが、引かれ合う熱い気持ちはいまも変わらなかった。彼女は恐ろしくなった。
 イザベラは小さく取り乱したように声をあげ、彼とのあいだに距離を置こうとしたが、ふいにマーカスが両腕をまわして、重ねた唇を巧みに動かして彼女の抵抗をいっさいはぎとった。熱い官能の波が押しよせ、彼女を焼き尽くし、足の爪先まで焦がした。
 マーカスのように私にキスをした男性は一人もいない。アーネストはイザベラをぞんざいに数回抱きしめてから床入りをすませたが、その愛し方には優しさのかけらもなかった。正直に言えば、あれは愛の行為と呼ぶような尊いものではなかった。
 アーネストは結局、彼女に求愛したのではなく、彼女を買ったのだ。金を出して欲しいものを手に入れ、自分の好みの型にはめようとした。だが、イザベラが自分に満足をもたらさない女だとわかると、取り決めに背いたのは彼女だと言い張って、あとは死ぬまでうわべだけの中身のない結婚生活をつづけた。実際、イザベラの生活には甘い愛情のかけらも、真の情熱もなかった。今日までは。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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