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結婚の過ち

結婚の過ち


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェイン・ポーター(Jane Porter)
 アメリカ、カリフォルニア州に生まれ、十代から二十代前半は海外で過ごす。イギリスに滞在中、ロマンス小説に出会い夢中になった。文学修士号を持ち、現在は教師をしている。夫と幼い二人の息子とともにシアトルに在住。

解説

 「彼女に結婚式を台なしにされてたまるものか」マルコの声がサロンの高い天井に響いた。ミラノで有名デザイナーとして名を馳せ、幼なじみの公爵家令嬢との結婚を二カ月半後に控えている。ところが別れた妻ペイトンが、幼い娘を連れて、突然サンフランシスコからやってきたのだ。ペイトンの目的は、娘たちをマルコに託すことだった。二度と戻らないつもりでいたミラノを再び訪れたのは、医者に残酷な事実を突きつけられたから。彼女は、亡き母と同じ不治の病に冒されていた。

抄録

 二人は彼の書斎に入った。漆喰の壁は床から天井まで書棚になっているが、本がおさまっているのは棚の半分だけで、残りの部分はブロンズ像や細密画や古美術品が飾られている。
「ぼくのところで働くことについて、少し考えてくれたかな? ぼくは本気だよ」マルコは食後用の甘口のワインをグラスについだ。「ファッション地区の近くに住まいを見つけよう。実を言うと、スピガ通りになかなかいい家が売りに出ているんだ」それはダンジェロの本店からほんの数ブロック先の通りだった。「美しい中庭があって、どの部屋も広々として明るい。日当たりが抜群なんだ」
 彼の言葉が音と感情の奔流となってペイトンをのみこんだ。「無理よ」返事をするまでかなり間があった。「少なくとも今は」
「どうして?」
「事情があるの。しばらくはここに移ってくるのは無理よ。少なくとも半年……一年は」
「あと一年も、あの子たちを連れていってしまうつもりなのか?」
「いいえ。二人は――」喉をごくりとさせる。「二人はここに置いていくわ」
「置いていく?」
 高まる感情にのみこまれまいと、ペイトンは目を伏せた。あの子たちのためなのだと自分に言い聞かせる。ほかにどうすることもできないなら、二人の無垢な心を思いやってやらないと。
 まぶたの奥が熱くなってくる。どっと涙があふれそうだ。ペイトンは逃げだしたかったが、どこにも行き場がないのはわかっていた。もはや頼れる相手はひとりもいない。
 マルコしか。
 赤裸々な現実に直面し、めまいをおぼえた。脚の力が萎え、今にもその場にくずおれそうだ。彼女は懸命に涙をこらえ、意志の力を総動員してなんとか自力で対処しようとした。
「ペイトン、どういうことなんだ?」
 強い口調に、ふたたびペイトンの気持ちはぐらついた。彼にすべて打ち明けたいと思う一方で、恐怖心もつのる。言いたくない病名を口にすることへの恐れが。それがどれほどの威力を持っているかよく知っている。母と伯母の身に起こったことを目の当たりにしてきたから。
「ペイトン、話してくれ」
「話せそうにないわ」
 マルコはすばやくペイトンに歩み寄り、二の腕をつかんだ。「どうして? どうしてぼくに話せないんだ?」
 彼女が答えようとしないので、マルコは顎を持ちあげ、目と目が合うようにした。
「ペイトン、きみはほかの誰よりぼくのことを知っているじゃないか」
「そこが問題なのかもしれないわね」
 熱いまなざしが彼女の心を貫いた。
「なんてことだ、きみはぼくをおかしくさせる」マルコは口のなかで小さく悪態をつき、いきなり顔を傾けると、飢えたように唇を重ねた。
 激しく強烈なキスに息が詰まり、ペイトンは頭がくらくらした。まるで心臓がねじれて真っ二つになったようだ。彼女はマルコのシャツにしがみついた。
 こんなキスをする男性は、こんな気持ちにさせる男性はマルコ以外にひとりもいない。彼への燃えるような思いはまだ断ち切れていない。たぶん永久に消えないだろう。
 唇のすきまから小さな叫び声がもれた。苦痛、喜び、否定といった相反する感情が胸のなかで激しく入り乱れている。いったいわたしは何をしているの。トラサルディ宮殿の庭でも彼はこんなふうにキスをした。あのとき二人とも抑えがきかなくなり、行き着くところまで行った。そのあと何が起こったかは二人とも身にしみてわかっている。
 それを繰り返すべきではない。でも、マルコが相手だと本能的に反応し、自分を抑えることができなくなってしまう。
 彼女のすすり泣くような声がマルコをいっそうかりたてた。親指で彼女の頬を撫で、熱い舌で口のなかをまさぐる。
 渇望感がつのり、ペイトンは悩ましげに身をよじらせた。両手で彼のシャツを握りしめ、固く張りつめた胸を彼の胸板に押しつける。体はほてり、うずいている。彼の手が腕から腰へと這いおり、さらにぴったり抱き寄せられると、ペイトンは背中を弓なりにしてそれに応えた。
 あとで彼は自己嫌悪に陥るに違いない、と胸の奥でささやく声がする。ペイトンははっとわれに返り、いきなりてのひらで彼を押しやった。
 マルコの黒い目は熱っぽく光り、頬は紅潮している。
 本当はキスを続けたかった。終わらせたくなかった。でも、マルコのことはよく知っている。ほんのつかのまでも自制心を失ったせいで彼が激怒することはわかっている。ここでやめなければ、厄介な事態になるのは目に見えている。
 案の定、彼は鋭く息をのみ、苦々しげにつぶやいた。「いまいましい《マレデイツイオーネ》! なぜこんなことを……いったいどうしたんだ?」
「マルコ――」
「いや、何も言うな。きみが何か言えば、さらに悪くなるだけだ」
 こわばったマルコの顔をペイトンはおそるおそる見つめた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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