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孤高の御曹子 バロン家の受難 X

孤高の御曹子 バロン家の受難 X


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアバロン家の受難
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

 十七の夏、シーリアは名家の御曹子リースと情熱的な時を過ごした。ところが、全身全霊を捧げたつもりでいた彼女のもとからリースが忽然と姿を消した。どうやら別の女性を妊娠させて責任を取るよう迫られたが拒否し、家族とも縁を切って行方知れずになったらしい。シーリアの初恋は無残に砕け散った。時が過ぎ、港の管理をする彼女の前に豪華なクルーザーが現れる。もの珍しさに近づくと、中から長身の男性が降りてきた。それは忘れもしない不実な御曹子、リース・バロンだった!

抄録

 そのあとは重要なことはなにも話さず、六時ちょっと前に、二人はマリーナに戻った。リースを待たせておいて、シーリアは車をとりに家に帰り、草をトランクに積みこんだ。彼女の中には、ばかなことをしでかす前に彼を解放して、できるだけ距離をおきたいという気持ちもあった。ただ、もっといっしょにいたいという気持ちも、同じくらい強かった。
「手伝ったら、早くできるかい?」家に隣接した作業室に収穫した材料を運びこみながら、リースが尋ねた。「花環を作ったことはないが、やってみる元気はあるよ」
 アウトドア派のいかつい男性が繊細な工芸に挑戦しているところを思い浮かべて、シーリアは思わずほほえんだ。「実際の作業を見たら、なんて言うかわからないけど。ともかく手伝ってくれたら、お礼に食事くらいごちそうするわ」
 リースにじっと見つめられると、シーリアは胃のあたりがざわざわして、深く息が吸えなくなった。「それはいいね」
 キッチンのドアに向かって歩いていくとき、リースはシーリアの手をとり、指をからませた。二人ともなにも話さなかった。ドアに着くと、リースは毎日、彼女と手をつないでいるかのように自然に手を放した。
 しかし、サラダの材料を出し、作りおきしてあったスパゲッティソースを解凍しはじめながら、シーリアは体が震えているのに気づいた。リース・バロンのことはどうするの?
 結局、シーリアはなにもしなかった。食事のあと、作業場に戻る前にリースは片づけを手伝ってくれた。花環をとめる針金を彼が切っている間に、シーリアは葡萄のつるで適当な大きさの環を作り、さまざまな材料で飾りはじめた。
 最後の花環を仕上げたとき、シーリアはリースに向かって安堵の笑みを浮かべた。「今日は湿地に連れていってくれてありがとう。楽しかったわ」
「純粋に楽しみのためになにかをしたのは、いつ以来だった?」リースのまなざしはまじめだった。
 余った葡萄のつるを巻いていたシーリアの手がとまった。「さあ。しばらくぶりだったわ」
「しばらくって、どのくらい?」
 考えてみても、答えが出てこない。「覚えてないわ」
「そうだと思ったよ」
「でも、今日はとっても楽しかった」
「ああ。でも、遊びだけじゃなかったからね。リラックスして、ふたたび人生を楽しむ許しを自分に与えなければいけないよ、シーリア」
 たちまちシーリアの目に涙があふれた。ああ、なんてこと。「そうしたくないのかもしれないわ。罪の意識を感じるのよ、リース。わかる?」
「君ほどじゃないが、言っていることはわかる」リースはワイヤーカッターを置いて、テーブルをまわってきた。彼に肘をつかまれても、シーリアは下を向いたまま、彼のTシャツを見つめていた。「僕の親友のケントと彼の奥さんは数年前、海の事故で亡くなったんだ。ときどき自分が生きていて、笑って、幸せでいることだけでも恐ろしくなるよ。彼らにはもうそれができないんだから」
「ああ、リース、お気の毒に」シーリアは彼の広い背に腕をまわし、抱き寄せた。「おたがいにつらい人生だったのね」
「そうだ」リースは彼女の顔からそっと髪を払いのけた。「だが、またよくなってきているよ」
 じっと見つめ合ったまま、張りつめた時間が過ぎた。警戒心を解いたリースの目に、後悔や切望ややさしさや欲望が見える。シーリアは親密に見つめ合っていることに耐えられなくなり、目をそらした。
「シーリア」呼びかけるリースの声がかすれた。彼は航海で節くれだった長い指を彼女の顎にあて、上を向かせた。彼の顔が下りてきて、光をさえぎる。唇が重なり、シーリアは反射的に目を閉じた。
 唇と唇がしっかり合わさると、シーリアの体が喜びに反応した。“そうよ!”と全身が叫ぶ。リース・バロンとキスする愚かさについて考える時間を自分に与えず、快感のざわめきを聞きながら、彼女は彼に体をあずけた。両手がリースのうなじを上がっていき、豊かで温かな髪を撫でる。
 リースの腕に力が入り、唇がさらに要求する。シーリアは唇を開いて彼の舌が入ってくるのを許した。リースが彼女の背に手をあてて抱き寄せる。がっしりして、熱く、まさに男そのもののリースに抱かれると、いかにも自分が華奢で、驚くほど傷つきやすい女に思えたが、不快ではなかった。ミロが亡くなってから、男性に抱かれたことはない。どれほど心地よいものか、忘れていた。
 だれに抱かれても、こんなに心地よいことはなかった。
「明日一日、僕と過ごすんだ」命令だった。
 リースのたくましい腕に抱かれ、シーリアはなにも言えなかった。
「イエスと言うんだ」リースの声は切迫していた。
「イエス」シーリアは従順に繰り返した。
「いいぞ!」リースは彼女が今口にした言葉を撤回する前にキスをして、すぐに離れた。「もっと長くいたいけれど、そうしたら帰れなくなる。それに君はまだ心の準備ができていない」率直に言った。
 混乱したシーリアが返事もできないでいるうちに、リースは軽く敬礼をしてドアに向かった。
「十時に迎えに来るよ」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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